第72話 1984ー1986年 映画 -民川裕司3部作-「すかんぴんウォーク」「ユー・ガッタ・チャンス」「テイク・イット・イージー」

まあ本当長かったですね。何をは2020年に日本映画専門チャンネルで企画された3ヶ月連続放送の吉川晃司=民川裕司3部作「すかんぴんウォーク」「ユー・ガッタ・チャンス」「テイク・イット・イージー」です。


DVDも盤面化していないので(注.1)、それはもう21世紀頭位から日本映画専門チャンネルに24時間吉川晃司放送してくれと、折々にリクエストしていました。

それが何故ここ最近には、フジテレビで放送された吉川晃司主演「探偵・由利麟太郎」のタイアップ故かと思います。「探偵・由利麟太郎」は日本映画専門チャンネルでも一挙放送してましたから、どうにかシリーズ可したいだろうの後押しかと思います。


さて、満を持しての「すかんぴんウォーク」「ユー・ガッタ・チャンス」「テイク・イット・イージー」になりますが、当時見た印象と良い意味でまるで違います。全作の監督大森一樹と脚本丸山昇一の懐はそうであろうなが垣間見えます。




そして各作品に。


□すかんぴんウォーク(1984年、東宝)

吉川晃司デビュー映画にして、何故モニカでそこ迄成功したかは、同時上映が押井守監督の「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」であったからです。うる星やつらは強烈なリピーターがいましたし、二本立て故にどうしても覚えてしまったのが絶妙な戦略です。


物語は中国(広島)から泳いできた民川裕司が、一文無しからスターとして成功を手にしていくサクセスストーリーです。


当時作品の印象は、何故登場人物がここ迄落ちて行くので何だこれでしたけど、改めて見る限りでは1984年当時はそれでも社会の一人間として許容出来る時代だったのですよね。自由に生きても、どうにか食べれる世界はある意味で優しいです。


映像的には大森監督の「オレンジロード急行」と「ヒポクラテスたち」のテイストが抜群に「パンツの穴」的な作品を標榜したらこうなるかなです。今の吉川晃司からすると、どん引き方もいなくは無い筈です。でもうる星やつらフォロワーにしてみれば、これこそが吉川晃司でもあるので、もっと多様な評価を受けても良いと思います。



□ユー・ガッタ・チャンス(1985年、東宝)

当時は映画館で見ておらず、時代を右肩上がりに上がって行くレンタルビデオで見ました。当時レンタルビデオ店と言えば、それはもう田舎でも内装を極めておりサロンかの盛り方です。

何故映画館で見なかったは、同時上映が少女隊主演の「クララ白書 少女TYPHOON」だった様でなるほどです。当時のベストテンに出ないアイドルはアイドルに非ずの風潮は、そこにお金は落とせ無い雰囲気でも有りました。


当時の印象としては、何かこう吉川晃司のフィジカルスキルだけに目に行き、浅野ゆう子のもう二回(モニカ)が印象に残るばかりで、まあありがちな映画かなと。


そして今回見た映像は、あれ何で「すかんぴんウォーク」で見たキャストが別役で再登板してるのです。これも昭和当時ではまま有ることです。1クールに出ていた役者さんが2クールに別役で出ていて、今の時代に見るとうううん?になりますが、職業プロ俳優は極めて少なく本当に選ばれた存在であった事を伝えておきます。


その物語は、曲がり角はあったもののスター街道を走る民川裕司が伸び悩みを見せ、自ら追い込んでは成長して行くストーリーです。三部作の中でも派手なアクションと仕組みを見せますが、そこはかとなく見せる欝屈した雰囲気を醸し出してるのは、当時の吉川晃司の等身大を反映されていたかもしれません。この時期辺りに発売されたアルバム「LA VIE EN ROSE」の楽曲は今でも名曲でライブで歌われますからね。


特筆すべきは、民川裕司3部作全てに見られるヘリコプターから空撮を多用してこそのラストシーン。ツアーバスとバイクでツーリングしながら高速を走る民川裕司が「ユー・ガッタ・チャンス」の曲に乗せて長回しでエンドタイトルに被ります。この吹っ切れた感じは、脚本のみやりとりでは作れない爽快感を醸し出しています。映画には台詞で作れない詩情も有るという事です。



□テイク・イット・イージー(1986年、東宝)

これです。この作品「テイク・イット・イージー」を見たいが為に日本映画専門チャンネルにリクエストしていました。


当時はこれもレンタルビデオ鑑賞だけで、映画館には見に行ってなかったですね。何故行かなかったは同時上映が「タッチ 背番号のないエース」らしく、そうですよね…あだち充は好きでもそこまでタッチにのめり込んでなかったので、遠のいたのかもと。


何故「テイク・イット・イージー」が好きかは、TO-Yが出ていないけど「TO-Y」映像化作品としても最高過ぎるからです。21世紀から「TO-Y」ファンになった方も是非見て欲しい作品です。ニヤ近似値つみきみほ見るだけでも実に微笑ましいです。


物語としては、海外進出が頓挫して空いたスケジュールを、サイドカーで北の旅に当てた民川裕司の活劇譚です。そこで地元の名士と、名取裕子演ずる天才ピアニスト麻弓(まきゅう)の未来を巡って一悶着あるのが、ここに来て漸く日活映画が存分に出たかの張りです。


北の地は明文化されていないものの、函館が眩しい時代のあの頃です。北海道の大らかさと文化港と絶品の味処が満載した函館を観れるのは懐かしさしか有りません。いつかまた行きたいなと思いつつ、21世紀でやや聞こえて来たのは、あの函館でも寂れるでした。そんな事があるのかと今でも懐疑的ですけど、それでも愛すべき函館には変わりないので、いつかはどうしても行きたいなと。


見所は、野山を駆け巡る吉川晃司、いやこれ以上無い中性的なつみきみほの友達感、サイドカーアクションでも無く、天才ピアニスト麻弓のユニットのアバンギャルドなフュージョンのライブシーンです。


「テイク・イット・イージー」のサウンドトラックは後藤次利名義で「BOY'S NIGHT OUT Soundtrack from TAKE IT EASY」として世に出ました。この1986年辺りはソロアルバム「CITY TRICKLES ―街の雫―」と言う最高のソロ作を送り出した後で、これでもかのベースラインを繰り出しています。サウンドトラックは再発の予定は無いと思われるので、この近辺の吉川晃司のアルバム「MODERN TIME」で後藤次利 のベースのバキバキ感を感じて貰えればと思います。


あとは名取裕子が艶やかですね。「すかんぴんウォーク」「ユー・ガッタ・チャンス」も間接的なエロスはあるのですが、「テイク・イット・イージー」ではキスシーン位です。直接的なエロスが無くても佇まいだけで、麻弓に惹かれざる得ないは名取裕子の懐の深さでしょうね。


また、ラストからエンドロールに掛けてのニューヨークのシーンも印象的で、あの犯罪都市ニューヨークが如実に映し出されてます。昔のニューヨーク知ってますか、うっかり裏道に入ったら死ぬ原則の街なのですよ。それでも世界で一番刺激的な街で、この歪な華やかさはもうこの地球上の何処にも無いかと思うと記録的映像でもあるのですよね。



と民川裕司3部作の個人所感を上げてみました。

この3年という短期間で、スターダムを瞬く間に駆け上がる吉川晃司と何者かですよね。これは完成された映画であり、記録映画であり、新人作品のカタログ的映画で有り、映像を勉強されたい方にも優しい筈ですので、いつかまた日本映画専門チャンネルで放送される機会があったら是非ご覧ください。







DVDも盤面化していないので(注.1)

いやwiki見たらファンクラブ限定で3部作は特別受注生産販売されていたらしいです。でも作風故に、これは製品化ダメの方がいるのは欠番作品にはままあることです。



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