2話 仮免冒険者

前の世界から訳があって違う異世界へとやって来てしまった俺だが何故どうやってどうして来たのかとかの詳細などは今度話すことにしようか。


初めに感じたのは眩しい太陽の光だった、最初は視界がぼやけていて何処に立っているかが不明瞭だったのだがそれは数分で解決し、俺は再び前に視線を戻すと冒険者やバスケットを持った女性が俺の前を通り過ぎていく。


「ああ、また異世界か」


俺はため息をつきながらもギルドを探すことにした。


「へぇ〜現実世界と同じくらい発展してんのか」


数分歩いて気づいた事があり町並みを見ると俺が長年生きてきた現実世界とあまり変わらない・・・って訳ではなく逆に現実世界と近いくらい発展している事に思わず感嘆の声を口から出す。


※ ※


「そうかここがギルドか・・・でもなんか思ってたのと違うな」


ここに来た時に背後にギルドがある事を知らずに街中を彷徨ったことはさておき、俺が考えていたギルドとはかけ離れていてギルドの大きさは日本で例えたらセブンイレブン並の大きさだった。


「ま、異世界と言ってもこんなもんか」


俺は頭を搔きながら呆れたという方ではない ため息をついた。しかも築100年は超えてそうなオンボロ感を表に出すギルドの看板は今にも落ちそうだった。


「とりあえず入ってみるか」


怪しいギルドに近づいて俺はオンボロギルドのドアノブを握って力強く開くと驚くべきことに内装が外装より意外と綺麗な事に目を見開いて驚いていると『ギルドカウンターはこちら→』という看板が目に入ったので俺はその通りに矢印の方向を見ると奥には3つギルドカウンターがあり、そこに3人ほど女性が座っていた。


「あの〜冒険者になりたいのですが」


俺はそのギルドカウンターに向かい、3つのカウンターのうちの左側の女性に話を聞くと「はい冒険者ですね、分かりました」と言ってカウンターの下から何やら地球儀らしい機械をカウンターの上に置いた。


「ではこの機械に手を翳してください。」


一瞬躊躇ったが俺は女性に言われた通りに地球儀らしい機械に手を翳してみるとガコンガコンという機械音と共に機械が動き出した。


「なんだこの不気味な擬音、しかも壊れそうなんだけど!?」


俺はその機械に1人で突っ込んでいると手を翳した部分から何やらカードが飛び出してきた、それを俺がキャッチして女性に渡す、


「えっと、和島裕人さんですね? このカードの名前や仕組みはご存知ですか?」


俺のカードを見終えた女性が俺に「これが何かわかるか」と聞いてきたが異世界転移した初日なので俺は説明をお願いする事にした。


「では説明します」


そう言うと女性がカウンターから出てきた。でもまあ俺から見たら冒険者カードにしか見えないのだが本当の名前があるのだろうか?


「えっと、これはドレッドカードと言って冒険者だと表す証明書です。現在は裕人さんは仮免冒険者なので報酬は無いです。 そして普通免許の習得条件ですが最低でも150ポイントが必要になりますので入り口の右にあるクエストボードから受けたいクエストを受注してください。そして最後に仕組みですがクエストをクリアしてギルドにて報告する際にドレッドカードを提出するとそのクエスト報酬で決められたポイントがそこに反映されます。」



――は?待て 仮免冒険者には報酬が無い?


「てことは自給自足生活ですか!?」


「ということになります」


冒険者は簡単になれると思っていたのだが俺は異世界を甘く見ていたらしい、俺の中では異世界で特典を貰って強い敵をバッタバッタ倒して魔王をグシャベチャという効果音と共に切り刻むのを希望していたのだがそれは夢だったのだ、でもやっぱり異世界にも免許があるとなると・・・。


「俺の望んでいた冒険者ライフが・・・」


俺はガクリと首を下げると女性は苦笑いをしながら見ていた。


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冒険者も車の免許と同じく「仮免」があると言う事を聞かされた俺はドレッドカードを片手に俺は街を当てもなく彷徨っていたのだが途中にあった川沿いのベンチで俺は休憩がてら座っていた。


「はぁ・・・俺の異世界ライフは全て崩壊したし自給自足生活とかマジでこれからどうすればいいんだよ。」


俺は先程ギルドカウンターでついでに聞いた情報ではアルカンシェルと言う町でここには初心者の冒険者が集まる町らしい、だが自給自足で過ごさなければならない。 では他の「仮免勇者」はどんな生活をしているのだろうかと俺は疑問に思っていた。


「でもまあ異世界転移初日からこれとか萎えるわ」


俺は前に広がる街並みとたえなく流れる川を見ていた俺はため息をつきながら言っていると隣に白いとんがり帽子を被った女の人が座った。


「はぁ・・・仲間がほしいな」


だがその女の人の存在を一切気にせずに独り言を続ける俺にずっと顔を向けていたので俺は女の人に向かって「なんでしょう」と聞いてみた。


「あ・・・あの、すみません。」


「何故謝るんだ、何もしてないだろ・・・」


何故か急に顔を赤くして女の人は被っていたとんがり帽子で目を隠した、そしてその姿を見た俺は長くため息をついた後、前の街の光景を見ながら女性にこう言った。


「あなたも仮免冒険者だろ、そこにドレッドカードを持ってるし」


帽子に目を隠していた女性がそのままの状態で「え、何ですかそれ? てか何故わかるんですか?」と首を傾げたまま言うので俺は女性の服のベルトに吊るされていた皮のケースから飛び出すドレッドカードを出すと女の人に手渡した。。


「これ・・・ドレッドカードっていうんですか?」


とんがり帽子から片目を出した女性がドレッドカードを初めて見たかのように裏表を見ながら驚いていた。


「それは冒険者カードに似ているけれど普通免許を取るにはポイントが必要なんだ、名前の下に現在のポイントが書いてあるだろう?」


「ええ、0ポイントですけと」


「ギルドの入口の右にボードがあったの分かった? そこからクエストを受注してクエストをクリアしたらギルドに報告するとの同時にドレッドカードを出せばポイントがそこに反映されるんだ」


俺が女の人にドレッドカードの意味などを教えると「へぇ〜」と言いながらカードを眺めていた、その光景を見て俺は心の中で覚悟を決めたのか女の人に勇気を振り絞って


「ちょっと言いづらいけどパーティ組まないか、俺と・・・」


頬を掻きながら言う俺に対して女の人は数秒間俺の顔とドレッドカードを交互に見た後、笑顔で「喜んでお願いします!」と答えた。


「じゃあ自己紹介をしなきゃな、俺の名前は和島裕人、ヒロトでいいぞ」


「ヒロト・・・いい名前ですね、私の名前はロゼリア・アインスタインです、私もロゼリアで構いませんよ。 では、仲間の契約を結びましょう、手を出してください」


俺はロゼリアに言われた通りに手を出すとロゼリアは瞼を閉じた後に何か言い出した。


「大天使ガブリエル、我が名ロゼリア・アインスタインの名において契約はここに結ばれる」


ロゼリアの仲間の契約中に俺とロゼリアのドレッドカードが光りだしたので俺は片手をポケットに入れてドレッドカードを見ると何も記されていなかったところに名が書き込まれていた。


「これで仲間の契約は完了です、あとドレッドカードにもそれは反映されるんですね 」


「ああ、そうらしいな。 てかロゼリアって家は無いのか?」


俺はロゼリアに家があると聞いてみると「ありますよ、妹と同居してますから」と言ったので俺はロゼリアの前で土下座をした。


「ロゼリア様ァ! 俺を家で養ってください!」


「ええ・・・いいですけど仲間ですしね、まあ仲間じゃなかったら蹴り飛ばしてたかも・・・」


――それは酷いなぁ!?


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こうして俺はロゼリアと共にロゼリアの家に向かっていると前方から誰かが走ってきた。


「ロゼリア姉ちゃ〜ん!!」


ロゼリアの妹だろうか、いや完全に妹だ。


「ラゼリア駄目じゃないですか、一人でこんな夜に出歩いたら」


ロゼリアは妹のラゼリアの頭を撫でながらも叱る妹思いのロゼリアに俺は感心していた、だが妹は俺の顔を見て。


「ロゼリアお姉ちゃんこのおじさん誰?」


――ひっぱたいてやるから頭を貸しなさいラゼリアさん。


「ほら、駄目でしょう? すみません私の妹がヒロトに対して無礼な言葉を言ってしまいラゼリアの変わりに謝らせてください」


ロゼリアはラゼリアの頭を優しく叩くと俺に向かって妹のラゼリアの変わりに謝ってきてなんか俺が悪者に思えてきてしまった。


「まあいいんだ、とりあえず宜しくなラゼリア」


俺はラゼリアの背の高さまで屈んで挨拶をするとラゼリアは笑顔で「こちらこそよろしくお願いしましゅピロトさん!」と挨拶すると余りの可愛さに俺の心は天使の弓で射抜かれてしまった。

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