第6話 番外編 サマージャム95'

番外編、ということで今回は音楽。本来は映画よりも音楽の方が数多く手を出しているが本エッセイはあくまで素人映画評論なので音楽の話は禁じ手にしてきた。だがその禁じ手に手を出してしまったのはいよいよ私もお尻に火がついてしまったからだ。というのも実に言い訳じみた事を書いてしまうが、とにかく多忙で。映画館に足を運ぶことが出来ないばかりか、Netflixも見れない始末。オマケに夏休み前の閑散期だからか上映中のラインナップにまるで食指が動かない。


というわけで急遽、番外編である。



「サマージャム 95'」


◆アーティスト・スチャダラパー

◆1995年7月19日発売

◆TOSHIBA–EMI

◆10th シングル

◆ジャンル・ラップ、ヒップホップ


スチャダラパーと言えば最近(2017年6月現在)ではEGO-WRAPPIN'とのコラボ曲に女優の「のん」がMV出演してちょっとした話題になっていたのが記憶に新しい。


そもそもスチャダラパーって誰?という未来に生きるキッズたちには説明せねばなるまい。


スチャダラパーは2人のラッパーと1人のDJ。いわゆる2MC1DJという典型的な形から成るヒップホップユニットである。彼らの華々しい経歴を逐一書き出すのもやぶさかではないが、読み易い文字数を考えると泣く泣く割愛せざるを得ない。


やはりスチャダラパーと言えばこの曲。


「今夜はブギーバック」


だろう。当時人気のあったシンガーソングライター小沢健二とのコラボ曲。ファンクでブギー。ドープでポップ。書いてるこちらが訳が分からなくなるくらいカオスで、それでいて不思議とまとまっている不思議な一曲。この曲が売れに売れた。これが、幾度か訪れている日本語ラップ界隈で起きた大きな革命の1つだった。その中心にいたのがスチャダラパーであり、彼らは90年代の日本でのラップの居場所を作る事に大きく貢献した。正にレジェンドと言える。


そんな彼らが1995年に出した10枚目のシングル。それが「サマージャム95'」だ。


なぜ今、12年前もの曲を引っ張り出してきているのか。


それはやっぱり、夏のせい、としか言い様がない。


「今夜はブギーバック」がいわゆる盛り上げ最優先のパーティチューンに対して、こちらは何気ない夏のひとコマを歌ったミドルチューンである。


2人のラッパーによる掛け合い、というかむしろ会話に近い様な気だるい歌い方を全編通して繰り広げている。MCボーズとスチャダラアニの実にだらしなく力の抜けたラップが、より一層暑い夏の日を連想させる。


「今日も暑い日になりそうです」ってニュースで煽られるとキツい。というボーズと、逆に負けるか!って思うアニ。夏を受け入れて「ナツ!大好き!」ってはしゃぎたいけどはしゃげない2人。そんな情景が簡単に浮かんでくる。


「夏と言えば海やプールだけど、とりあえずその前にまず本屋」「んでその後ソバ」


なんでだよ。夏関係ねーじゃん。とツッコミたくなる歌詞だが、夏と言っても結局普段と変わらないんだよ。みんなそんなもんだろ?という等身大の歌詞なのだろう。


「外を見てるとプール帰りの真っ黒に日焼けした小学生がアイス食って歩いててさ」「行ったねえープール。寝ないで車で行って、『なんだよその海パン!』みたいな話して」


という様に誰もが頷ける内容をグダグダと歌い続ける。


私はこの曲を聴くといつもこんな情景が眼に浮かぶ。


ある日の夏の夕方。薄暗い四畳半の部屋。時おり差し込む焼け付くような日差し。型の古い扇風機が忙しく首をふる。テーブルの上にはびっしり汗をかいたグラスに麦茶。男たちは2人、額に汗をかきながら煙草をくゆらせ思い思いの夏を語る。いつしか陽は傾き気温も下がり、麦茶は缶ビールへ、夏の話は青春の思い出話へと変わっていく。


何故そうなるのか。


それはそう、やっぱり、夏のせいだろう。



※youtubeでもフルで聴けるので興味がわいたら是非聴いてみてほしい。

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