8.なにを云ってるのか理解できません。
「あーっ!
変態ドS眼鏡!!!!」
「……あまり大きな声でそういうこと、云わないでもらえますか?」
「……すみません」
いいともなんとも云ってないのに、変態ドS眼鏡――もとい。
和久井先生は勝手に私の隣に座ってくる。
「……文。
イケメンじゃない」
「……だってマスクの下なんて知らないもん」
こそこそと話ながらも千草の目はちらちらと和久井先生に向いている。
確かに、不細工だって思いこもうとしてたのに、否定のしようがないくらい、イケメンだった。
「また、歯が痛んでるんでしょう?」
「そ、そんなことないです」
「文さっき、歯が痛いって云ってたけど」
うっ。
なんでチクる?
ジト目で千草を睨んだら、素知らぬ顔でコーヒーを飲んでいる。
「確かに、痛いですけど。
別の歯医者に行くので」
「どうして?
僕のところにくればいいでしょ。
ずっと待ってたのに、来てくれないんですから」
「ずっと待ってたんですか!?」
千草、食いつくところ、違ってない?
そしてなんで、そんなに目がきらきらしてる?
「はい。
毎日毎日、今日こそは都築さんが来てくれるんじゃないかって待ってました」
「文、待ってたってよ!」
なんで千草はそんなに食いついてる?
そして和久井先生もなんで、薄笑いでコーヒー飲んでるの?
「……いや、だから、痛いの嫌だし。
別の歯医者行くし」
「うちは痛みの少ない治療がモットーなんですが?
そういえば、変態ドS眼鏡ってなんですか?」
全くもって意味わかんないです、そんな顔で和久井先生は笑って首を傾げてますが。
……いやいやいや、あんなに楽しそうに、私の痛いとこ、ツンツンしてましたよね?
「文ってときどき、変なこと口走るんですよー」
いや、千草も全くもってなに云ってる?
「まあいいですけど。
あれだったら、今日は休診ですが、痛みが止まるように処置だけしますけど?
ああ、でも、痛みが止まるとまた都築さんは病院避けちゃうかもしれないから、痛いままの方がいいかもしれませんね」
軽く握った手を口元に当てると、おかしそうにくすくすと笑ってる和久井先生。
いや、おかしいというより楽しそう、だな。
やっぱり私が痛がってるのを喜んでる、変態ドS眼鏡にしか見えない。
「……歯医者は行く、けど。
あんたのとこには行かない」
「だからなんで、僕を避けるんですか?」
「そうだよ、文。
なんで和久井先生のところに行かないの?」
なんで千草は和久井先生の味方する?
イケメン、イケメンだからか!?
「だって絶対、痛くするもん」
「だからしませんって」
「する、絶対」
「しませんよ」
「というかなんで、私の歯を抜きたがる!?」
「だって都築さん、可愛いから」
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