第9話 朝目覚めた時、いつもそばに居てくれる?



「ただいま。よいしょっと。あー重かったぁ。ん…?」


あーあー脱ぎ散らかしちゃって……


玄関からお風呂まで制服が点々と続いてる。

…どんな状態か一目でわかるわね。

可哀想に。

まぁ今日は土曜だし

店も昼からだろうし、ゆっくり寝かせてあげよ。



……あれからもうすぐ一ヶ月。


そーとは毎日

お店と学校とアパートの3ヶ所を行ったり来たりだけしかしてない。


あたしと空ちゃんは

シンディさんのあの…自称世界一のライヴカフェのウェイトレスとして、学校とお店と家を行ったり来たり。

空ちゃんは、お父さんが雇ってくれてる凄腕ハウスキーパーのおかげで、一切マンションの衣食住にはノータッチでいいから、快適そうにしてる。


そーとのアパートは、駅から徒歩10分ほど、学校までは徒歩15分ほどの、けっこう立地条件の良い新築アパートで、2LDKバストイレキッチン別、バルコニー付の優良物件だった。

寝室は8畳、リビングダイニングキッチンは20畳、和室は6畳、南向きバルコニーと、素晴らしい物件で、これで家賃は4万と、破格の値段。

どうも、神野さんのコネらしい。


さてと…朝ごはんね…。


材料を買う暇ないだろうから、一応、昨日シンディさんのとこからの帰りに買い物はしといた。


空ちゃんは昨日、夜のうちに、洗濯物を片付けたりしてくれるって言ってた。どうせ夜はそーとが帰るのも遅いしね。


お店が20時くらいにお客さん退けても、それから全部の鉄板磨いたり、洗い物したり、仕込みやらで、上手にやっても23時は超えてしまう。


お客さんも、早々20時までに退けるかも分からないから、完全に退けるのを待ってしてたらもっと遅くなる。


今までは、あたしがヘルプしたり、おばちゃんがやったりしてたけど、あたしもシンディさんのお店に20時まで居るし、おばちゃんも日中間すべて一人きりだし、夜は経理と忙しくてとてもじゃないけど大変だから、今は片付けも仕込みも全部進んで毎日そーとがやってる。


しんどいだろうな……。可哀想に。


とりあえずあたしが出来ることで、少しでも助けてあげなくちゃ。


お味噌汁の出汁を取って、その間に簡単な品をちょこちょこっと…

そーとの大好きなあたしの出汁巻きも作ってあげよ。ふふ。


そーとが隣に居る頃は、当たり前みたいにやってたことだけど、こうして離れてアパートで一人暮らししてるとこに、勝手に押しかけて朝ごはん作ったりなんかして…


なんだかすごーく新鮮。嬉しくて楽しくてドキドキする。

結婚して一緒に暮らしたら毎日こうなのかな?


くー。ふふふふふ。


そしてあたしは裸にエプロンなんかで…大好きな旦那様が後ろから…


きゃぁぁあ。ふふふふふ。


あーダメだ。ドキドキしてきた。


……脱いじゃおっかな?

裸で…いやいや。ぱんつくらいは履いといた方が良いかも…。

こないだはまだ胸しか触って貰ってないからな………んんー!


ダメっ。か 身体が熱くなってきた。お腹がジンジンする。


あの時気持ち良かったもんな………。


ふー ふー ふー ふー。

が 我慢しなきゃ。そーとは疲れて寝てるんだ。

我慢… 我慢よ。葵。


お味噌汁っ。卵焼きっ。塩鮭っ。きんぴらっ。白和えっ

がんばるのよ葵。




………とりあえず、ごはん出来てから

裸になろう。



****************



おかずは出来た。

あとはごはんとお味噌汁をよそうだけ。


一応、念のため、エプロンの下にぱんつは履いといた。


もう9時だし

さぁそろそろ起こそうかな。


こっそりとドアを開けて寝室に入る。


遮光カーテンで完全に日の光はなく真っ暗だ。

うっすらとベッドに布団をかぶった固まりが見える。


ふふ。可愛いそーと。


布団を捲った瞬間に抱きしめられたらどうしよう?

そのままキスされて…胸を揉まれて…その指が、下まで……

きゃぁぁ。は 鼻血が。


大丈夫。

このための裸エプロンだもの。

いつでもすぐに入って来てもらえれば……


う。ぱ ぱんつが濡れて来た気がする……。

頑張れ 葵。


ちょっとジンジンするので内股気味にベッドに近づくと、そーとの寝息が。


熟睡してる…可愛い…。


ちょっとだけ頭を撫でてみると、レイヤードシャギーの入ったそーとのサラサラの髪が、額に落ちて甘いにおいが漂う。


そーとのにおいだ。

とたんに下腹がキュンキュンする。


し 子宮が……苦しい。

あたし、こんなにえっちだったっけ?

こんなにおいだけで…。


もう一度髪を撫でる。


髪が伸びたね。もう目が完全に隠れちゃって鼻の頭に届いてる。

やっぱりかっこいいなぁ…。


3年生女子の間で恒例になってるルーキー人気投票で、他を圧倒的に引き離してダントツ1位だったって、コージ先輩が言ってた。


そりゃぁこんなにカッコいいんだもん。

ちっちゃい時から人一倍努力して、誰よりも頑張って、誰よりも強くて、あたしや家族みんなを守ってくれて来たんだよ?

普通の男の子が敵うわけないじゃない。

気負いが全然違うもん。


そーと…。愛してるよ。


も もう我慢出来ないっ

起こしちゃう。


頭を撫でながら布団をちょっとだけ捲る。


「そーと。朝だよ。」

「………うん…。」


返事しやがった。可愛いいい。


「起きて? ごはん出来たよ?」


あたしも食べれるし。


「………う……ん…。……あおい?」


た たまんない。 食べたい。今すぐに。


「そうだよ? もうすぐに食べれるようにしてるから、起きて?」

「……さんきゅ。………うん。起きる。」


上半身を起こして、猫のように伸び。

ドキドキ。あたしの格好。わかるかな?


ドキドキしながらそーとの左側に座って、手を取って私の胸に当てる。


「……そーと?わかる?

ドキドキしてるの…。」

「………わっ‼ お前なんて格好してんだよ?! 」

「ふふっ。サービスサービス。裸エプロン。…ぱんつ履いてるけど。」

「いやいやいや‼ 朝っぱらから何がサービスだよ?! 」

「疲れてるかなーって。元気出してもらおうかなーっと。」


胸に当ててるそーとの手を、エプロンの横から差し込む。


「ほら?………裸でしょ?」

「いやいやおかしいだろ?! 発情期かお前ら?! ……うわっ‼生ちち‼」

「……んっ。好きにしてくれていいよ?………久しぶり…そーとの手……気持ちいい。」


そーとは焦ってるけど、そーとが身動きする度に、手が乳首に当たって電気が走る。


「……ん……は……ぁ…」


気持ちいい。もうぱんつもびっしょりだな。


「…お前ら揃って何してんだよ?仕事は?今日も行くんじゃねーのか?」


あん。もぅ。気持ちいいのにー。


「…行くよ? あたしも空ちゃんもお昼からね………ん?……お前…ら?」


よく考えたらなんか引っ掛かる言い方してるな。


「…お前らだよ? あおいもソフィも揃って発情期なのか?…5月ってそう言えば猫も発情期?」

「いや。あたしはその……そーとのこと考えながらごはん作ってたら、なんだかムラムラ来ちゃって……。……なんで空ちゃんも??」


そーとは大きなため息ひとつ。


「………ソフィもだよ。ほら。これ。」


そう言ってそーとが布団を全開にすると……………………


……………素っ裸の空ちゃんが幸せそうに寝ていた………。



****************



「葵?痛い‼ 痛いってば‼ もぅ‼ 分かった! ごめんなさいってばー!」


あれから、幸せそうにそーとの傍らで丸まる空ちゃんを蹴落とし、服を着せて、リビングに移動してから、ごはんの支度をし、いただきますをしてからもずーっと、空ちゃんの背中をつねったまんまでごはんを食べてる。

何がごめんなさいだ。 ふんっ。


「そろそろ肉が千切れる前に、離してやったほうが……」

「そーとは黙ってなさい‼」

「…はい。すみません。」

「…離してあげるから空ちゃんもごはん食べなさい。」

「はぁぁ…痛かったー‼」


ふん。


「…いったいいつから寝てたの?」

「…昨日帰ってからだな…。風呂上がってベッドに入ったら…居た。素っ裸で…。」


むかっ


「洗濯物片付けてくれるとか言ってたんじゃないの?! 」

「……いやぁ。そーとの洗濯物触ってたらつい……ムラムラと。てへ。」

「てへっじゃない‼ 信用したのに……。」

「いやお前もさっきメシ作ってたらムラムラ来たとか…」

「そーとは黙ってなさい‼」

「……はい。すみません。」

「そーだよー。葵だって裸にエプロンなんてしてたじゃん!ファンクラブが怒るよー?」

「そーとは良いんですー。ふんっ。」

「ずるいー。葵ずるいー。」

「空ちゃん裸で朝まで抱かれて寝てたでしょ?! あたしなんか胸に触っただけよ?! ……そーと?なんもしてないよね?空ちゃんとえっちとかしてないよね?! 」

「してねーよ!寝かせろよ‼ どんだけ疲れてると思ってんだ‼ ったくお前ら……。」


そうだよね。ヘトヘトだもんねそーと。


「……ごめん。空ちゃんも、ごめんなさいは?」

「…ごめんなさいブルーノート…。」

「…分かればいーよ。それに、久しぶりにお前らにゆっくり逢えて嬉しかったよ。あったかい布団久しぶりだったし、こんな朝メシも久しぶりだ。ありがとうな。」


やっぱりそーとは優しい。

あたしたちをちゃんと解ってる。


「うん。……でも空ちゃん?今度は私の番だからね?添い寝は私がするからあなたは朝ごはんよ?」

「えーっずっこーい‼私が添い寝でついでに赤ちゃん生むの。」

「あたしが先よ‼ダメ。」

「懲りてねーな?! せめて元気ある時にしてね?! 」


ふふ。

こんな生活もアリだ。


いつまでも仲良く一緒に騒げたらいいな。


あーあ。今日はほんといい天気。



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