17 イレギュラードラゴン
昼とも夜ともわからない深い深い闇の中、またここで一体の魔物が
腐臭漂う血生臭い闇の中、周囲には原型がわからない赤や黒ずんだ肉片、白や黄ばんだ骨片が散乱している。
かつては人間だったものだ。
そしてそれらに紛れるように無数の魔結晶魔宝石の欠片までもある。
食い散らかした後のどす黒い血溜まりの中央にいるのは、一体の魔物。
口回りにはたった今まで獲物を貪っていた赤が、ぬらぬらと鈍く光沢を宿し存在を主張していた。
「くふふふふ」
闇の奥から押し殺したような女の笑声が近付いた。
びちゃびちゃと血だまりの中を汚れるのも構わず表情一つ変えずに素足で歩く女の髪は、あたかも闇に浮かび上がる白骨のように真っ白い。褐色の肌は逆に闇に埋没し同化するように控えめだ。そして女の紅い瞳は夜行性の獣の瞳が底光りするように闇の中でも存在を無視できない。
手燭も光源魔法もない中でも危なげない足取りで歩む女は、足を止め血だまりの向こうを見据えた。女が動くと聞こえていた鎖の音も一緒に止んだ。
うっそりとした眼差しで、まるで全てがはっきりと見えているように女は見つめている。
見られている魔物は、女の命令が無いからか大人しくじっとしている。その炯々と光る深紅の瞳には何の感情も宿さない。
魔物のまるで隅々までをひたと見つめる女は、形の良い朱唇をにたりと吊り上げ、極めて細い下弦の月を形作った。
まるでそれが封印を解く合図のように静かだった魔物の目に憎悪が宿る。
瞬刻。
かぱっと赤い唇が裂けた、かのように見えた。
「くっははははははははははは! あはッッッくはははははははははハハハハハハハハハハハハハハァッ、ァァアァァァ……――――行ってくるがよい」
響いた大哄笑。
ゴァァァッグルルルゥゥゥガアアアアアアアアアアーーーーッッ!!
主人に鼓舞されるかのように魔物も大咆哮を上げて、そして無数の赤い鱗の光る背中にニョキリと生える大きく頑健な翼を広げた。
しかし常のような転送魔法は発動しない。
この強靭な魔物には必要がないからだ。
翼が動き風が巻き起こる。鱗の太い脚が地から浮いた。女の白髪と白布の裾が激しく乱れるが、女はちっともよろける様子もなく佇んでいる。その目線が上昇を辿る。
女は長い長い間王都の滅びを闇の微睡みに望んでいた。
そして今、王都コーデルを襲わんとするかつてない強大な災厄が地の底より舞い上がった。
「あと少しだね、イド。ここまで10階層近く上ってきたけど一度も魔物に当たらなかったなんて、あんたの索敵スキルも大したもんだよ。リリアナや私は言うまでもないし、もしかしたら既にカレン以上の能力なんじゃないのかい? 何度も何度も繰り返して熟練したその手のスキルは時にレベルを凌駕するからね」
「あはは、そこはどうかわかりませんが、索敵しても不思議とここまで一体も魔物は引っ掛からなかったんですよね。こんなスムーズに上がってこれたのは通い始めてからも初めての経験ですよ。早く出ないといけなかったですし、凄いラッキーですね」
ラッキーだなんて言って浮かれる俺は、アシュリーさんと合流できて正直胸を撫で下ろしていた。このままダンジョンを出て事務所に戻ったら、どっちが早いかは知らないがカレンたちともお疲れ様挨拶をし合ってそして今後の相談をする。この心強い仲間とならダンジョン危機だって乗り越えられる。そんな楽観的な展望だって持っていた。
言い換えれば気を抜いていた。
俺とアシュリーさんはもう地下の浅い階層まで上がってきていた。
まだ切迫していないと言っていたギルド職員の言葉通り何事もなく出られると疑いも抱かなかった。
ダンジョンは何があるかわからない場所だってのに……。
索敵の関係でアシュリーさんの斜め前を走る俺は、やっぱり近頃感じていた奇妙にざわざわした感覚が拭えずにいた。
誰かの視線を感じる際の感覚に似ていなくもない。変な喩えだがダンジョンから自分の存在を注意深く観察されているようなそんな感じだ。
「――ッ!?」
突如、ぞわりと、いや、ぶわっと、まるで見えないおぞましい風から突き上げを食らったようなそんな悪寒が走った。
何……っだ、この感覚は……?
初めて食らう強さの不安と不快とが胸中で暴風と共に膨れ上がるような感覚。これはいよいよどうして無視なんてできない強烈さだ。
「イド、どうかしたかい?」
急に立ち止まって蒼白になった俺に気付いたアシュリーさんが気遣わしげに窺う。
え、嘘だろ、何で……アシュリーさんはこのどこか不気味で強烈な空気の歪みを感じていないのか?
俺は薄く吐き気さえ催すくらいに不調を感じているのに?
「イド?」
「……駄目、だ」
悠長にここにいたら駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ。直感としか言いようのない焦燥で背筋が震えそうだった。
不可解さはあったんだ。なのに見落としていた。どうしてここまで魔物の気配がなかった? ダンジョンに入った時点じゃ普通に居たってのに、いつからいなくなった?
状況は刻一刻と変化する。
いわば、ダンジョンは生き物だ。
「アシュリーさん、今すぐここを出ましょうっ」
今すぐなんて土台無理なのに焦りが無意味な懇願を口走らせる。
「お願いします、早く上がりましょうっ!」
怪訝にする彼女に再度俺が懇願した直後だった。
空もないのに遠雷のような音がどこかから響いてきたのは。
「こんな所まで雷が……?」
不思議がるアシュリーさんを前に、俺の両脚が答えを導いた。
これは、地鳴りだ。
そのうち音が近付いてきて、地震にも似た小刻みな揺れが足裏に伝わってきた。
初めは微かに、次第に大きく。
「地震……いやこれはまさかのダンジョン崩落かい!? こんなに早く!?」
「そこまではわかりません!」
俺は咄嗟にアシュリーさんの手を取って走り出していた。
「ここにいたらまずい、行きましょう!」
「えっちょっとイド!?」
珍しく戸惑う彼女を宥めている余裕はなく、手を引いて全力で地上へのルートを駆け上がる。
さっきよりも、十秒前よりも、一秒前よりも、地響きは大きくなっている。
「とにかく逃げるんですアシュリーさん! ダンジョンの外に!」
肩越しに振り返る俺の、まるで気色ばむようないつにない必死な形相と切迫した声音にやや鼻白みながらも彼女は心得て、ぐんと疾走速度を上げ俺を追い越した。
元々基礎的な身体能力は彼女の方が格段に上だ。今度は俺を引っ張る形で前後逆転で走ってくれる。
絶えず轟音は鼓膜を揺らし、確実に俺たちの階層上昇速度よりも速い。
「この音、何かとてつもなくヤバそうだね」
さすがにもうアシュリーさんもピリピリした威圧感のような気配を感じ取っているらしく、表情は随分と険しい。どうにか音に追い付かれる前に地上に辿り着きたかった。
走る走る走る走る走る走る疾駆疾駆疾駆疾駆疾駆する。
片足ずつ骨が軋むくらいに地面を強く踏みしめて前への跳躍力を生み出す。
地下3階。
破壊音が近付く。
地下2階。
もう会話も聞こえない程の爆音。
俺たち以外の冒険者も異常を察知し恐怖さえ宿した面持ちで上階への通路へと殺到していく。皆が皆全脚力で疾走する、爆走する。
地下1階まできたからあと少しだ。内広場を抜け通路を突っ切りこの登り坂を駆け上がったトンネルの先の光がゴール。
ダンジョンゲートだ。
前へ前へ前へ前、へ――――……ゴオオッッ――ドゴオオオオオオドドドドドッッ!!
「うっわあああっ!」
「イド!」
何かによって突き破られたダンジョンの床。その衝撃に巻き込まれて足が宙に浮いた。
それと時を同じくして、俺のすぐ傍に迫った何者かの気配。
「イド!!」
ぐんっ、と脱臼するかと思う力でアシュリーさんに腕を引かれた。
そのまま光の方へと体が呑まれる。
刹那、頬の、眼球の、鼻先の、すぐ前を、猛烈な何かが掠めるように通り過ぎた。
ギョロリとした凶悪な赤色の眼と俺の惚けたような青色の目が至近で真っ直ぐに合う。
それはきっとほんの一瞬。
だが体感では永遠にも感じられた邂逅だった。
恐怖すら感じる暇もなかった俺がダンジョンゲートから吹き飛ばされるようにして外に投げ出されるのと同時、そいつは天井も突き破っていった。
呆然と尻餅をつく俺は、ガタガタと全身が震えている自覚もなかった。
「な、何てこったい。まさか地下からドラゴンが上がって来るなんて、最近のここは全く本当にどうかしてるよ」
アシュリーさんが、彼女もまだ信じられないと言った様子で額を押さえた。同じ単語が逃げてきた他の冒険者たちの間からも聞こえてくる。
――ドラゴン。
そう、今のは紛れもなく、ドラゴンだった。
「うそ、だろ……? 何でここに……、どうして地下からドラゴンが出てくるんだよ? 普通は出ても上級ダンジョンにしか出ないはずじゃなかったのかよ?」
ドラゴン系は経験値も多く、種族も幾つかあり、世界各地のダンジョンに棲息している。
レベルは低くても40辺りから。
場所や個体によってはダンジョンボスを担っているのだっている。
コーデル上級ダンジョンじゃギルドの上限ぴったりのレベル40で出現する。それがここのドラゴンの通常状態なんだよな。
そうなると、当然通常より強くなる異常化をしないのが前提となる。
「しかも何だあれ、鱗が赤色だった、イレギュラーだった!」
火や水などの属性を持たない通常ドラゴンの鱗は深緑。
俺たち冒険者がよく目にするのはこのタイプがほとんどだが、
だとすれば目撃した個体はこのダンジョンの法則に反して現れたってわけだ。
「赤色なら、たぶん火属性だね」
「だと、思います」
アシュリーさんの深刻な声に応える自分のぎこちない声が上の空に聞こえる中、俺の胸中を占めていた感情は急激に膨れ上がった恐怖だ。
あの刹那、友情交渉の余地もなく、殺される、と思った。
目が合った瞬間にそう悟った。
明らかにドラゴンは人間を――俺を敵と認識していた。
アシュリーさんがダンジョンゲートの外に引っ張り出してくれなかったら、今頃俺はあの巨体とダンジョンの床か天井との間に押し潰されていただろう。
ダンジョン前の大広場までいつの間にかアシュリーさんに導かれていた俺だが、どうしようもなくなって座り込んで立てずにいると、時間を追う毎にあたふたとして出てきた冒険者たちの声でとうとう辺りは本格的に騒然としてきた。俺みたいにへたり込んで、中には泣いている者もいた。ドラゴンの上昇に巻き込まれた誰かがいないといい。
尚も聞こえてくる轟音は途切れる様子がない。
既に領域としては上級ダンジョンに入ってしまったドラゴンは、尚も天井をぶち抜いて上昇を続けているに違いない。
確実に破壊音が移動しているのが証拠だろう。
上級ダンジョンは上階に行く程魔物レベルも上がっていく。
それでも通常の最高出現レベルは40だったんだ。先のレベル55の
なのに、それなのに、測定スキルで測らなくともあれがレベル55なんかじゃ収まらない相手だってのはわかった。
圧倒的な存在感が問答無用で高位者の殺気を俺に体感させてきたんだ。
「イド、ここは一度事務所に戻るよ」
「あ……」
はい、と頷こうとして、俺は硬直したように動きを止めた。
そうだ、俺たちは重要な事を失念している。
辺りを見回してもダンジョン前の大広場に姿は見当たらない。
「――カレンとウォリアーノさんがまだ出てきてません……」
俺の呟きにアシュリーさんもハッとなった。
「どうしましょうきっと二人はまだ中にいます! 助けに行かないとっ」
気付けば分不相応な言葉を吐いてふらふらと立ち上がっていた。
「イド。私らじゃアレは無理だよ。二人にしても今に出てくるさ。彼らの次かもしれない」
彼らってのはたった今息を切らせて上級ダンジョン入口から出てきた冒険者たちの事だ。アシュリーさんから肩を掴まれ止められて、俺はここでようやく自分が愚かな行動を取っていたのだと気付いた。そうだ。俺たちには無理だ。おそらくはこの外広場で青くなっている誰にも。
大きな精神的ショックのせいか随分と長い間ここにいた気になっていたが、まだドラゴン出現からはそんなに時間が経っていないんだよな。アシュリーさんのお陰で少し落ち着きを取り戻せた。
気を揉みながら待ってみる事にしてアシュリーさんと見ていたら、ウォリアーノさんが出てきたのがわかった。
見た感じ怪我はなさそうでホッとしてアシュリーさんと二人で駆け寄っていく。
「ウォリアーノさん!」
「マスター!」
ざわつく中でも彼は俺たちの声を聞き分けてかこっちを向く。向こうも俺たちを見つけると安堵を浮かべた。
「マスターが無事で良かったよ。どこも怪我はなさそうだしね」
「ああ。アシュリーもね。リリアナは留守番だったはずだからいいとして、イド君はどうしてここに? 冒険者装備までして」
ウォリアーノさんは少し不思議そうに俺を見る。
「カレンとデートだったんじゃなかったのかい?」
「え……」
ガツンと大男から頭を殴られたようだった。思わず目を見開いた俺は二の句を告げられなかった。彼の言葉はつまり……。
カレンはウォリアーノさんを探しに行った。
だがウォリアーノさんはカレンに会っていないまま一人で出てきた。
「マスター、実はカレンも上級ダンジョンに入ったんだよ」
「カレンが? どうしてまた……?」
ウォリアーノさんは事情を知っているのは俺だと判断したんだろう、真剣な眼差しで俺を見つめてくる。
「カレンとギルドに行った際に、ギルド側からコーデルダンジョン崩壊の恐れがあると聞いて、アシュリーさんとウォリアーノさんの二人になるべく早く知らせて出てもらおうって、そう話したんです。今日明日にどうにかなる程は切迫していないと、話を聞いた時点ではそう言われていたんですが……」
まさかの
「そうか。カレンはまだ中に居るんだね」
ウォリアーノさんは眼鏡の奥から白塔を見上げた。俺からはちょうど反射でその眼差しは隠れたが優しいものじゃないのは察せられた。
まだ新たな脅威を知らせる王警警報は鳴っていない。
出現して然程経っていないからか、或いは先程のハチャメチャな突貫でダンジョン管理室1階が損害を被ったからかはわからない。
危険が迫っているかもしれないんだ。一刻も早く王都民に知らせなければならない。
鐘よ鳴ってくれと願ったからってわけじゃないだろうが、けたたましい警報音が大広場に、王都全域に響き渡ったのはそれから間もなくしてだった。
鳴った瞬間は誰もが緊張により一層顔を強張らせたが、少しすると慣れたようで幾分険しさを和らげた。
「マスター、どうする? いつまでも無駄に突っ立ってらんないだろ。私とマスターでカレンを探しに行くかい?」
そう言うもののアシュリーさんの顔色は優れない。仲間を助けたいのは山々だがミイラ取りがミイラになりかねない危険さを孕んでいるのを重々承知しているからだろう。ドラゴンを間近で見たからこそ彼女もあれが破壊的なまでの強者なんだと認識しているに違いなかった。
ウォリアーノさんは唸るようにして小さく首を横に振る。いつもは滑らかな眉間にはくっきりと深い溝が刻まれ、彼が誰より苦悩しているのが見てとれた。
「カレンがどこにいるのかわからない以上、イレギュラーが暴れ回るあの中を闇雲に歩き回るのは自殺行為としか言えない。私自身手に負えないと判断したからこそ出てきたことでもあるしね。面目ないけれど」
「面目ないこたないだろう? これは管理側の落ち度なんだから。マスターで面目ないなら私やイドなんて面目どころか足の先までなくなっちまうよ。なあイド?」
こくこくこくと俺は頷いた。反論の余地はないしその気もない。
「カレンは機転が利くしどうにか自力で出てこれる力量はある。だからもう少しだけ待ってみて万一戻らないようなら、一度事務所に帰って助けに行くための方策を練る、それでどうだいマスター?」
「ああ、そうだね。……ふふ、こういう時は私よりも余程アシュリーの方が頼りになるようだ」
「何を言っているんだか、私なんてまだまだ冒険者としても人間としてもマスターに指示を仰がなきゃならないレベルだよ。まっ、たまーに赤子を抱いた聖母かいって穏やかさのマスターが動転した姿を見るのも、可愛くていいけどね」
「こ、こらアシュリー、いい年のオジサンをからかうものじゃないよ」
「あはは、ごめんごめんマスター、こんな時に少し不謹慎だったね」
「そんなことはないよ。さすがに可愛いなんて言われるのは照れるってだけでね」
俺も、茶化したアシュリーさんを不謹慎だなんて思わない。大変な何かが起きているからこそ人間笑える心の余裕は必要だ。不安ばかりを抱えたままじゃ精神的にすぐに参ってしまう。まあ、いつもみたいに快活にとはいかないが。
ウォリアーノさんだってアシュリーさんだって本当は自分でカレンを探しに行きたいに決まっている。だが力が足りないって容赦ない現実を突き付けられて、悔しくあっても現実的に考えて動こうとしている。
たがそんな二人の横で俺は一人底の見えない沼に足を取られたような気分に陥っていた。
――戻らない。
アシュリーさんが何の気なしにチョイスしたその言葉が、その無常な響きが、深い慄きを俺に感じさせた。
カレンが戻らないのにこのまま逃げるようにこの場を離れるのはどうしても躊躇いがある。だからと言って自分に何が出来るわけもない。それでも俺は――……。
「イド? ちょっとあんたどこに……イド!」
アシュリーさんが少し苛立った声で俺を呼ぶ。
しかし俺は白い塔を見上げたまま一歩、また一歩と足を踏み出していた。
アシュリーさんとウォリアーノさんに怒鳴られるかもしれないとは頭のどこかで考えた。だがカレンが一人であそこにいるんだ。ギリリと棍棒を握る手に力が入る。
助けないと、早く、たとえドラゴンを斬ってでも……。
「――イド、駄目です」
予想に反して俺を止めたのは、刹那の間に目の前に現れた白髪赤瞳の少女だった。物理的に通せんぼされているのもあって前に踏み出せない。
「カ、ヤ……?」
俺の熱くなった脳みそを冷やすような雪の白がさらりと靡く。驚く俺の傍では「あれまあ恐ろしく綺麗な子だねえ」とアシュリーさんが初めて見る少女の容姿に目を奪われている。ウォリアーノさんは驚いた様子ではあったがアシュリーさんとはまた異なる視点からの驚きのように感じた、何となく。
「イドが行かなくても、他がいるです。ジェードがいるです」
「親父が……」
あー、カヤに言われて今更気付いたよ。そういや親父たちもいたんだっけ。
それを思い出して気持ちに少し余裕が出た。
あの強烈な存在感を放っていたドラゴンに対抗できるのはきっと親父たちだけだ。勇者パーティーでのトップ2だったあの二人がドラゴンを倒してくれさえすればカレンだって安全だ。
頼もしさとその裏の悔しさを、武器の棍棒を握り締める掌に込める。
聞き分けて踵を返そうとした矢先、ドガアアアン、と上方でとびきり大きな爆発音が上がった。
「――な……なんっ!?」
もう俺の声は意味ある言葉を紡いでいなかった。
咄嗟に見上げた先では白い塔の真ん中階辺りの壁面に大きく穴が開き、そこから瓦礫と、誰かが落ちてくる。
ぶっとい剣を手に激しい風圧に金の髪を靡かせるのは、見知ったシルエットだった。
あれは、――親父!?
見ている間にも地上へと近付く体躯。死の雨のように降ってくる瓦礫たち。
このままじゃ親父も地上の俺たちも命の保証はない。
初歩的な防御魔法を使うのすら思い至らず凍りつく俺の目に、親父が魔法を使って圧縮空気か何かを下方に放ち、落下速度を緩和したのが映る。
だがそれは親父の体だけであって瓦礫はそのまま降って来る。
地上のほとんどが即応できそうになかった。
見上げたままの視界に見る間に大きくなるダンジョンの構成物。
あ、ヤバい。死――――視界の端で白い風が動いた。
いや違う、カヤの白い髪だ。
彼女は魔法の呪文もなく黒ローブの中の細腕を左右に広げただけだが、それだけで全てが一変した。
ゴゴッ……と地鳴りがしたかと思った次の瞬きの後には、石畳を貫いて伸びた熱帯っぽい木々が太い幹をうねらせ大きな葉を広げ瓦礫を全て受け止めていた。
しかも即座に大広場の冒険者たちの間を縫って瓦礫を地に落とすや樹木たちは一瞬で掻き消えた。
突然出現し消失した熱帯林と、直前のダンジョン壁破壊と崩落。
破格なドラゴンの登場という一つだけでも前代未聞の出来事に、未熟な冒険者たちが恐慌を来すのは当然と言えた。
右往左往する者、広場をさっさと逃げ出す者、抱き合う者など行動は様々だ。
俺は、呆然とカヤを見据えた。
「た、助かった……カヤ、ありがとな」
またもやヘタり込みそうなのを堪えて、つっかえていたような息を吐き出す。
「あんたイドの友達かい? 助かったよ」
「あ、この子はカヤって言います。一応は幼馴染みです」
「へえ、案外あんたも隅に置けないねえ? カレンに強力ライバル出現か」
「ええと?」
にやにやするアシュリーさんに困惑していると、
「ジェード……」
ふとカヤが呟いたのが聞こえた。
周囲は誰が魔法を使ったのか把握していないようで幸い俺たちに注目してはいなかったものの、親父は違った。
「イド! 平気か!?」
親父が叫んで駆け寄ってくる。
俺も親父が少し離れた位置に軽い跳躍後のように着地したのは把握していたから、こっちに気付いていれば来るかもしれないとは予想していた。
相変わらず愛用の大剣を片手で軽々と握っている。それこそカレンの
昔どこかのダンジョンで見つけたらしい比重の物凄く大きな希少な金属を用いて鍛冶師に打ってもらった特注品で攻撃力に優れた名剣だ。田舎にいる時も手入れを怠らなかったから新品同様にピカピカで切れ味も鋭い。
武器だけじゃなく防具も今日は何だか強そうなデザインでカッコイ……ん? あれ? 何かどこで見た事があるような気がする。ソルさんに引き取ってもらったカッコイイがゴテゴテした鎧もこんな感じじゃなかったか?
なーんて、きっとどこにでも似たようなデザインはあるんだよな。親父レベルが身につけたところであれは防具のぼの字分も役に立たないだろうし。むしろ動きの邪魔にしかならないだろ。
それより、一番に俺の目に付いたのは赤い色だ。
「……親父、血が」
額を切ったらしく、頬には流血間もない赤い筋ができている。慌てると、苦笑された。
「こんくらい平気だ。ああだがマジでお前が無事で良かった。カヤール、悪いな力使わせて。……ここで使って大丈夫だったのか?」
「外だから、問題ない」
「そうか。そりゃあ僥倖だ」
カヤール。古代の言葉で「幻想」って意味だ。
俺は短くカヤ呼びだが親父はカヤール呼びなんだよな。俺もカヤール呼びの方がいいんだろうか。
そんな俺の思案なんて知らない親父は急に真面目な顔になった。
「お前ら早くここから離れろ」
「ドラゴンが出たからか?」
「見たのか?」
「まあ、かなりスレスレで」
「ならわかるだろ。アレはここの冒険者たちの手に余る。俺とイーラルで何とか始末をつける。だから安全を確保しろ」
くしゃりと頭を撫でられた。
アシュリーさんたちもいるのに恥ずかしいだろ!
やめろクソ親父と手を払いたかったが公然なので実際はわかったと頷くしかない俺の周囲では、親父の正体を知る者も居たらしくいつの間にか人が集まって輪になっていた。
口々に「ジェード・ラルークスだ」「元勇者だ」「やっぱりイレギュラー退治に入ってくれていたんだな」と声を上げ、それは次第に興奮と歓喜、安堵に変化した。
ジェード・ラルークスがいれば大丈夫。そんな雰囲気だった。
「ガハハハ! この俺様の隠せねえ魅力がどうしようもなく駄々漏れて目立って仕方ないようだぜ! ドラゴンは俺が倒すからおめえらは念のため避難してくれ」
調子に乗ったのかいつもの馬鹿さ丸出し口調で力瘤を作る親父の姿にいつもなら呆れる俺は、しかし羨望が胸に湧くのを感じていた。
一時は痛烈に罵倒していても、危機的状況で本物がこうして目の前に現れればもう頼りにしてしまう心の拠り所。頼りにされてしまう包容力の持ち主。そこに居るだけで意図せず皆に安心感を与えられる大きな存在。
親父の言葉を素直に聞き入れて地上の混乱は治まりつつある。
これが、勇者。
……元だが。
愛想良く周囲に応対していた親父が適当な所で切り上げて、くるりと俺たちの方に向き直った。
すると何を見たのか予想外にも目を真ん丸くする。
何だ? どうかしたのか?
俺は親父の視線の先を辿った。
そこに居るのはウォリアーノさんだ。
彼は親父の視線をどこか居心地悪そうにしていた。まあ紳士なウォリアーノさんから見たら粗野が人間化した親父なんてかかずら合いになりたくない人種だろうしなあ。わからなくもない。
これはうちのペットの金毛ゴリラですすみませんと謝罪を入れようかどうしようかと悩んでいると、何と親父は彼に向かってズンズンと歩き出した。
うえええっ!? 俺がお世話になってる大事な人に一体何する気だよ!?
「ちょっ、待っ――」
「――オーウェン!!」
「ストッ……ぷう?」
制止に伸ばした俺の手は固まった。親父はその前にもうウォリアーノさんにがばりと抱き付いていた。
「久しぶりだなオーウェン! あ、ナザールの方がいい?」
何事? オーウェン? ナザール? 誰? ウォリアーノさんの事? ウォリアーノさんはオーウェンでありナザールでもあるのか? ……ソルさんがイーラルさんでもあるのと似てるな。偽名なのか仕事名なのか名前が一つじゃなくてややこしい例がまた増えたな。
そう言えばウォリアーノさんの本名って何だっけ? ウォリアーノさんはウォリアーノさんであってウォリアーノさん以外の何物でもないと思ってたからなあ……ハハハ今更だが知らないわ俺。
だが、オーウェンに関しては別のオーウェンなら心当たりはある。親父のパーティーにいたオーウェンさんだ。いつも仮面だったから素顔は知らないシャイおじさんのオーウェンさんだ。
まあ、オーウェンなんて名前はザラだしな。違うオーウェンさんだろ。違う人、だろ。……だよな?
「…………うん、よし、謎は後で解こう」
だって今はそれどころじゃなさそうだ。
外広場には次々にギルド職員らしき人たちがテレポートしてきていたからだ。一部はダンジョンの方に行き、残りは俺たち冒険者に呼び掛けを始めた。各々帰るようにとか、ダンジョンへは暫くの間入場禁止とか。
うちの一人の男性職員がウォリアーノさんに気付いて駆けてくる。
白髪混じりの年配の人だし見るからにギルドの偉い人って感じだ。
ただ、役職が高くともデスクワーク主体じゃなく体格は鍛えている人のそれで服の上からでも肩幅ががっしりしっかりして胸板も厚いんだってわかる。
黒っぽいスーツを脱げば見事なマッチョ体が見参する事だろう。
その頃には親父のハグは終わっていたものの、まだ話があるのかウォリアーノさんの横に佇んでいた。ギルド職員にも目を向けているし彼が傍に来るのを待っているとか?
ダンジョンからの轟音は間を置いてはいたが止んでいない。
親父はちらりと塔上階へと視線を投げて顔をしかめ、案の定男性職員がちょうど来たところで正面へと視線を戻し口を開いた。
「よっ、ギルドジジイ、久しぶりだな~」
ギルドジジイ!?
いやいやいや年長者に向かって開口一番どんな失礼な呼び方してんだよ!
そう感じたのは俺だけじゃなかったようでアシュリーさんもウォリアーノさんもぎょっとしている。え、つーかこのご立派なご老人とも知り合いなのか?
まあ親父は俺と違ってここで育ったから知り合いが多いのは不思議じゃないか。……だが口の悪い男ですみません。
「へっ相変わらずの減らず口だな、糞ガキジェード」
幸いダンディ老人は憤慨もせずくくくっと咽の奥で笑っただけだった。心が広い……が親父に負けず劣らず口がお悪そうだ。
「ギルドジジイも何かいるし、皆に単刀直入にドラゴンのことで重要なことを言っておく」
虫がいたみたいな言い方をするな、とぶつくさ言うスーツ老人を無視する親父の眼差しには、直前までとは違っていやに真剣な色が含まれている。
「――ダンジョンの外に出る可能性がある」
え……?
俺も皆も息を呑んだ。
剣呑ささえ孕んで親父が放った言葉は、冗談のようで冗談なんかじゃない元勇者の揺るぎない見解。
――物理障壁と魔法障壁の両方を一気に破壊できるような魔物、たとえば強力なイレギュラーが発生してもおかしくないと思うの。
いつかのそんなカレンの言葉が耳奥に蘇る。
カレンの懸念が現実になりつつあった。
「そんじゃ俺は急いで上に戻らにゃならんから行くぜ。オーウェン、頼んだぞ」
「わかりました。できることはしますよ」
「おう、それでこそ頼もしい仲間だぜ」
……やっぱり二人はどう見ても昔からの親しい仲だよな。
一方、ギルドジジイさんは内容に青くなる。
「あっ待てジェード! 今の言い様だと、ドラゴンがダンジョン魔法を突き破ると!?」
「ああ、俺もまだ測っちゃいないが、たぶんあれのレベルはこのダンジョンの魔法障壁を突破できる高さだろうよ。もしそうなった時を考えて王都民にも警戒させる必要があると思うぞ」
「……っ、そ、うか。わかった。早急に対策を取らんとならんのだな、そうなのだな、うぬぬ、うむ。ではこれで失礼する。ウォリアーノ君、後程対応が纏まり次第また会おう」
「ええ、はい」
彼は来たばっかりだったがテレポートで消えた。ギルド本部に戻って緊急会議だろうな。
「ジジイが即行動派なのは相変わらずだぜ。あと高いテレポート魔法具を平気でバカスカ使うとことか。そんじゃなお前ら、ちゃんと避難しとけよ」
「あ、親父!」
跳躍する直前で呼び止められたからか、ズッコケるようになった親父が恨めしそうにする。
「……何だ?」
「カレンが、俺の相棒の女の子がまだ塔の中にいるんだ。金髪でツインテールの背はこのくらいで俺と同い年の。だから……」
「わかった」
端的な返事。何がわかったのかとか、どうするのかとか、細かな部分は必要なかった。
親父なら彼女を見つけたら護ってくれる。
そんな信頼があった。
親父は跳躍と足場魔法を駆使して、おそらくはドラゴンとの戦闘で開けられたんだろう穴の方へと上っていく。
「はあ~、さすがは元でも勇者だね。戦闘じゃないけどあの足場技術も相当だよ。そん所そこらの人間には到底真似できないね。イドの幼馴染みのあの子もさ。ところでどこに行っちまったんだいあの子は?」
アシュリーさんの感激しているような言葉に内心で同意する俺は、瞬きさえ惜しんで塔を見上げた。
カヤは気付いた時にはまたいなくなっていた。ホント神出鬼没だよ。
だが、カヤが使った魔法は俺たちを救った。親父の存在が目立ったせいか或いは親父がその魔法を使ったとでも思われたのか、下手に騒がれたりはしなかったが。
ダンジョン前の広場で俺たちは今暫くカレンを待ったが、状況は変わらなかった。
ただし、その頃にはドラゴンの上昇は止まっていた。
突貫する音が聞こえなくなったから確実だ。まさかのっしのっしと通路を歩いて上がるわけもない。おそらくは地下最下層から天井を突き破って40階層以上を上がってきたんだろうし、さすがのドラゴンでも疲労困憊するんだろう。
休息の時間か。
果たしてタイミングが良いのか悪いのか……。
ドラゴンには特殊なチートがあって、休息中は絶対防御と言っても過言じゃない。
レベルの差が大きいならその限りじゃあないが、この件に関しては親父でもダメージを与えるのには苦労するだろう。
ドラゴン種を倒すのは彼らが起きて動いている時に限るんだよな。
言い換えれば、寝ているうちは安全だ。
だが、それはいつまでだ?
それに
カレンが出てくるまでもう少しあと少しと粘っていたらいつしかダンジョン前広場には俺たちだけになっていた。
「アシュリー、イド君、事務所に戻ろう。カレンのことは勿論心配だけれど、私には君たちの安全を確保する義務もある。それにいつまでもここにいてイド君を危険に晒したら、ジェードさんからフルボッコにされてしまうよ。君は彼の宝だからね」
「フルボッコって、宝って、あはは何を冗談言ってるんですかー…………え? ウォリアーノさん?」
弱い笑みを張り付けて若干顔色を青くするウォリアーノさんに冗談のつもりはないようだった。この人は親父をよくよく知っているみたいだ。だって親父は時々物凄く横暴で、その反動のように時々とても過保護だ。間違っても善人じゃない。かと言って悪人でもないが。
「……あのー、つかぬ事をお訊きしますが、ウォリアーノさんは、仮面のオーウェンさんなんですか?」
核心に踏み込んだ結果、こんな時なのに平謝られたよ……。
事務所で会ったその日に告げなくてゴメンね、知らないふりをしていてゴメンね、と。アシュリーさんは面食らった顔で俺たちの繋がりがわかったようなわからないような様子でいたが、そのうちあははと快活に笑い出した。ホント、こんな時なのに俺まで少し笑ってしまった。
カレンが戻ればきっともっと気が晴ればれとして笑い合える。しかしもしも何か行動を起こすにしてもここにいたんじゃ何もできない。進展させられない。
ウォリアーノさんの促しで、とうとう俺たちはダンジョン前から移動した。
俺としてはカレンが戻るまで、一晩でも二晩でも事務所で待機する心積もりだ。
ウォリアーノさんは夕方魔法の伝書鳩を受け取って直接ギルド本部へと出掛けて行った。呼び出されたってわけだギルドジジ……ああいや名前をゴルドーさんというベテラン職員に。ダンジョンの細かな現状を伝えられたんだろうな。
日がとっぷり暮れた頃にウォリアーノさんはこっちに戻ってきたが、もう深刻さを隠さなかった。
カレンは未だ帰らない。
因みに言っておくと、ゴルドーさんは何と現コーデル国冒険者ギルドマスターだったりした。昔はバリバリの冒険者だったとも。
冒険者ギルドは大きく見れば世界共通の機関だが、各国の事情に合わせて運営する必要があるためにそれぞれの国にそれぞれのギルドマスターがいる。
コーデル国で国とギルドがダンジョンを共同で運営できるのも臨機応変を是としたギルドの共通理念があるおかげだ。
俺たちは現在ウォリアーノさんにテーブルに集まるよう言われて緊張感満載で椅子に座っている。
「ドラゴンのレベルは90だそうだ」
彼の落ち着いた声の後、冷えた間があった。沈黙が凍り付くとしたらきっと今みたいな空気を言うんだろう。告げられた情報は俺たちから暫し言葉を奪った。
「……っ、えっ、マジに、きっ、90ですかっ? 本当にっ? 90って言うと超一流レベルですよ!?」
「残念ながらね。こうなるとギルドの寸止めシステムが働くかどうかも怪しいからね。幸いドラゴンは暴れ疲れたのか休息を取っていてまだ動く様子はなかったそうだ」
レベル90の魔物なんて早々お目にかかれるものじゃない。
「動かないでくれているのは有難いですが、状況は芳しくないですよね。……例えば、王家が称号持ちにリクエストするって言う国家討伐令を出したりはしないんですか?」
「それはまだ何とも言えないらしい」
「じゃあ、カレンはどうなるんですか? 十分国家討伐令を出してもいい強さですよ!」
ウォリアーノさんに当たってもしょうがないのは頭ではわかってる。しかしつい声が大きくなった。ハッとして項垂れる。
「すみません、声を荒げて……」
「いや、気持ちはわかるよ。だからね、明日まだカレンが帰ってこないようなら私があの子を迎えに行ってくるよ。明日までにアイテムも相応の物を揃えておこう。戦うわけではないから私でも何とかカレンを連れて逃げるくらいは可能だろうからね。だからね、皆は安全な場所に待機しているように」
「えっ……」
俺だけじゃない、リリアナさんとアシュリーさんも驚いた顔でいる。だが誰も反対はできないし、避難の拒絶もできない。皆で作戦を練ろうとダンジョン前で提案したアシュリーさんも思ったより難しい状況なのを悟っているからこそ何も言えないんだ。
ウォリアーノさんでギリギリなんだ。
俺たちは完全に足手まといでしかない。
ああ、まただ。
俺はまた、足りない……。
親父のような強さを手に入れられるまで、何度力不足を痛感すればいいんだろう。
ぐっと顎を引いた。
「……わかりました。くれぐれもお気を付けて。カレンを、どうか宜しくお願いします。二人で絶対無事に帰ってきて下さいね」
悔しさをそっくり反転させて、言葉に深く大きな願いを込めた。
ウォリアーノさんはしかと頷いてくれた。
先日とは違って昼間からずっと鳴り止まない王都警報はレベル80未満の冒険者および一般住民は全員避難という、かつてない規模と避難レベルにまで引き上げられていた。
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