第4話 All I wanted was you.
「早速開けてっ。すぐ開けてっ。やれ開けてっ。」
昼メシ。
ダッシュでやって来た万由ちゃんが俺を急かす。
まぁ俺としても早めに食ってしまって行きたいとこがあるし。
そう。あの木陰。みいに呼ばれてるから。
一方的な約束ではあったけど、すっぽかして哀しませたくない。
哀しむかな? 大したことじゃないとは思うけど、なんか悪い気がするから行ってみようと思ってる。
弁当を早めに……って
「これすごいな? 朝メシに輪をかけて豪華だよね?」
「でしょ? 自信作ー! 召し上がれっ‼」
いちにーさんしーごーろくしち…8品?!
「手間かかっただろ?すごいよ。ほんと。………うん。おいひい。」
「うんうん。愛情たっぷりだからね。絹さやと卵の炒りびたしなんて絶妙でしょ?」
「……うん。ほんと美味しい!やっぱ女の子だな。俺じゃぁこんなに美味くは出来ないよ。万由ちゃんすごいね。」
「あー。その言葉だけでもぅ今日はすべてが報われたわ。あとはのんびり余生を送るよ。じゃぁ私は葵と一緒にお昼するから行くね‼」
「さんきゅ。万由ちゃん。」
めげない子だな。ほんと可愛い。
あおいもいい子と友達になれた。
さて、残りをかっこんで………行くか。げふ。
でも、別に急ぐこともないな… …そうだ。
なんか飲み物買っていってやろう。
****************
結局
着いたのは昼も半分くらい過ぎた頃だった。
今日もいい天気だから、たくさんの人が中庭に出てる。
時々手をあげられるんだけど、誰だか分からない。
たまに女の子の一団に指差されたりするんだけど、誰だか分からない。
目立たないよう、目にとまらないよう、速やかに移動する。
木陰は…あそこだったな。
見えた。みいの足。
「…みい?」
読んでみるが返事なし。
まぁ確かにみいだろうし、近くに寄って
「みい。来たぜ?」
応答なし。あれ? 寝てる?
ゆっくりとやまももの木の裏へ。
途中でみいが気づく。
「蒼音くん!……良かった…。」
顔が紅い。本当に嬉しそうに笑うんだな。
なんか、生徒会長的なオーラがまったく感じられない。このほうがぜんぜん可愛いけど。
嬉しそうにじーっと顔を見られてる。
捨て犬が拾われたみたいな感じ?
このひと本当に可愛いぞ?
なんだ?
昨日の綺麗系完璧女子な体はどこ行ったよ?
「…約束だったよな? 来るよ。」
「………ありがと。来てくれないと思った。」
とりあえず、昨日みたいにみいの隣に座って、やまももに背中を預けて足を投げ出す。
みいはじっと俺を見てる。
「……そんなにじっと見るなよ?なんだか恥ずかしいよ。」
みいはくすくす笑い出す。
「…君が気になるんだもの。みんなそうでしょ? 慣れてるんじゃないの?人気…あるでしょ?」
「…そんなの慣れねーよ。普通に恥ずかしいよ。慣れたくもない。」
「そうなの?人気あるのって、普通嬉しいでしょ?みんなにちやほやされたり、女の子たちに騒がれたり…。カッコいいって言われるのって、嬉しくない?」
「……別に嬉しくはないな。ちゃんと俺のこと見てるひとから言われたら素直にすげぇ嬉しいよ? でも、今日昨日逢ったばかりのまったく知らないひとに、カッコいいねって言われたって、えっ?としか思えないよ。そんなひとからちやほやされたくはないし、女の子たちに騒がれても、退いてしまうよね。
俺はたった一人にちやほやされれば満足だよ?たくさんはいらない。俺の手はまだこんなに小さいんだ。」
じっと俺を見ていたみいがゆっくりとため息を吐く。
「………君はほんと、違うのね。価値がちゃんと見えてる。……そうね。私、君をもっと、ちゃんと知りたい。……もっと早く君に出逢いたかった……。」
みいは少しだけ哀しそうな顔をした。
でも、すぐに笑って、
「これから時間が許す限り、君に逢いたいです。残された時間を君と一緒に居たいです。どうか、私と友達になってください。お願いします。」
と言った。
友達…?
つき合ってくれとかよく言われて断ってたけど
友達かぁ……。友達だよな……。
「……友達だよな?普通に?」
「そうね。友達。普段君と一緒に居る子たちと変わらない。友達です。」
笑顔に曇りはない。
本当にそう思ってるみたいだな。
ちょっとだけ息を呑んだけれど、じっと俺を見てる。
「…OK。俺なんかで良ければ。」
と、彼女に手を出す。
彼女はほぅっと息を吐いて、
「君がいいの。ありがとう。」
と、俺の手を両手でしっかりと胸に抱いた。
綺麗な茶色の瞳にうっすら涙が滲んでいた。
****************
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