ラブレター?

紀之介

…愛の告白?!

 生徒会室のドアを開けた桔葉さんは、室内に向かって呟きました。


「お前の秘密を知っている」


 座って何かを読んでた生徒会長が、顔を上げます。


「ききちが僕を脅してる。」


「ききちって言うな!」


 自分の席に腰を下ろす桔葉さん。


「何で、あんたを脅す必要があるの?」


 鞄を開けて、何かを取り出します。


「命令で、思い通りに動かせる相手に…脅しなんか必要ないから」


「…ブレない、傲岸不遜さだね」


 苦笑する会長に、桔葉さんは封筒を差し出しました。


「僕に…愛の告白?!」


「封、開いてる」


 差し出した封筒を手に取るように、桔葉さんは促します。


「下駄箱に入ってたんだよねぇ」


「…ラブレター?」


 興味津々な顔で、生徒会長は封筒に手を伸ばしました。


「中、見ても良いの?」


 桔葉さんが頷くのを確認して、中身を取り出します。


<お前の秘密を知っている>


 便箋には、先ほど桔葉さんが呟いた言葉が書かれていました。


「─ 独創的な愛の告白だね」


 顔を上げた会長が尋ねます。


「ききちの秘密って…何なんだろう」


「ききちって、い・う・な!」


「…日頃の暗躍とか?」


「─ 隠してないけど」


「自慢気に、言わないように。」


 生徒会長は、天井を見上げました。


「生徒会で…会長の僕より、書記のききちの方に、決定権がある件は…」


「…」


「─ 公然の秘密だから…秘密ではないか。。。」


 視線を落とした会長は、桔葉さんの顔を伺います。


「事ある毎に、姉を妹扱いする件は…隠してさえいないし……」


 思案する生徒会長と、桔葉さんの目が会いました。


「どうしたの?」


「もしかして、私って…聖人君子?」


「…は?」


「バラされると困る秘密が、無いんだよ?」


「─ 秘密がないのは たまたまで…行いが正しいからじゃないと思うけど」


「まるで私が…邪悪な行動をしてるみたいに言うね。」


「善良な人間は…暗躍しないし、裏で牛耳らないし、姉を年下扱いしたりしないから」


 不機嫌になりかかった桔葉さんに、会長が慌てます。


「桔葉様が…ある意味では人格者で有る事は、動かし難い事実ですよ!」


「…ある意味って言うのが、引っかかるんだけど。。。」


 あやふやな笑顔を浮かべた生徒会長に、気勢を削がれる桔葉さん。


 椅子の背に身体を預けながら、目を閉じた会長に尋ねます。


「─ 何 考えてるの?」


「何事にも…人選って大事だなーって……」


「この場合の 正しい選択って、何?」


「… 脅しがいのある人を選ぶ。」


「なるほど──」


 意味ありげな桔葉さんの沈黙。


 何を察知した生徒会長が、目を大きく見開きます。


「間違っても、実践で確かめ様とか 思ったりしないように!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ラブレター? 紀之介 @otnknsk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ