第2話 1998年 映画「F」

□F:公開1998年3月14日

□製作会社:松竹・衛星劇場

□原作:F 落第生/鷺沢萠

□監督:金子修介

□脚本:松尾奈津/金子修介

□撮影:佐々木原保志

□照明:岩崎豊

□主題歌:素顔/渡辺美里

□出演者/羽田美智子/熊川哲也/村上里佳子/戸田菜穂久/野村宏伸


映画「F」。初見は偶然にもTBSの深夜映画でした。

深夜にテクノ楽曲を作る傍らでながらテレビ。あれ、何か見た事ないなと思いつつ、照明が自然な事と、ハウスの選曲良いなとか、脚本巧みだなと、つい最後迄見てしまって、小さいテレビで見ても実に巧みな映画だったなと。


物語は、例の如く端折ります。


照明は、バブル後の仄暗い東京の夜が表現されていて、あの時代を妙に懐かしさを感じられずにいられません。東京から夜が徐々になくなって行くノスタルジー好きですよ。

脚本も、兎に角ラジオの謎のDJ役の熊川哲也が喋り倒す。熊川哲也さん、あなたバレエダンサーですよね?一歩間違えば大事故の台詞の間と流暢さに降参です。

物語はばっさり端折って見所の最後のバレエ公演に驚愕。熊川哲也がバレエダンサーな事は知っていましたが、その跳躍力が凄い。飛ぶ、跳ぶ、いや翔るですね。空中に存在するのですよ熊川哲也。その圧倒さで群舞のムラが目立つ程、素人でも目が肥えてしまいます。

そして、最後のクレジットの曲「素顔/渡辺美里」。持ってかれました。当時渡辺美里から離れていましたが、映画に沿った切なすぎる曲が胸を打ちました。楽曲単体で聞いても名作ですが、映画を見たら尚胸にしみます。



ここから大切な事言います。実はこの映画「F」、DVDの再販されておらず中古が相当な額です。金子修介監督も再販難しいと何処かで見ましたので、列記したのに恐縮です。楽曲の権利問題とか原作者の状況とか推測されますが、考える程に再販はやはり難しいですね。


理由はそれだけかも、思いつくままに列記しておきます。

・原作者鷺沢萠の不慮の事故の版権管理問題。

・ラジオ番組で掛かる音楽の著作権配分問題。

・クライマックスシーンでのバレエ群舞の完成度か。私の素人目でもうーんです。

お願いですから理由が何かでもクリアになって下さい。


自分の場合、2度目のTBSの深夜映画を録画したのですが、ビデオからHDRに移行した際に処分してしまったので、今や記憶が頼りです。まあ、ケーブルテレビとかでひっそりやってくれる事を祈りますよ。


いやここまで引っ張って、映画が見れないなら原作「F 落第生/鷺沢萠」があるではないかですが…昔、気になって原作買って通勤中に読みましたが、読み進めても映画「F」が出て来ない、そうこうと読んでる途中で小説紛失してしまったので、はっきり言えませんが映画と原作は違う様です。ああでも、どこかで読み返さないと駄目ですね。

とは言え、そう、なんせ監督が金子修介です。「デスノート」「クロスファイア」等の様に映画サイズに見事収めてしまう達人です。やはり独立した名作ですよ。



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それから2021年9月24日に原作「F 落第生/鷺沢萠」を読み終えました。引っ越した後の本棚整理と、iPod touchのバッテリー劣化で本を読み返そう月間に突入して漸くです。当時の単行本発行年から軽く16年経ちました。非常に恐縮してしまいます。


それで映画「F」は原作「F 落第生」に収録されていませんでした。いや登場人物被りがあるかも多分無いです。何故に収録されていないのかは、映画化の際に鷺沢萠の原案提供になったか、映画関係者の新創作になったかは。1998年の映画雑誌を開かないと一切わからないのがこの2021年の現状です。


それなら「F 落第生/鷺沢萠」の出来になりますが、各短編の閉じ方にバリエーションが豊富で鷺沢萠の才気が迸っています。私はシナリオ志望なので、これ全部シナリオに起こしたい位です。


特に「最後の一枚」は珠玉ですね。脳内では佐代:松嶋奈々子/クニコ:松坂桃李/藤原:矢本悠馬宮地:中村梅雀/難波:藤竜也で当て振りで良い具合でした。これだったら1時間35分のシナリオ書けるかなとのやる気も出た次第です。その前にもっと麻雀勉強しろですけど。


もっとも、昔の文芸に傾倒していたTBSだったら、深夜のドラマ枠として「F 落第生」を制作していた筈ではも、何か残念ですね。いや今でも出来そうなので、若いディレクターには頑張って欲しい限りです。


そもそも、何故原作「F 落第生」を読み進めなかったのは、まだあの時代はライト文芸の中間線が確立されておらず、どっちなのかで未だやきもきして背景もあります。ただ現代ではライトノベルも有りますし、web小説もスタンダード化してるので、何の違和感も無く読み進めます。あの時の大人達って私含めて何か大人気無いですよね、純粋に作品として楽しめるのに。今更ですけど、文庫本フェアに鷺沢萠作品が差し込まれて新評価されても良いとは、ただ切に願う今日です。




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