第4章 2020年代に向けて
ゼロ年代に活躍した京アニに倣って制作会社を見るのもポイントだ。
2000年代前半が京都アニメーションとするなら2000年代後半はシャフトの勢いが強く、その勢いのまま2010年代に突っ込んだという印象がある。
2011年のまどマギのヒットは大きいが、化物語以降の物語シリーズの人気も商業的に凄まじいものがある。
京アニは2009年のけいおん!人気も続いていたが、やはりハルヒ→らきすた→けいおんが黄金期で、けいおん以降やや失速した感があり、「たまこまーけっと」(2013年)などのオリジナル作品が弱い傾向がある。
こうした点も含めてテン年代の代表は作品としては「まどマギ」、制作会社はシャフトで落ち着くのではないかという予想。
しかし、京アニが完全にオワコンかというとそうではなく、「響け!ユーフォニアム」(2015年)が話題になり、劇場版に加え、今年10月からは二期の放送が決定している。
ハルヒのライブアライブから始まり、けいおん!で確固たる評価を得てオリジナルなど他の分野も開拓したが、やはり音楽ものという方向性を定めてついに吹奏楽・・・というかんじか?次はオーケストラ??(たいして変わらんかw)
2000年代後半から2010年代前半にかけて京アニとシャフトの二強体制が続いていたというのがザックリとしたテン年代の歴史的な評価である。
またテン年代に勃興した他の制作会社を見ると「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」「WORKING!!」(2010年)、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(2011年)「IDOLM@STERシリーズ」(2011年~)など安定化と高品質化を目的にアニプレックスから2005年に設立し子供向けアニメや深夜アニメなど幅広く手がけるA-1 Pictures。
「Angel Beats!」(2010年)、「花咲くいろは」(2011年)、「SHIROBAKO」(2014年)「Charlotte」(2015)など青春モノや働く女の子シリーズを数多く手がける富山に本社を置く地方スタジオ、P.A.ワークス。
「ゆるゆりシリーズ」(2011年~)「月刊少女野崎くん」(2014年)など良作日常系アニメを制作する動画工房。
「キルラキル」(2013年)「リトルウィッチアカデミア」(2013年)などケレン味溢れる作画でアニメオタクからの評価も高い「天元突破グレンラガン」(2007年)のスタッフが中心となって2011年にガイナックスから独立したトリガー。
「進撃の巨人」(2013年)「終わりのセラフ」(2015年)「甲鉄城のカバネリ」(2016年)など処女作から話題作を連発する2012年にProduction I.Gから独立したWIT STUDIOがある。
劇場作品としては2013年にスタジオジブリの宮崎駿監督が長編作品の引退を宣言し、ポスト宮崎候補の動きが出始めた。
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の庵野秀明監督のスタジオカラー
「おおかみこどもの雨と雪」「バケモノの子」の細田守監督のスタジオ地図など。
今度はこうした新興スタジオから次なるムーブメントが生まれることを期待して2020年代を迎えようと思う。
2020代の個人的な予想だが、恐らくエヴァ新劇場版の完結がアニメ史的には大きなターニングポイントになると思う。
新劇場版も序盤こそ勢いがあったが、制作の遅れが長引き、半ば興醒め感がある。
新作を含めた新劇場版全体としての評価が今後の日本のアニメ産業の方向性を決めていくのではないか?
庵野監督には「シン・ゴジラ」(2016年7月29日公開)の成功と絡めた合わせ技でウルトラCを決めてくれることを期待する。
そして00年代に勃興した萌えアニメは衰退期に突入すると見るべきだ。
リアル系ロボットブームが80年代に勃興し90年代前半にかけてゆったりと衰退したように10年~15年単位でブームが終わるという仮説に加え、
実際の数字として06年07年を境にテレビアニメ本数が減少に転じ、アニメの媒体がテレビから劇場にシフトする動きがあった。
ゼロ年代後半に既に業界は停滞期、模索期に入っていたのである。
しかし、テン年代に入り再びテレビアニメ本数が増加。
この数年を見ると1クールアニメが減少し2クールアニメが増加する傾向がある。
1クールアニメのヒット→続編→劇場版orOVAという流れから最初から2クールに設定されたアニメが制作されるという変化は萌え(日常系)一辺倒だったアニメ業界に変化を起こすには十分な条件だ。
フジテレビのノイタミナが好調で初期の少女漫画原作中心のラインナップでアニメを見ないと言われていたF1層(20~34歳女性)の開拓に成功しProduction I.G制作の「東のエデン」(2009年)以降「ギルティクラウン」(2011年)「PSYCHO-PASS」(2012年)やボンズ制作の「東京マグニチュード8.0」(2009年)A-1 Pictures制作の「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(2011年)WIT STUDIO制作の「甲鉄城のカバネリ」(2016年)などのオリジナル作品も数多く制作されるようになった。
A-1 Picturesとテレビ東京がタッグを組んだオリジナルアニメ制作プロジェクトアニメノチカラは失敗と言われているが、サンライズ制作の「TIGER & BUNNY」(2011年)やシャフト制作の「魔法少女まどかマギカ」のヒットも後押ししてオリジナルアニメの商業的リスクも見直され始めている。
1クール中心に萌えアニメは1ジャンルとして定着はするが、主流からは離れて2クールや劇場作品などで物語重視のアニメオリジナル作品が再興するのではないかというのが自分の予想だ。
それより、2000年代をゼロ年代、2010年代をテン年代という呼称があったが、2020年代以降はどうなるのだろう?実はアニメの未来よりも重要な問題だったりするw
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