激突最終決戦
いよいよルビィと俺の最終決戦だ。
真紅の服を纏い、その神格と魔力が限界を超えて高まり続けている。
「始めましょう。全世界の命運を、ここで決める」
「お前らは下がっててくれ。ここまでよくやった。偉いぞ」
回復魔法をかけ、特殊結界を張っておく。
これで勝負に専念できる。
「心配ないでしょうけど、ちゃんと勝つ……じゃない、ハッピーエンドにするのよ!!」
「こちらは気にしないで。ルビィの相手をしてあげてね」
「師匠の戦い、久々に見せてもらおう」
三人に見送られ、星々を戻して光源を手に入れた世界で対峙する。
「ルビィ、戦ってお前を倒して、それで本当に満足なのか?」
「私が目覚めた時点で結論は出さなくてはいけない。ならばせめて平和を、どちらが犠牲になるとしても、全世界の平和を手に入れる」
「犠牲の上に平和なんて無い。そんなもんを糧にするほど、幸せってのは下衆なもんじゃないぜ」
絶対に認めない。小難しいことを言って、高尚な結末とかほざいてバッドエンドを受け入れる気はない。
俺は勇者。勇者の目指すエンディングはハッピーエンドただひとつ。
「どちらでもいい。勇者の力も、女神の力もわかった。どうなっても、私は私の役目を果たす」
「それが役目か。女神っぽいな」
「……理解できない」
「ちゃんと慈愛の心があるってことさ」
そして魔力が世界を満たす。
お互いのテリトリーを主張し、奪い合うようにぶつかる魔力。
ぶつかり合いの形が成立する程度には強いらしいな。
「私のやっていることが最適解ではないのかもしれない。勇者の救った世界は希望に満ちていた。その日々は煌めいていた。その煌めきが、世界の道標になると証明して」
「任せな」
頭で考えるより先に答えていた。
そして互いの拳がぶつかり、全てが揺れ、割れていく。
やっていることはシンプルだ。誰よりも早く。誰よりも強く殴るだけ。
その力に覚えがある。
「これは……真極拳か」
超精度の勇魔救神拳だ。
まるでリリスのように。だが甘い。
腕力で押し切る。
「強めにいくぞ」
「構わない」
世界そのものにヒビが入り、砕けたそばから再生していく。
何億何兆何京という無人の世界を作り、クッションにして壊れた箇所を超光速自己再生するようにした。
これなら崩壊を気にしなくていい。
もっとも、これ以上ルビィが強くなると保証できんがな。
「リリスにそっくりだな」
勇魔救神拳は技一つ取っても習得は困難を極める。
リリス以外で完璧に使えているものはまだ見ていない。
というよりほぼ本人の拳だ。
「トリックは?」
「ヒントだけならあげる」
神超拳によりさらに破壊力を増す攻撃。
そこでふと引っかかる。
真極拳はさっきのリリスのものだ。
「コピー?」
「流石に勘がいい」
神超拳は俺とリリスが、まだイヴと名乗っていた時の威力だ。
そしてこれまでの敵。コピーという結論を出すには十分だ。
「まだ裏があるな」
「それも見せる。思った以上に力が拮抗しない」
ルビィの右腕が真紅から漆黒へと変貌を遂げる。
その腕は今まで何度も見た。
「ジンの腕?」
「そして真極拳と神超拳」
全部混ぜての一撃。間違いなくこの世界最高峰の一撃だ。
ジンやリリスでもそこそこ傷を負うかもしれない。
小手調べにはちょうどいい。雑に右拳をぶつけてみる。
「おっ、ここまで強くなるか」
痛みも怪我もない。だがほんのちょっぴり振動が伝わる。
面白いな。どういう仕組なんだろうか。
「…………理論上傷すら負わない生物はいないはず」
「勇者だからな」
ルビィの表情が驚き一色になる。
あまり感情を出すタイプじゃないからか、少し新鮮で面白い。
「どうしてそこまで強いの?」
また無表情に戻り、光速を超越した攻防が再開される。
こいつも成長と進化を続けるタイプだな。
「鍛えたから。あとは女神の加護や仲間との冒険かな」
「質問の意図が半分しか伝わっていない。なぜそこまで強くなったの?」
「そうしなきゃ救えない命もあるだろ」
基本はこれただ一つ。誰よりも、どんな存在や災害よりも強く。
そうすりゃ助けられる命はどんどん増える。
「どうしても救えない人もいる」
「だが手を伸ばせば届く命がある」
「…………それでも助けられない命はある。そうして希望を繋ぐこともあるはず」
ここに来て要領を得ない質問になる。
最早独り言に近い。なるほど、そういうことか。
「なんとなくわかったよ」
「何が?」
「お前のことが」
「まだまだこんなものじゃない」
言葉通りにパワーもスピードも上がっていく。
「単純なコピーじゃないな」
「私は歴史と管理の女神。歴史の中に存在する全てのエネルギーと、その力を上乗せできる」
「さっきみたいにか?」
「これは単純なコピーじゃない。魔王ジンがさっき見せた攻撃に、今まで歴史の中で行われたジンの攻撃をプラス。そして本人のデータを歴史から転写して乗せる」
それだけでも相当上位に来る技になるだろう。
莫大な力に耐えきるだけの素質もある。
あるいは身体能力向上すらも歴史が可能にするのか。
「学園での授業を思い出して。魔王ジンとあなたが出会ったのは、本当に偶然?」
「そっからして裏工作があったわけか」
「そう。そしてあなたを女神界から隔離し、それぞれの女神を戦わせ、成長した段階でこの世界へ呼ぶ」
「でもってさっきまで戦わせておいて歴史に刻むと。回りくどいが効率的とも言えるな」
「それほどでもない」
ルビィの戦法が物理から魔力へ変わる。
このうえまだデータを取る気だな。
いいだろう乗ってやる。満足するまで相手をしよう。
「これが地獄の炎。神仏色々、世界も色々。その中でも飛び抜けて熱量のある灼熱地獄」
両手に禍々しさのみで構成された焔が滾っている。
よくまあそんなもん扱えるな。正直感心するよ。
「なら俺も見せてやろう。天国の熱を」
「天国に熱?」
出すのは同じく炎。ただしその性質はどこまでも逆。
「天国は善人の園だ。偉人やら英霊やらもいる。そういう人間から、ごく普通の幸せをまっとうに終えた人間まで多種多様。そんな連中をあまねく照らす。そんな浄化と暖かさをたたえた永遠の熱」
「興味深い」
「だろ?」
お互いの炎をぶつけ合い、世界の温度が上がり続ける。
俺たちが使えば温度に限界などなく、炎はいくらでも増していく。
色も法則に従う必要はない。カラフルに彩っていこう。
「炎のアートだ。絵心はあるかい?」
「名のある存在とその才能を上乗せしている」
「お手並み拝見だな」
炎で龍を作り出すと、ルビィは虎を作る。
赤一色の俺とは違い、黄色と白と黒を使っての本格的なものだ。
「やるね」
「問題は威力」
爆炎が世界を支配した。
赤い龍は咆哮により虎を吹き飛ばし、蒼き龍へと進化する。
「これが火事場の馬鹿力ってな」
「それもまた勇者の根源。興味深い」
「熱くしすぎたな。クールダウンだ」
絶対零度の遙か先へ。一瞬にして炎すべてが氷塊へと姿を変える。
お互いに熱さ寒さなんてどうとでもなる。だからこれは決定打じゃない。
もっとルビィを知るための儀式みたいなもんだ。
「おそらく私では勝てないと思っているはず」
「失礼な話だけどな」
「その認識を変える。これが虚無の力を勇者の因子で撃ち出す奥義」
圧倒的な虚無の力だけが現出する。
それは世界がいくつあっても足りないほど巨大な無への誘い。
だが浄化の力と神聖さで満たされた何か。
相反するものが見事に融合を果たしている。
「これも救済の形らしい。無により痛みも悲しみもなく、完全に消える。二度と苦しむことはない」
「そりゃまた極端なことを」
「この奥義は名前すらも無い。付けた所で、私以外は死んでしまうから。誰もその名を呼べない技」
名無しの究極奥義が渦巻き、一直線に俺へと飛ぶ。
最近じゃ全力覚醒のジン以外では味わっていない威力だ。
「俺も興味が湧いたよ。どうやればここまで強くなる? 誰に教えてもらった?」
「独学とは考えないの?」
「昔探偵もやっててね。お前は駄女神や悪さをする女神が一定以上増えて、異世界がハッピーエンドにならなくなっちまうことを防ぐ目的の女神だ」
少し受けてみて、まだ威力を上げられると確信。成長が早いね。
とりあえず奥義は殴って消す。
ルビィが一瞬固まったので、そのまま推理を続けよう。
「そしてそれができるほどの才能と実力を与えたのは、相当上位の女神だってのが俺の推理さ」
「勇者をやめても探偵で食べていける。サファイアの親を現女神女王神とするかで変わるけれど、最低でも三世代以上前の女王神に生み出された」
「境遇としちゃサファイアと似たようなもんか」
あいつも言い方はアレだが、女王神のスペアというか保険のような意味合いがある。
いつの世も平和とは日頃の保険と対策で成り立っているのかもな。
「ついでに全部話してくれ。お前さんが生まれて、今までどうしていたのか」
「ずっとずっと昔。女神界の歴史でもかなり前になる。まだ駄女神というカテゴリーすら無い時代。もっと全能感で満ちていた女神界で、少数だけど未来を案じ、対策を練り始める女神がいた」
昔を懐かしむような声だ。
何もない世界にテーブルと椅子を錬金。
材料の無なら無限にあるからなここ。適当に紅茶とお菓子も出してみる。
「…………あなたの考えがわからない。私を殺さなきゃいけないはず」
「そんなつもりはないさ。話の続きを頼む」
渋々といった顔で椅子に座ってくれた。
はっきり言って殺すつもりは毛頭ない。
戦闘と、ここまでの会話で確信している。
「……当時の女王神はそれを承諾。悪用されないように、自分とごく少数の女神だけでプロジェクトを開始。私を生み出した」
「いずれ駄女神が増えるか、虚無みたいなどうしようもないほど強いやつが出た場合の対抗策か」
「そう。そのために教育された。極秘プロジェクトだったから、あまり外に出ることはできなかった。でも私には歴史を使う能力があった。どんなデータも手に入る。こんな風に」
テーブルにコーヒーと洋菓子が出る。
俺にはほうじ茶と和菓子だ。
意趣返しのつもりかね。やるじゃないか。
「訓練は辛かった。けれど女神界だけじゃなく、全世界を救う鍵になって欲しいという思いは感じ取っていた。女王神は優しさと慈愛に満ちていた」
「単純な能力もそうだが、そういう心の純粋さとか加味されるよな」
「だから今の女王神はヘスティアではない」
別にヘスティアに資格が無いとは思わん。
今の女王神がちょっとだけ愛という分野で上回っただけだ。
「会える存在が少ない分だけ、女王神の優しさと、世界を憂う心を感じた。だからせめて、あの女神が望んだ世界を作りたい。みんなが笑える、幸せを求めていられる世界の実現を望む」
「駄女神がいなきゃ目覚めることもない個体か。女神ってのは個性的だな」
「本来はもっと早く目覚めて、計画を進める予定だった。眠っている間に、予期せぬイレギュラーが増えたらしい」
「どういうことだ?」
「まず全女神のデータを閲覧し、統計と傾向を調べた。そしてほんの数%だけど、異常なまでに強く、女神の限界を遥かに超えた個体が存在することを知った」
これがクラリスや美由希のような連中らしい。
あいつらは普通に生活していれば他の女神と同じ。
全力出すような戦闘が少ないのも、気づかれにくい理由だ。
「天才ってのはいるもんだしな」
「私も万能の天才として、全才能を持っている。けれどそれとは別種」
ルビィにはかなり予想外のことなんだとか。
「武神クラリスのように軍属女神なら納得もいく。しかし美由希・アリアのように雑誌記者やカレー屋など、職種すらもバラバラで、それでいて正規軍よりもスペックが高い。少し前まで駄女神であったにもかかわらず」
「なるほど。全体を見渡せる能力だからこそ気づいたか」
「それもある。けれど共通点を見つけたのは偶然。これのおかげ」
テーブルに置かれたのは、美由希の勤め先が出している雑誌数冊。
「伝説の勇者と冒険した女神へのインタビュー。あなたと冒険した女神はほぼ例外なく次元の違う強さと能力を得る。ここからあなたの冒険を知った」
「改めて読むと恥ずかしいもんだな」
かなりベタ褒めというか、高潔な人物として心技体の揃った勇者扱いだ。
これは照れる。同時に懐かしい顔が見られて嬉しい。元気にやっているんだな。
「勇者一人によって世界はありえないほど平和になり続けている。あなたのせいで結論が出なくなった」
なるほど。目覚めた時点で世界を変えるつもりが、自分よりも早く似たようなことしているやつがいて、想定外の数字出されているわけか。
「迷いが生まれた。計画は完璧でなくてはならない。だから勇者とその生徒に来てもらった」
「どうだった?」
「その行動は非常に有意義であると認める。だからこそ、お話はおしまい」
立ち上がり、俺から距離をとって構える。
もうちょい聞きたかったが、まあしょうがないか。
「どうしても戦わなきゃダメか?」
「私が眠りにつく直前まで、女王神はありがとうとごめんなさいと言っていた。最後まで優しかった。私はあの方の想いを繋ぐ。大願成就のため。どちらかが死に、どちらかが正しき道を世界に示す。それが恩返し」
「死んじまったら二度と会えないぜ。それは恩知らずっていうんだよ」
「世界を平和にする。それだけが恩を返す手段。だから止まらない。止まっちゃいけない。これだけが私の役目。あの方からもらったもの」
今まで出会った女神の力がルビィに流れ込んでいるのを感じる。
これが女神界そのものの歴史。その全部を上乗せし続けたパワーか。
「体ぶっ壊れるぞ」
「構わない。あなたを殺すことができたなら、私が死んでも計画全てが実行されるようにプログラム済み」
「その周到さを生きることに使って欲しいね」
「その要求は却下する」
正面からフェイント無しで繰り出される攻撃。
打撃も魔法も超能力も錬金術もあるが、全部直線的だ。
俺が小細工無しで受け止めると理解しているのだろう。
「おかしい。確実に魔王ジンの覚醒形態と同じ威力のはず」
「似たようなもんだな」
繰り出される武術と技工の極地みたいな拳を受け止め、同じ力で殴り返す。
そしてルビィが受け止める。攻防の形にはなるくらい強い。
「そこにできる限りの勇魔救神拳と女神界の歴史を乗せている。なのになぜ届かない? なぜ本気にさせることすらできない? 全世界・全存在を足しても、今の私を超えるものも手段もない」
「だろうな。今のお前は覚醒ジンと戦っても五分に近いだろう」
事実俺の攻撃に耐えている。
リリスとの決戦時よりも強めに殴っているし、その鋭さは結構上だ。
なのに殴り返してくるし、避けて反撃もされる。
「どうして? 人間でしかないのに、どうして女神を超えられるの?」
「人間だからさ。誰かのために、本気で全力で前に進み続けるやつは、必ず奇跡を起こす。それは人間の特権だ」
「そう、この技も特権なの?」
ルビィの手には一本の剣。
造形からして俺が昔使っていたものだ。
「勇者の記録から再現した、一番強い剣」
「懐かしいもんを……」
「でもできない。勇魔救神拳を擬似的にとはいえ全種類使えるのに。これは完成しない」
剣に充填されていく暖かい光。
やがて迸る雷光へと変わっていくそれは。
「桜花雷光斬?」
「そう、でも不思議。勇魔救神拳のデータには無かった。どう作っても完成しない」
「そりゃそうさ。そいつは勇魔救神拳じゃない。もっと前からある、俺の一番のお気に入りさ」
あれは俺だけが完成させた、誰かに受け継がせることを一切想定していないもの。
俺の存在と歴史の集大成であり、女神や仲間との絆の結晶。
だから完璧に扱えるのは俺一人だ。
「もう何をしても届かない。けれど、あなたと女神が使ったこの技でなら……届くかもしれない。傷をつけられるかも」
「面白い発想だ」
俺も同じ剣を作り出し、同じように魔力を高める。
お互いの光がお互いを飲み込むように侵食と浄化を繰り返す。
そして輝く剣へと収束。研ぎ澄まされた究極の剣技へと昇華される。
「この一撃は女神と人の命運をかけた一撃。勇者因子も、虚無の力も、そのすべてが集う、私だけのオリジナル」
膨大な力が、全世界を無限に想像と破壊のループに陥らせることも、歴史ごと完全に消滅させることもできる力が生まれていく。
「これは受け継がれし想い。平和を願い、最善を目指し、故に辿り着く虚無にして希望の剣。ただ昔見た大切な笑顔に報いるための剣。桜花雷光斬 無勇想希刃」
「そんなものを使えるやつを、俺が殺すと思うのか?」
こちらも完成した。女神に後押しされ、リリスに使い、心を繋いだあの剣を。
「どちらかを殺さなければ止まらない。それほどの威力になる。本気であなたを殺すつもりでいく」
「それだけ女王神が大切なんだな。やっぱりダメだ。そいつのためにも、お前のためにも」
「確実にあなたを、勇者を……」
「何が何でもお前を」
ルビィの、女神界の全力が解き放たれる。
「殺す」
「守る」
同時に放つ俺の奥義。殺すのではなく、大切な事を伝えるための刃。
「桜花雷光斬――――心想刃!!」
中央でぶつかる斬撃。俺個人と全世界のぶつかり合い。
拮抗しているように見えて、じりじりと俺が押していく。
ルビィがゆっくりと口を開いた。
「この戦いは……おそらく女神界の記録にも残らない。表沙汰にしていいレベルじゃない」
「だろうな」
「間違いなく世界は救われる。でもどの世界もあなたを知らない。女神界でもそう。
誰からも称賛の声は出ず、あなたを勇者と認識しない」
「称賛されたいわけじゃない。誰からも認められなくたっていい。喝采も地位もいらない。俺は勇者に憧れて、なりたかったからなっている。他人は関係ない。俺自身がなると決めた」
「それが勇者という存在なの? そんな簡単なことで?」
「そうさ。誰だってそうだ。明日のため、何かに向かって本気で歩み続ける。希望を持ち、その一歩を踏み出すことができたなら、人は皆、その瞬間から勇者なんだ」
心想刃がルビィの技を飲み込み、本人まで想いを繋げていく。
「温かい……私の死に様としては……いい方だと思う」
「ここで死んだって何も変わらない。どうせなら会いに行こうぜ。その女王神だった女神に」
「計画も失敗して、会いに行けるはずがない。このまま死を受け入れ、結論を出す」
「死なせんよ。俺は勇者なんでね。必ず助ける」
こいつが自分で道を選び、歩けるように。
恩人にもう一度会えるように。
必ずハッピーエンドへ辿り着く。
それが俺の思い描く勇者像だ。
「わからない……あなたの行動全てがわからない……」
光がルビィを包み込む。それは破壊や崩壊の光ではない。
ただ心を解きほぐすための救済の光。
「会ってみようぜ。俺もついていく。少なくとも、その女神と俺がいる」
「もう一度……あの方の暖かさを……」
「必ず助ける。お前の希望を消させない。この手を取ってくれるまで諦めない。勇者の作るハッピーエンドを体験してみるのも、悪くないぜ」
差し出した手をただ掴んでくれたらいい。
言葉にしなくてもいい。簡単に言い表せる問題でもないだろう。
だからじっと待つ。
「一度だけ…………あなたを信じてみる」
握られたその手は、確かに暖かく、ルビィの笑顔も太陽のように眩しかった。
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