第12話 Sweet dreams


「こんばんわ。お風呂って入れてるの? 」



ふぅ…。


二時間考えてこれだけ打つのが精いっぱいってどうなの水意?


ケータイと一緒にベッドに転がる。



今日は色々とあったな…。


空さん……綺麗な子だった……。


同じクラスで小学校からの私の数少ない友達、生徒会副会長をしてる樫見ゆかりかしみゆかりの話では、葵ちゃんと空さんが、三年と二年の人気投票でワンツーらしい。


そりゃあんなに綺麗なんだもんな。

息を呑んだほど綺麗だった…。


美里ちゃんが言ってたように、私なんかじゃやっぱり敵わないな…


蒼音くん…すごいキスしてた……。


自分の唇を触ってるのに気づいてとたんに恥ずかしくなる。


やだ そんなつもりじゃ!

つもりじゃ…………………。


つもりなの……かな……?



いいなぁ。


私なんかこんなメールするだけで、こんなに時間とかかかって…こんなに神経つかっちゃって……。


空さんってば、蒼音の上に跨がって、首なんかに絡んじゃって……キスを…舌まで……………きゃ!



でも、いいなぁ。


あのときも

友達って言ったけど、


私もやっぱりそれ以上になりたい…



「────♪」


蒼音!


ガバっと起きてケータイを見る。


「件名:こんばんわ。」


やたっ!返ってきた‼

蒼音のメールと着信音だけは、特別な音に設定したからすぐに気づく。


こんなに嬉しくなるもんなんだ。


蒼音?あなた魔法使いね。

一瞬で私の目に見えるすべてを七色に変えた。


ふんふん♪どれどれ?


「さっき気づいたよ。返信遅くなってごめんな。風呂は入れたよ? 今行ってたんだ。それで、ケータイ見てなかった。みいはもう風呂入って落ちついた?」


……………………くぅううううう。


みいはって!!


みいは!


ひらがな。可愛い‼

たまんない!


ふぅぅ…。

なんて返したらいい?


入ったよって?

ダメ!話が終わっちゃう!


んー。落ちついたよって?

終るでしょ?普通に。


えーっ ご趣味は?

若い二人じゃないんだから!


…………………好きです。


消すっ!ダメっ!何言っちゃってんの?私?


はぁぁ。なんて返そう……。


無難にしとこ。


「さっきお風呂あがってベッドの上。明日もノート持ってっていい?」


えい。


…………………………………………


だ ダメだった……かな?


そりゃそうよね。空さんや葵ちゃんがちゃんと居るんだもんね。

なんだったらまゆちゃんって子や、美里ちゃんや千秋ちゃん本人って手もあるだろうし。ハカセくんもいるだろうし。


はぁぁ……なんであんなこと書いたんだろう……。


───────♪


来た! 早い?!


「件名Re:Re:こんばんわ。」


ふぅぅう怖いよー。


「そうなんだ。一緒じゃん。俺もベッドに転がったとこ。ノートは無理しなくていいよ。みいも仕事いっぱいあるだろ?俺にかまけてたら、あとで色々大変になるんじゃね?」



大変でいいよ!かまけてたいの‼

生徒会の仕事なんてゆかりに任せてたら上手く回すんだから!


ベッドに寝てるのかー。一緒だ。

嬉しいな。


「生徒会の仕事は日中に出来るから大丈夫。帰るついでにノート持ってくだけだし。ね?そこから月が見えてる?」


どうだっ。


──────♪


「じゃぁ甘えてもいいかな? 毎日昼に逢ってたから、ちょっと寂しいしさ。月は見えてるよ。」



やった♪甘えて!

ってか……ちょっと寂しいし?

え?どういう意味だろう?

単純に…寂しいだけ…かな?

期待していいのかな?



「じゃぁ持ってくね。

私に毎日逢えなくて、寂しいの?

私も今、月見てメール打ってる。」


───────♪


「毎日みいの顔見てたからね。逢えないとちょっと寂しい。

月?見てるよ。俺も。」



何? これ?

泣けて…きちゃう……。


嬉しい………嬉しいな……。



「ありがとう。私も、あなたに毎日逢えなくて、ずっと寂しい。

今まで、独りでずっと月を見てたの。ずっと。

ずっと構えて、ずっと頑張ってたの。

誰にも、嫌いになられないように。ずっと。

でも、月なら、昔から、本当の私をちゃんと見てて、くれるから…。」



無理だ。

こんな、こんなこと書かれても、困るだけよね?


でも、このひとなら。


このひとならって思ってしまった。


あの音を聴いた時に。


あの時から、私は私でありたいと思い始めた。



無理だ。

返ってこな…い。


しょうがない。明日謝ろう。


しょうがない。



─────♪



「俺も月は大好きだよ。

言ったと思うけど、俺の前では、そんなこと気にしないでいいよ? なんかみいが抱えてるのも気にしてたんだ。言えないならいいけど。俺はみいがちゃんと笑ってる顔が好きだな。生徒会長な、みんなが慕ってるみいじゃなくてさ。たまに本気で笑ってるみいが好きだよ。

だから、俺の前では頑張んなくていいよ? これからは一緒に月見ようぜ。」



もぅ。 もぅ。

やっぱりこのひとは。


涙が止まんないじゃん。もぉ。


メールが打てないよ。



気づいてくれたんだ。

私を、気にしてくれてたんだ。


言ってもいいかな?

聞いてくれるかな?


このひとなら、きっと大丈夫。

きっとわかってくれる。


ほんとに

ありがとう。


私を見つけてくれた。



「うん。これから一緒に見てくれる?

私のことも、ちゃんと見て欲しい。

明日、ぜんぶ話すね。

おやすみなさい。」



好きだとは言えないけどね。


すべてを話したら今度は、

あなたに選んでもらえるように頑張ります。



おやすみなさい。大好き。



──────♪



Sweet dreamsいい夢をみい!」



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