第11話 病室から愛を込めて


「ブっルーっノーっトっはね♪」


藤宮医師会病院。

私は美里に挟まれたままスキップで病室の廊下を進む。スキップしにくい。


やっとdarlingに逢える。最近ゆっくりと顔を見てないから大変だった。

何がって?ふふふふ。ナニがよ。


まぁようやく彼に逢えるんだ。

今はボロボロのはずだから心配もしてた。寝てたらどーしてやろう?ふふふふふふ。葵のOKも貰ったからなー。思いっきりキスしまくってやる!でぃーぷなやつたーっぷりしてやる。それで赤ちゃん産もう。決めた。


「なぁにー空ちゃん?吐息が熱くなってきたわよ?あん。もぅ。胸が熱くなってきちゃった。」

「みさとくるしー。頭押さえないでー!」

「あぁん。もぉ。優しくして?あとで。ね?」


なんかみさとはワケわかんないこと言ってるけど、とにかくブルーノートだ。

ふん ふん ふん♪


「ここだー!」


引き戸を勢いよく開ける。


「hey!How's is conditions? my Dear?(具合はどう?ダーリン?)」


……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………誰?


寝てるブルーノートの隣に座る黒髪の女の子。


綺麗な髪……。

真っ黒過ぎて深緑に見える。


ブルーノートの手を自分のほっぺに当てて、じっと寝顔を見ているらしい。


でも、さっきからちっともこっちを振り返らない。

無視されてる?


みさとがささやく。


「…空ちゃん?誰?」

「……わたしもわからない…。」

「制服……ウチのだね?」


ほんとだ。気づかなかった。

それにしても、まだ振り向かない……むぅ。


「Hello?Excuse me?! Is anyone there~?(こんにちわーすみませーん。誰かいませんか~?)」


「……ん………」


ブルーノートが動いた。

むかっ。あなたはガン無視か。


ブルーノートが手を自分のほうに引こうとして、彼女から手が離れる。

頭を上げた彼女は、驚いたようにこっちを振り返った。彼女はすぐに立ち上がり私たちに向かって腰を折った。


「ごめんなさい!」


みさとがすぐに反応した。


「九合様?! ……いや九合先輩‼」


…………誰?


「……ごめんなさいボーッとしてて。……あなたは…空さんね。そちらは…一組の委員長さん…かしら?」

「はいっ!一年一組学級委員長を勤めさせていただいております。田中美里ですっ。わ~。嬉しいなー!私のこと覚えていて下さってるんですねー!感激です!」


みさと…?

明らかにキャラが違うぜ?

なに真っ赤になってモジモジしてんだ?

この女すごいのか?

なんだか人の顔をジロジロと見るヤツだな?感じ悪いぞ。さっきはガン無視してたくせに。


「…能力の高そうな子はちゃんと見てるわ。次期生徒会を任せなきゃいけないんだもの。あなたは三組の千秋ちゃんと共に、私の推薦候補にあげているの。」

「本当ですか?! 千秋も?! ってか、……なんで千秋は名前で呼んでるんですかぁ?いーなー!千秋いーなー!」

「ふふ。可愛い子ね。あなたも名前で呼ばせて貰ってもいいかしら?」

「もちろんです!!どうか、呼び捨てでお願いします!み・さ・と・って呼び捨てで!ぜひっ!」

「…わかったわ美里。これからもよろしくね。」

「きゃぁぁぁぁぁあ!もっ もぅ イっちゃう! 空ちゃん?! 抱っこして?! お願いっ!倒れちゃう!」


えっ? えぇぇぇ?!

とりあえず後ろに倒れてきたみさとを受けとめる。


「ふふふ。そんなに喜んで貰えて嬉しいわ。椅子…出すわね。」


みさとが跳ね上がる。おー。すごい。


「いえいえいえいえ!滅相もありません‼ 私と空は正座で!正座で構いませんのでどうか九合様がその椅子を!なにとぞ!ひらに!ひらにー!」


…お前何者だよ?

なんだかサラリーマンの哀愁漂うよ?


「……なに騒いでんだ…うるせーなー……みい?…来てたのか…。」

「蒼音。起こしちゃった?ごめんなさい。」


むむ?蒼音だと?


「蒼音くん?! あなたなに九合様と馴れ馴れしくしてくれちゃってんのよ?バーカ。」

「美里?……ソフィも。……バーカとはなんだよ怪我人に向かって…?ってか九合様ってなんだよ?九合先輩ならまだしも……。」

「あんた畏れ多いのよバーカ。この方はねー。私たちの女王様なの。かの九合財閥の一人娘にして、あと取り。我が校No.1の学力を誇る生徒会長。九合水意様にあらせられる‼えぇぇぇい。頭が高いわー!控えー!控えおろー!」


みさとおもしろーい。だんだんお笑いキャラになってくね。


「みい?お前ん家。なんか金持ちなのか?」

「お前言うなバカ!あと、呼び捨てすんなバカ。」

「……えーっと。そう…言われてるかも…。」

「へえぇ。すごいな? でも、窮屈なんじゃねーのか?」


彼女は少し顔を伏せた。


「…まぁ…ね。慣れれば大丈夫だよ?」

「ふーん。まぁ。俺と居る時はそんなもん関係ないからな?普通にしてろよ?お前はお前。俺の友達のみいだ。」

「馴れ馴れしいって言ってんだこのバカ。」

「……ありがとう蒼音。」


途中、みさとのデッドボールが飛び交う中、ブルーノートと見つめあうこの女……惚れてやがるな?ブルーノートは絶対気づいてないけど…。


ふん。私は許嫁だもん。


「あー。話はなんかよくわかんないけど、生徒会長さん?ちょっとブルーノートを貸して貰いますねー。よいしょっと。」


上半身を起こしてるブルーノートの上をまたいで騎乗座位。首に絡んでやる。ふふ。可愛い。

あの女が驚いてる。ふん。だって許嫁だもの。


「なっ なんだソフィ?ベッドに乗ってくんな!」

「ねぇダーリン? 上向いて?」

「……上って?」

「私を見て?」

「……はい?」

「これはまゆから。」

「────?! 」


マウストゥマウスのキス。

軽ーくね。まゆのだもん。


「──にすんだバカ‼」

「だって頼まれたんだもーん。」


みさとは笑ってるけど、あの女は口を押さえてビビってやがる。ふんっ。


「これは葵の分。」

「─────@☆§£$*★………ぷはっ!ベロ入れんなバカ!」

「だって葵のキスだよー?フレンチじゃぁダメでしょ?ちゃんと舌入れなきゃ。」


みさと爆笑中。あの女はもはや下を向いてる。


「じゃぁ今度は私の番。………ね?ずっとずっと逢いたかったんだよ?……ずっとずっと頑張ってたんだよ…?」

「……知ってる。さんきゅ。」

「……Not! I'll not forgive you.Darling。(ダメ!許してあげない)」

「……What should I do?(どうすりゃいい?)」


「Gimme a big hug… (ぎゅぅってして。)」

「……はいよ。」


ぎゅって抱きしめてくれる。

嬉しいな。


「……Pat my back!(とんとんして!)」

「はは。 はいよ。とんとん。」


優しいなー。やっぱり落ちつくよ。

あーあったかい。


「Lovin'you Bluenote…Can you kiss me?(愛していますブルーノート…私にキス出来る?)」


ブルーノートはみさととあの女をチラッと見てから


「Ofcourse. ……Look up.(もちろん。……上向けよ。)」

「……ん。」


私の唇を優しく包んでくれるようなキス。

ブルーノートらしい 優しいキス。

もうなんだかどうでもいいや。

私はもう満足だ。


「……微笑ましい再会に口を挟むのはなんなんだけれど、蒼音くん?そろそろ私の空ちゃんを返してくれないかな?」

「──☆$§@っと。ソフィ?降りろ? move!!」

「きゃ?! ……なんだよーみさと。邪魔すんなよー?」

「いやー。英会話だから半分も分かんなかったけどね。なんかこの男にムカムカしちゃってもぅ。」

「ブルーノートをいじめたらダメ!私のなんだからね?」

「はいはい。ごめんなさい。……それで九合様…先輩はどうしてここに?蒼音くんと友達って本当ですか?」


ずっと下を向いてた女が顔を上げる。うわー。真っ赤っか。


「あ……あぁ。本当よ。ちょっと前に知り合ってお友達になったの。今日の授業をまとめたノートを届けに来たの。千秋ちゃんに頼んでたのよ。お見舞もしたかったしね。」

「そうなんですかー。こんなクソ野郎の為にすみません。ほんと三倍返しくらいさせますから。」

「いいのよ。私が好きで勝手にやってることなんだから…。ごめんなさいね空さん。」

「いーよ。あんたいい人だなー。でも、ブルーノートはあげないよ?」


見た目に分かるくらい動揺してる。

ほらな?


「…蒼音くんはお友達だから。空さんは蒼音くんの彼女さん?いつも一緒に居たけれど…。」

「私はねー。許嫁だよ?葵と一緒。まゆはブルーノートが好きなだけ。でも裸で朝まで一緒に寝たって言ってた。ブルーノートがなんもしてくれなかったってブリブリ怒ってた。」

「お前っ!余計なこと言うなって!」

「ほんとだもん。ねーみさと?」

「…ほんとなんですよ?ほらクズでしょぅ?中学時代にやめといて正解だったわー。よかったー。」

「なんだ?みさともブルーノートのことが好きだったのか?」

「むかーしね。でも、葵に譲ったの。あの子は生まれた時からずーっとこいつだけ見て、こいつだけのことを考えて来たんだからね。私たちが入り込む隙間なんてあるわけないじゃない。それに、こいつには葵か空ちゃんがお似合いよ。きっと世界中の誰も敵わないわ。」

「みさと……。お前いいヤツだなー。好きだ!!」

「いらっしゃーい空ちゃん!今日は私がいろいろと★@§£%£☆」


「勝手にやってろ。……みい?ごめんな?いろいろとつまらないこと聞かせちゃって……」

「……いいのよ。ちょっと今はいろいろありすぎて頭が混乱してるけど。……許嫁さん…なの? その…空さんと葵ちゃんが……?」

「…う…ん。そうなんだけど…ちょっとまたあとでゆっくり話すよ。また逢える…かな?」

「……もちろんです。あ。ケータイ。聞いたらダメ?」

「あ あぁ。いいよ。教える。メアドも。」

「…うん。嬉しい。」


なんかあいつらコソコソしてる…

みさと?! そこはダメ!そこ触られたら死んじゃう!みさとー!


「…じゃ。帰るけど、メールならしてもいい?」

「もちろん。ケータイでもいいよ?」

「……ううん。メールがいい。」

「何時でも飛ばしてよ。ほんと、夜中でも早朝でも。もし寝ててもあとで見れるし。」

「うん。じゃぁね。」


みーさーとー!はぁぁぁん……


「帰れお前ら。うぜぇ。」



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