第5話 申し訳御座いません
ブラートを見送った後、リナさんに促されスロットが自分の番だったということを思い出した。慌ててスロットのレバーを握ると液晶表示板に僕の罪数ポイントが表示された。
【罪数ポイント:1,564,873,125pt】
ポイント表示が凄いことになっていた。前も聞いていたけど口頭で言われた事と目で確認する事とじゃ何かインパクトが違うなぁ。さっきのブラートの罪数ポイントを見た後だと、本当に桁が違った。それだけに自分が大変な事をしてしまったんだとハッキリ分かった。
「よし。じゃあ、せーの!」
いつまでもポイントにビックリもしていられないので、気合いを入れてレバーを下げる。ドラムがグルグルと回り結果が表示された。
[禊ぎ][終][了]
ドラムが停止した結果が職業などでは無く結果を続けて読むと[禊ぎ終了]になっていた。どうなっているのかと、リナさんの方に振り向いてみると顔を真っ青にしたリナさんが呆然とカジノスロットを見ていた。
「え?どういうこと?」
もう一度自分もカジノスロットを見てみても、[禊ぎ終了]が表示されていた。あれ?もしかしてこれって禊ぎが終わったってことなのかな。でもなんで突然終わったんだろう。もう一度リナさんに振り向くと彼女は、震える指先をカジノスロットの液晶表示板に指さした。
【罪数ポイント:1,564,873,125pt】
【達成ポイント:0pt】
【達成後の残罪数ポイント:-157,925,439,461pt】
ん?何で残罪数ポイントの方が長いんだろう。ジーッと近づいてよく見てみるとマイナスが付いていた。何コレ?眉間に皺を寄せて液晶表示板を見ていたら、後ろからドサッという音が聞こえた。振り向いてみると、リナさんが倒れ込んでいた。
「え?!ちょっ、大丈夫ですか?」
慌ててリナさんの肩を掴み、顔が上になるよう仰向けにすると元々白かった顔だけど、さっきの青ざめた顔より更に白くなっていてまるで重病人のような顔色をしていた。とりあえず、リナさんを何が原因か分からないので人間に対処するように気道を確保して身体を横たわらせた。
「すみません!リナさんが倒れたんですが!バニーガールさーーーん!」
他のバニーさんをどう呼べば良いのか分からなかったけど、救助を呼ぶことにした。僕の周りの人達も遠巻きにざわめきながらこちらを眺めていた。そして野次馬達をかき分け、複数のバニーさんが担架を持って駆けつけてくれた。
「マ、マサトさん。・・・申し訳御座いません」
バニーさん達が駆けつけてくれるのを見てホッとしていたら、横たわっていたリナさんが意識を戻したみたいで僕に顔を向け涙を流しながら謝罪していた。
「そんな。大したことはしていないので、病気の時くらいはそんな事気にしないでください」
「ち、ちがっ」
「ほら、他のバニーさん達が来てくれましたよ」
駆けつけてくれたバニーさん達はリナさんを担架に乗せあっという間に運び出していった。大丈夫かな、リナさん。頭とか打ってなかったら良いんだけど。
「マサト・カナエさん」
リナさんを見送っていたらいつの間にか僕の傍らにバニーさんが居た。目を合わせるとバニーさんは深くお辞儀をした。
「わたしはロマーナ・ブレイヤと申します。リナ・フレイヘドがご迷惑をおかけしました」
「えーと、ロマーナさん。僕は別に大したことをしていませんよ」
「・・・すみませんが、少し事情を聞きたいので事務室へ来て貰えますか?」
「ええ。それは別に構いませんが」
普通なら事情聴取で事務室へ行くのなら、何もしていなくても自分が何かしたかと不安になるものだろうけど、ロマーナさんの雰囲気がほんわかしているので、怯える必要は無さそうだった。
「では、着いてきて貰えますか?」
「あ、はい」
にこやかに言われて、つい条件反射で返事をしてしまった。これで事務室に入ったら警察の取り調べのような扱いに変わったらかなりの演技派だと思う。
「すみません~!こちらのスロットは臨時メンテナンスを行うことになりました~!列に並ばれていた方はお手数ですが他の列に並んでください~!」
「ご迷惑をおかけします!申し訳ございませんが、列が乱れているため今一度整列をお願い致します!」
ロマーナさんの後ろをついて行っていると、先ほど自分が並んでいたスロットのところでバニーさん達が野次馬や列に並んでいた人達に大きな声で説明をしていた。僕がスロットを引いてからリナさんは倒れるし、バニーさんたちには迷惑をかけているしでいたたまれなくなる。
「なんだかご迷惑をおかけしてすみません。僕、スロットを壊してしまったんですかね」
「いえいえ、その可能性は低いとは思いますが念のため今からスロットを調査して、同時にマサトさんから状況の確認をお伺いしたいなと」
「なるほど」
その後は会話らしい会話も無く、扉の前まで来た。どうやらここが事務室らしい。ロマーナさんが扉を開け少し中に入り、僕も入るよう促す。
「し、失礼します」
僕は一応挨拶をし部屋の中に入ると、そこにはカウンター越しに机とパソコンが並び一心不乱に何か作業をしている女性達が居た。バニーさんではなく、いつかドラマで見たOL風の制服を身につけていた。彼女たちを見ていると、納期に追われたデスマーチ中にしか見えない。みんな、目に隈とかあるし目がギラついている。栄養ドリンクみたいなのをストローからズゾゾゾゾと音を立てながら飲みながら作業をしている人も居た。
「お見苦しいところをお見せしてすみません。応接室へはここからしか入れないんですよ」
「いえ、あの。大変そうですね」
段々彼女たちを見ていて怖くなってきたので、目を逸らした。禊ぎとしてここに放り込まれたら多分心が折れる。広間のカジノが天国だとしたら、ここは地獄なんだろう。天界の人が地獄を味わっているのは謎だけど。もしかして彼女たちも罪人なんだろうか。
「じゃあ、応接室へご案内します」
「はい、是非お願いします」
早くここから立ち去りたかった。ずっとここに居たら気づいたら手伝わされてあの場に居そうな気がする。カウンターの横を通り抜け応接室に入り、促されるままソファーに座る。
「さて、早速ですみませんがリナ・フレイヘドが倒れる原因に対して、何か思い当たりはありますか?」
ロマーナさんは僕がソファーに座ると、自分も対面に座り早速質問してきた。僕はカジノスロットを引いて、[禊ぎ終了]という結果が出たり、残罪数ポイントがマイナスになってバグっていたりしたことなど、さっき起きたことを思い出しながら喋った。
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