遥か彼方のコシミノ

バイブルさん

第1話 おひとり様ですが何か?

「おいおい、なんだこのふざけた看板は!?」


 俺の目の前にある手抜き感がモロバレする手書きで『3名パーティ限定』と書かれた看板が入口横に立てられていた。


 入口に手を伸ばすと見えない壁があってそれ以上、前に行かない。


 両手で見えない壁に力一杯で押し始める。


「舐めんな! これでもチート持ちの異世界人の匠様だぞ! 俺の3つあるチートスキル『怪力無双』があればこんな壁ぇぇ!!」



 うん、ビクともしない。



 悔しかった俺は背に背負う大剣クレイモアを抜くと斬りつける。


「魔剣クレイモアで斬り裂いてやるっ!」



 うん、本当は店で一番いい大剣くれって言ったら出されただけの剣なのに見栄張りました!



 ぱきっ


「えっ?」


 乾いた音が聞こえたと思ったら後方に飛んで行く金属片を眺めた後、手元の愛剣クレイモアを見つめると半ばで真っ二つになって先端がなかった。


「くそぉ! 何が絶対に折れないだぁぁ! 一発で折れたぞ!!」


 地面に元、愛剣クレイモアを叩きつける。



 くそう、街に戻ったら武器屋のオヤジの店を襲撃してやるぅ!



 ふぅふぅ、と荒い息を吐く俺は呼吸を落ち着かせると一応、壁の存在を調べるが健在であった。


 ちぃ、と舌打ちする俺は誰もいないダンジョン前で一人で笑い始める。



 痛々しい? 大丈夫、誰もいないから!



「こうなったら、奥の手を出すしかないな……」


 拳を握り、溜めるように中腰になり、正拳突きをするように構える。


 握る拳からバチバチと音がし出す。


 それが音だけでなく目視で分かるレベルで暴れる力が生み出される。


「2つ目のチート特殊魔法 雷、そしてそれを強化する特殊魔法強化。この相乗効果にお前は耐えれるか!」


 見えない壁を擬人化して会話する痛い子がいたかもしれないが、きっとそれは俺ではないはずである。


 にやり、と口の端を上げると自信満々で雷を凝縮させた力が宿る右拳を振り被ると見えない壁に向かって殴りつける。


「お前、なかなか出来る奴だったぜ? お前の事は俺が忘れない、往生せいやぁ!」


 思わず『ペガサ○流星拳』と叫びかけたがさすがにそれは飲み込んだ。


 俺の拳が壁にぶつかると激しい火花が生まれ、俺の力に抗うように壁から俺の力が跳ね返ってくる。


「俺が最強なんだ! 弾けろっ!!」


 その叫びと共に弾けた。


 俺の衣服がである。



 このサービスシーンはカットの方向でお願いします。



 全裸の俺は地面に突っ伏してシクシクと泣き始めた。

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