第16話 もう少しご覧になって下さい
執務室へ向かう途中で、ロマーナさんがエメさんにお茶の用意を頼んだりしたあと、ハナの居る執務室へお邪魔した。
「ようこそ、お待ちしておりました。お兄様。どうぞ畳の間へ」
「あぁ、ありがとね。お邪魔します」
僕たちは畳の敷かれた空間に座り、対面した。そしてエメさんがお茶を差し出してくれたところでハナが話し始めた。
「選定に時間が掛かり申し訳御座いません。ようやくご覧に入れられる物となったので、お兄様、ご確認をお願い致します」
「ありがとう、手間を掛けさせてごめんね」
そう言ってハナは書類を畳に置き、差し出すように渡された書類を僕は見ることにした。
★特典1 正式にハナの親族になって、神の仲間入りが出来る権利 1000億pt
うん、1枚目にでっかくそう書かれて、他にメリットらしき事が沢山書かれていたが2枚目を見るために紙を送る。
「あぁ、そんなお兄様。せっかく装飾なども頑張ったのですから、もう少しご覧になって下さい」
ハナに泣きそうな声で訴えられて、気にせず2枚目を見ようと思ったけど出来ずに1枚目に戻した。
「神様になる気は無いと伝えたと思うけど?」
「当分というお言葉をお忘れになってますよ、お兄様。いずれというお言葉も地上に降りられることを伝えに来られた際も仰っておいでと存じます」
しれっとしたすまし顔でそう言われてしまった。僕が神様になったら大変な事になると思うんだけどなぁ。サポート役に徹しても、いずれそれが原因で人々に迷惑をかけそうだし。
「ハナを疑うわけじゃ無いけど、そもそも超過した罪数ポイントで本当に神様になれるの?」
「お兄様がそう仰りたいお気持ちは存じ上げています。お兄様の懸念を払拭するためにも、私が親しくさせて頂いてる同じ若手の神と、私に世界の運営方法などをご教授下さった神に問い合わせ致しましたところ、同じ返事が返ってまいりました」
「お。何て言ってきたの?」
「『いいんじゃね?』と仰って下さいました」
軽いなー神様たち。え、本当に良いの?とてもこちらは『いいんじゃね?』って気持ちにはなれないんだけど。
「だけど、神様として地上に降りるのは何か違う気がするんだけど。トラブルも多そうだし」
「そちらも問題ありません。1枚目の一番下をご覧下さい」
「ふむ・・・」
メリットなどが書かれている一番下に目を移す。目を移動している途中で『いつでもハナを抱っこしてナデナデ出来る』とか書かれていた気がするがスルーする。
「えーと、『神となる時期は総計のポイントから1000億引いた残りのポイントを使い果たした時、もしくはマサト様の判断に
「左様で御座います。そして500億ものポイントも早々に使い果たすことは出来ませんのでご安心下さい。また残り1000億ptを下回りそうになった時点でお兄様を天界へ強制送還することになります。ご了承下さい」
いずれ神様になってしまうことが決定してしまったが、ハナの言葉を信じれば当分先のようだし、僕の言ったことは守られていた。それなら納得いくまで地上での生活を満喫しようと思った。神様になることを断ったら、地上に行けなくなりそうだし。
「分かった。じゃあ、次の特典を見せて貰うよ」
★特典2 これであなたも永遠の美しさを!不老長寿になる権利 1億pt
人間の身でハイエルフと同等かそれ以上の寿命と、若さを保つことが出来る権利
「え?これってアリなの?」
「はい、問題御座いません」
確かハイエルフってエルフで1000~2000年の寿命があって、ハイエルフだと1万年とかだった気がするんだけどなぁ。それだけの寿命なのに1億。いや普通なら得られないポイントだから手に入れようと思ってもありえないんだろうけど。
「1600年以上ここに居る僕が言うのもなんだけど、さすがに1万年以上を地上で生き続けることが楽しいかと言われたらどうなんだろう?いや、ハイエルフたちは実際それだけ生き続けているんだから、マネすれば良いのかな?」
「お兄様のお好きなようにお過ごし下さい。これは人間の寿命ではとても500億を超えるポイントを使い切ることが出来ないからという理由も御座います。また人生に飽きたら先程伝えたように神になると仰って下されば、その時点で一生を終えることも可能です」
人生に飽きて死にたくなったら神になるとか、壮絶な自殺だなぁ。
「ちなみに、これって要らないとか要るとか決められるの?」
「お兄様の判断で決められるは、特典の前に付いている星マークが黒塗りか白塗りかで判別出来ます。黒は強制的に付与され、これは主に天界側の事情となります。白はお兄様の判断で要る要らない、これ位は欲しいなどを決められます」
「つまりこの特典2は天界側の事情で、僕のポイント消化のためってことだね。なるほど、分かった。次の特典に移ろう」
☆特典3 何もしなくても強くなれる!?驚異の身体強化 0~4万8000pt
筋力だけでなく魔力・魔法抵抗力なども含めた強化。強化出来る要素は、筋力・体力・敏捷力・生命力・命中力(器用さ)・反応力(反射神経)・知力・魔力・魅力・幸運と耐久力・魔法抵抗力の12種類とする。また各ステータスに割り振れる最大値は4000ptとする。
「これも凄く大盤振る舞いな気がするけど、これって大丈夫なの?マルギットさんより多いと思うけど」
「はい、マルギット様の特典の総数は約1万ptでした。あの方は筋力に3000pt、それ以外のステータスに残りのポイントをほぼ均等に割り振っておられました。最大値は仮にお兄様がまたあの方と敵対する立場となられた場合でも、恐らくどのような状況でも勝利できるように計算致しました。さすがにこれ以上のポイントを割り振ると悪目立ち致しますので、あまりお勧めは致しません」
十分悪目立ちすると思うけどなぁ。0~ってなっているのは僕の裁量で決めて良いということか。
「お兄様、最終的な判断はお任せ致しますが、これはあくまで基礎のステータスに追加付与するだけです。地上の方の職業によってはスキルや魔法でステータスを何倍にもすることが出来ます。余程のことが無い限りは、最初から目立つ様なことは無いかと存じます」
僕が悩んでいると、ハナがそう諭してくれた。それもそうか。それなら、僕も遠慮するのは止めよう。
「じゃあ、全部最大値でお願い」
「私が促したとはいえ、宜しいのですか?お兄様は程々かあの方と同じ強さを所望するかと存じておりましたが」
ハナのいうことももっともだと思う。僕自身もそうした方が良いんじゃ無いかと未だに悩みそうになるけど、これで良いと判断した。
「何かを守らなければならないときに、後で後悔したくないから。お願い」
「・・・左様で御座いますか。畏まりました」
僕が今まで色々な目を見てきたのが分かったのか、ハナは優しげに微笑んで頷いてくれた。
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