第82話 1987年 小説「ノルウェイの森/村上春樹」 私小説を読めなくなった私達は
まずはカクヨムのここ最近からお話ししましょう。何かにつけレビューで納得いかないのイザコザが目に見えていたのですよ。私はレビューを滅多に書かないのですが、書いた達成感は下手したら自作品より深淵見えたりの快感があるやもしれません。
普通ならば何ら問題発生する訳もないのですが、その作品群の中には、私を色濃く投影した私小説がままあるのです。ネットのお陰でゼロベースから書ける様になった異世界等々の作品が多くを占めており、所詮はフィクションだからと批判も大人ならば受け流せます。ただ私小説相当につまらんと来た日には、まあ人生否定ですよね。それは荒れて当然でしょう。私もややそうでした。
そんな中でカクヨム通達にレビューポリシー改正の案内です。
・おすすめレビューの趣旨と、不適切な投稿への対応見直しについて - カクヨムからのお知らせ https://kakuyomu.jp/info/entry/review_rule_update_202109
抜粋すると。
>一方で少数ではありますが、おすすめ・応援するという意図に反した作品や作者への不適切な意見を投稿して、他の利用者を不快にさせているケースも見られます。
まるで運営の中の方が変わった印象ですけど、私小説の時代を生きてこられた方なら、その気持ち大いに察してくれた事でしょう。
そして、私小説時代最後の頃の村上春樹の「ノルウェイの森」です。
小説:ノルウェイの森(上・下巻)
著者:村上春樹
発行日:1987年9月4日
発行元:講談社
当時はインターネットも無く、資料も2・3行書いてる書籍を高く積んでは小説を書けた時代です。そのベースになるのは多かれ少なかれの筆者の体験した事になるので、平成頭迄の小説の傾向は私小説テイストになります。人間は真心に打たれる、あの当時小説を読むという事そういう側面も有ります。
「ノルウェイの森」の連載は、ベースになった短編はあるものの、即ハードカバーになって村上春樹ファンを超えて泣ける小説として部数を駆け上がったと思います。
風の三部作を読んで村上春樹ファンの私は、高校生の時に一気に読んではただ号泣しました。性描写はあるものの二次的なもので、これは読むべきと図書委員にリクエストしては学校の図書室に入れました。そこに至る経緯を知る文芸派の一部女子からは、好意的な目が向けられたのは、まあ数少ない嬉しい経験です。
ただ「ノルウェイの森」は売れ過ぎて、皆に読まれ過ぎて、そうこれはさも村上春樹の自伝的な雰囲気に長らく包まれていました。作品としては成功かもしれませんけど、村上春樹の心情をただ察するとそうでは無いが、後に悟ります。
それは「ノルウェイの森」が2010年にトラン・アン・ユン監督により映画化されたのです。書籍化から実に33年で、村上春樹ファンでなくてもまさかになったものです。そう、私小説から漸く一物語に分離するのにこの歳月がどうしても必要だったのです。
頻繁に読み返す方以外、ああこのシーンはにそうなのかになった事でしょう。映画「ノルウェイの森」60年代末期の何処か突き刺す映像に満ちていて、読者の心象風景とは異なったものでした。そこで映画評も割れました。会社のネットコミュニケーション板には何か納得出来ないの声も見かけて、ああそこはと今でこその私も上手く浮かばずコメントを打つ手を止めました。
でも今の2021年ならば、多少は語れます。私小説が肉体を綺麗に分かれて物語になるのは、実は半世紀程必要かと。そんな事をしたら文芸が崩壊するでしょうが、そんな事は無くて私小説を楽しめる読者層が回帰すれば良い事なのです。
そこから。カクヨムの私小説つまらん問題は実に深刻で、ゼロベース創作の多いネット小説の楽しみ方に、私小説を読む際の嗜み方がある程度指南がされれば、出版不況はやや解消されるのではと思ってやまない今日です。
とにかく、明らかに私小説であろうの作品に、無責任につまらん・面白いの二元論で接するのは人生3割損するかと思いますので、幾分の配慮を願います。
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