第6話 話し合いと顛末


「桐野?お前ビビっちまって何にも出来ねーのかよ?情っさけないなー。タマ付いてんの?ギャハハハ‼」


「こいつ人間サンドバッグだな?

ガンガンやろーぜ? 潰して、俺たち葵ちゃんとも………な?くくくくく‼」


「おい 立てよタマ無し‼ まだまだ踊ってくんねーと、俺らの気が済まねーんだよ‼ さぁ立て‼」


「お前を病院送りにしてやってる間に、葵ちゃんを美味しくいただくからな? もうプランは出来てるんだぜ? クルマで拉致って、ヤクザやってる先輩ん家でシャブ打ってみんなで乱交すんだよ?くくくくく。

あの可愛い顔に俺らの白ーいミルクをたっぷりかけて、ついでにちっちゃな可愛いお口に俺らのでっかいのネジこんでやるぜ。ジュポジュポシャブらせながらシャブ打って、みんなでマワしてあの可愛いお腹がパンパンになるまで中出ししてやんだ。気持ちよさそうな身体しやがってよ?俺らを振るから悪いんだよ?あのバカ女。あーあ。こんな弱い彼氏くんに惚れてるから助からないんだよね。可哀想に。」


「おいおい泣いてんのかー?あ?立てよコラ?立ってパス受けてくんなきゃ、ぶち回せないだろ?早く入院してくれよ?そーとくん?ギャハハハ‼」


「よし蒼音。 そろそろOKだ。」

「…了解。」


「てめぇ?何が了解だコラ………あ………あ……あや………や……やめて………」


「あ?黒森?なんだよお前いきなり……」


「た…ちばな……手……手……。」


「あん?お前の手?……おっ 音が…うわっ‼ 桐野?! はっ 離してっ…離してやれ‼おい‼ おい?! 」


「がぁぁぁぁあああああああああ!!!」


「ふぅ…。あーあ。蒼音を本気で怒らすからそうなるんだよ。

そいつの手。たぶんぐちゃぐちゃに砕けてるよ?後遺症残るレベルに粉々だね。

蒼音は世界的に巧いギタリストだからね。左手の握力は80キロオーバーなんだ。知ってた?ハードロックのギタリストってめちゃくちゃ握力強いんだよ? そして、握力はパンチ力に比例するんだ。だから、蒼音のパンチは一撃でね?容易く骨すら砕くことも出来る。試してみなよ?」


「はっ?!! やっ…やってやるよクソメガネ!」


「──!!」


「ゴフッッ!!」


「あーあ言わんこっちゃない…。

たぶんアバラ何本か持ってったよ?

あぁ…君。動かないほうがいい。

動くと肺か心臓を傷つけると思うよ?ほら?胸のとこが不自然に盛り上がってるの判る?それ。折れた君のアバラさ。たぶん動くと大出血だね。まぁ。自業自得でしょ?大丈夫。あとのことはちゃーんと僕が全部上手くやっとくからさ。心配しないでよ。

そこに突っ立ってる二人?サッカー部員でしょ?君たちのしたこともぜーんぶ撮っちゃったからね?音声入りだよ?逃げようがないね?ごめんね?楽しいかい?ごめんよ?

でも、そうさ。君たちが悪いのさ。

僕の相棒の蒼音をこんなにして、僕の大切な大切な大切な姫様を拉致して輪姦しようだなんて思うからだよ?

シャブ打って?ヤクザの先輩たちと協力して?あははは。

まさか実名あげてここまで綺麗にバカみたいに踊ってくれるとは思ってなかったよ?さすがの僕でもさ?本当にバカなんだね?君たち。

もうぜーんぶ終わりだね?君たちも、君たちの家族も、その先輩たちも、みぃぃんな人生狂わしちゃったね?君たちが!君たちが!君たちがね?!

あはははははははは。お腹いたいや。あははははははははは。

じゃぁそろそろ迎えが来る頃だから。

さっき動画はぜーんぶ警察の緊急サイトと、学校のパソコンと、新聞社に飛ばしちゃった!!あはははははははは‼自殺するなら止めないよ?飛び降りるなら僕の目の前にしてよね?せいぜい自分たちのバカさを親御さんたちに懺悔するんだね?あはははははははは‼どうしたの?ビビっちまって何にも出来ねーの?タマ付いてないの?ぜんぶ君が蒼音に言ったセリフだよね?何を泣いてんの?えっ?オシッコ漏らしちゃってるじゃん!!そんなに僕が恐いの?だって君が悪いんだよね?僕と蒼音を本気で怒らすから悪いのさ。あははははははははあははははははははお腹いたい。楽しいかい?僕は楽しいよ?あはははははははは‼ははははははははははははは!!!」



****************




「蒼音!大丈夫?」


みいが駆け寄る。

後ろから体育教官と教頭と校長が続いて来た。

保険医が担架を持って走ってくる。


「大丈夫だよ。たぶんあいつらのほうが酷いことになってると思うぜ?精神的にも。」


親指で橘たちを指す。


橘と黒森は痛みで転げ回ってる。

あとの二人は立ったまま失禁してガタガタ震えている。


「…あなたたち。いったい何したの……?! 」


俺はハカセと二人で肩をすくめて


「話し合いさ。」


と言って笑った。



****************



結局。


ハカセは高校のホムペに動画データ は飛ばしたけど、警察や新聞社には送ってなかった。

あの狂人じみた言動は、全て彼の悪趣味な、タチの悪いジョークだった。


ハカセは、俺のしたことが、正当防衛とするには行き過ぎな点を危惧していて、その行為を不問とさせるために、校長とある取引をした。


もしも、俺に何らかの処分があるなら、あの動画を教育委員会と新聞社と警察に見せると。


そしてあの二人。

俺が右手を握り潰した黒森と、肋骨を3本折ってやった橘は停学処分。

佐藤と飯山は2週間の謹慎処分。


未遂だったが、計画に関与すると思われる者たちも、橘たちは少しの尋問だけで、泣きながら芋ヅル式に素直にゲロって全員名前が割れて、2年のサッカー部員3人と、3年の5人が同じく謹慎処分。


ハカセ曰く。退学に追い込むのは簡単なことだが、

もしも退学にしたなら、学校というタガが外れた上で、報復を狙って更に酷い再犯に及ぶ可能性が強いから。ということ。

逆に、退学にも出来たのに、お前らをかばってやったんだぜ?的な恩を与えとけば、人間心理的にこの先、再犯に及ぶ可能性は無くなるだろうということだ。


ついでにゲロったシャブを捌いてたサッカー部OBのヤクザくんたちも、まとめてお縄になったオマケ付きだった。

ゲロった4人たちはこれから大変な人生が待ってるだろう。彼らの報復を震えながら一生暮らさなければいけない。

にしても、本当にバカ過ぎる奴らだったな。


そしてみい。


彼女が早々と校長と教頭に、それらの話を通してくれていたので、色々とスムーズに話が進んだ。

驚くことに、彼女はハカセが考えていたシナリオとまるっきり同じ事を言って、校長に取引を持ちかけてグラウンドまで引っ張り出していた。

それにはハカセも舌を巻いていた。


保険医も彼女の言う通り2名、救急車を要請してから、グラウンドに俺を連れに来た。俺は保険医のクルマで、ちょっと遠くの医師会病院に連れて行かれた。


そして、今に至る。



か 身体中が痛い……。


あいつら本気で殺すつもりだっただろ?! くそったれが。


ここは外科。

レントゲンと、頭を酷く殴られていたので一応MRI検査をした。

骨には異常無し。外傷は色々あるけれど、救急的なのは無し。

あるのは、蹴られ殴られ過ぎによる打撲。

特に背中は内出血が酷く、肩甲骨付近が真っ黒になってパンパンに腫れてるそうな。


とりあえず、頭をやられたのと、背中の腫れが退くまで要観察ということで、入院になってしまった。


母ちゃんしんどいだろうなぁ…。

早く手伝いに行きたい。

抜け出すか?!


なんてことを思ってたらノックの音が。


「そーと?大丈夫?」


あおいと万由ちゃんがやって来た。


「まぁな。うつ伏せにしかなれねーけど。」

「凄いやられてたね?そーとなら瞬殺だと思ってたのになかなかやらないから、心配したよ?」

「待って葵? 蒼音くんって瞬殺出来るくらい強いの?」

「うーん。瞬殺は言い過ぎだね。5秒……くらいかな?」

「たぶんそれ充分瞬殺カテゴリーに入ってるよ? 」

「そうなんだ?橘って子は一発で肋骨折ったし、黒森って子は右手握り潰すのに5秒はかかったでしょ?」

「なんせ鬼強いんだね?分かったよ。」

「それよか、ハカセくんよ。

うちのクラスの男子たちが、ハカセくんのことを恐がるの。ハカセくんが動く度に、周囲がサザッと動くの。すごくない?誰に聞いても何故だか誰も教えてくれなくて…。ハカセくん、何かしたの?」

「あいつは何もしてないよ? ただ、あいつなりにジョークたっぷりに話をしただけさ。気にしないでいいよ。」

「そうなの?よく分かんないけど、触れないでおくよ。」

「そうだね。その方が万由ちゃんの為だ。」

「そーと?とりあえずはゆっくり休んでてね。あたしと空ちゃんがかわりばんこでお店に出るから。カボワボ+の方は問題ないってシンディさんが言ってる。だからゆっくり休んで。」

「私もカボワボ+手伝うことにしたから。葵のオーディションも合格だって。あの制服着たかったんだ~。」

「じゃぁ。大人しくしてるのよ?また終わったらのぞきに来るから。」

「はいはい。いってらー。」


そだな。疲れたし、ちょっと寝よう。


そして、俺は夢路を辿った。



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