第31話 VRMMOの世界でも駄女神だよ

 合宿から帰って次の日。いつもの校庭に集合した俺と駄女神一同。


「今日の授業はゲームやるぞ。そんな気分だ」


「いい加減ですね」


「いいじゃないゲーム。なにやるわけ? 格ゲー? ネトゲ?」


「入ってからのお楽しみさ。はい施設どーん」


 校庭にでっかいゲーム施設を創る。そして何も無い真っ白な室内へ。


「なにここ? なーんにもないじゃない」


「今から行くのさ。VRMMOの世界へ」


「そういえば、昨日そんな話を読んでらっしゃいましたわね」


「そう、昨日思いついた」


 全員が光に包まれ、はじまりの街へ移動した。

 典型的な剣と魔法の世界に、機械とかぶっこんだ、なんでもありの世界。


「昔流行ったゲームの世界をまんま作った」


「作ったというのは?」


「まっさらな世界を一個作って、そこにネトゲのデータをコピーした。だからNPCも全員いるし、買い物もできる。日常会話くらいならできるぞ」


 この程度の世界でいいなら、ちゃちゃっと作れる。

 こっちでちょっとした仕様変更もできるようにした。


「へー結構凄いじゃない」


「宿屋は女神界への帰還ポイントだ。セーブできるから覚えておくように」


「ネトゲでセーブ?」


「ずっとこっちにいるわけにはいかないだろ?」


 飽きたら帰れるように設定してある。

 そして村の噴水の前にいる、キラキラした女に話しかけてスタートだ。


『ようこそ、新米冒険者よ。私はこの世界の女神。どうかこの世界に平和を』


「清々しいほどテンプレね」


「ややこしいよりマシだろ」


『この世界での職業を選んでください』


 ここで職を選べる。色々実験するつもりなので、ここに来れば転職可能にした。


「最強職はどれ?」


「ねえよ。バランス調整は俺がしておいた」


「えー……こういうのって最強職で極振りするもんじゃないの?」


「どんだけやり込むつもりなんだよ。メインとサブ選べ」


 一般的なネトゲだとそれが正解だろうけれど、今回は短期訓練用だからな。


「そりゃやっぱり火力でしょ。戦士がいいわ。戦士とアサシンで」


 サファイアが軽鎧とブリューナク。


「では魔道士で。サブをシーフにします」


 ローズはマントと魔法使いのとんがり帽子。そして二刀流。


「武闘家とヒーラーでもいたしますわ」


 カレンがチャイナ服。武闘家ってなんかそんなイメージだよ。


「こういうの性格出るよな」


「先生は参加しないのですか?」


「俺出たら終わっちまうだろ」


 出番は用意してある。だがもうちょい後だ。今は先に進むのみ。


『この世界を頼みましたよ、勇者に祝福を』


 そしてぼーっと立っている女神キャラ。だってNPCだし。


「で、どうすんの? 狩り行く?」


「行け行け。送ってやるよ。先にアイテムは買っておけよ?」


 そして近くの森へ。初心者向けエリアなので、敵もキノコとか野良犬的なやつだ。


「ちなみにフレンドリーファイア機能は切ってある。気にせず戦え」


「よーし! そういうの得意よ得意!」


「いきます」


 ローズの剣がスキルが、綺麗にキノコを斬り裂いていく。

 剣スキル25か。二刀流と攻撃範囲の上がる真空波も使っているな。


「これは……!?」


「どうした?」


 露骨に驚いた顔してやがる。ローズがここまで感情を表すとは。


「おおっと。操作ミスで全裸に……おや?」


 ローズが下着になる。ちなみに色は白で固定。

 考えるのめんどかった。変態くさいし。


「残念。装備画面を見つけたな?」


 ネトゲ経験があるならわかるあれだ。キャラクターの全身図と、そこに装備品をドラッグする系のMMOによくあるシステムを。

 あれを実装しておいた。便利だし。


「はい。そして装備の付け外しができるようなので、責任を押し付けつつ脱ごうかと」


「やると思ったから下着になるようプログラムした」


「…………白なのは好みですか?」


「一番シンプルだからだよ」


「他の下着……透ける下着やいやらしいもの、果てはふんどしまで、凝った下着があるゲームもあるでしょう。そういう気配りはないのですか?」


「ねえよ。あってたまるか。作る俺の身にもなれや」


 ゲームクリエイターさんって大変なんだなーと思いました。

 アホやっているうちに、カレンとサファイアがどんどん進んでいく。


「ヒャッハー! いくわよブリューナク! 必殺……槍爆弾!」


 ブリューナクに魔力を込め、全力でぶん投げて爆発させる。

 いやまあ悪くないけどさ。槍スキルが30になってやがるじゃねえか。

 投擲補正もかかっている。どんだけぶん投げてんだよ。


「戻れ槍よ!」


 声に従い、手元へと瞬間移動するブリューナクさん。

 使いこなしてんなあ。あれ、おそらく勘でやってやがんな。


「ケリュケイオン!」


 カレンの課題は魔力コントロール。よって杖による魔法に頼った戦闘だ。

 チャイナ服であることを除外すれば、充分に魔法使いだな。


「杖からおかかふりかけを出して、敵にダメージ!」


「なんでふりかけだ! それなら手から出せばいいだろ!」


「魔力操作訓練ですもの。杖から出さなければいけませんわ」


「ふりかけ禁止!」


「ちりめんじゃこボンバー!」


「白米に乗せるもの禁止!!」


 どうも天然さんだな。真面目にやっている可能性大なので、微妙に怒れない。

 しかもちゃんと操作できているため、いっそうタチが悪いのだ。


「白米に乗せるもの以外……味付け海苔?」


「和食から離れろ!」


「イチゴジャムバスター!」


「食べ物はやめろ!!」


 ちゃっちゃと森の奥へ到達。

 開けたひろーい場所だ。暴れてもいい、いかにもボスが来そうな場所である。


「さ、ここの巨大イノシシを倒したらクリアだ。ホームポイントに帰って……」


「イノシシってあれ?」


 普通にぶっ倒されて、顔半分しか残っていないイノシシさん。


「ん? バグってんのか?」


「ちょっとなによ? クリアしないと出られないデスゲームでも始まるわけ?」


「そんなんもう飽きたわ。絶対設定しないぞ」


「経験があるのですね」


「そんな世界を何十回も救ったよ」


 ぶっちゃけ飽きるんだよデスゲーム。

 なんというか緊張感もなくなるし、所詮ゲームだし。

 次元の壁くらい壊せるので、ゲームの世界に留まることもない。


「ボスを倒したやつがいるはずだが」


「ファーストステージのボスは、ワタシデース!」


 はい、美由希登場。いや呼んでないし、作ってないぞこんな設定。

 そしてなぜかロングスカートのメイド服だ。


「お前本人だな? どうやってここに来た? なんでメイド服だ?」


「教室に誰もいなかったので、センセーの気配を探ってみまシタ! 服は装備品として買ったデス!」


「なるほど、あれがストーカーですか」


 うむ、怖いね。ストーカー女神って。女神の力をそんなことに使わんでくれ。


「違いマス! センセーを追っかけている記者デスよ!」


「記者のモラルってうっすーいわよね」


「五番煎じのお茶くらいですわね」


「ワタシはちゃんとした記者デース!!」


 それもかなり怪しいけどな。とりあえず乱入した理由でも聞こう。


「で、お前はなんでいる? 授業邪魔しに来たのか?」


「先回りしたらボスがいたので倒しちゃいました」


「お前なあ……大型のパワータイプとどう戦うかの授業予定だったのに……」


「それについてはごめんなさいデス! センセーの授業を潰す気はなかったのデスよ!」


 ちゃんと謝ってくるということは、故意にやったわけじゃないんだな。

 さてどうするかな。イノシシを復活させても、モチベーションが復活しないだろうし。悩みどころだ。


「あーもう責任取れ。お前がボスとして戦え。これは訓練で、授業だ。そこを忘れるな。はっちゃけすぎるようなら、マジで授業潰したとして出禁にするぞ」


「オオゥ……これは本気のやつデスね。りょーかいデース! センセーにいいとこ見せちゃうデスよー!」


 そんなわけで三人と戦ってもらうことにした。

 例によって俺は手を出さない。さてどうなるかな。


「まあいいわ……上位のバトルランカーには負けるけれど、これでも女神じゃ強い方なのよ」


「そうですね。駄女神と呼ばれようとも、戦闘の成績は上位でしたし。修行の成果でもお見せしましょうか」


「ええ、存分に見せつけますわよ」


 三人は女神の中じゃ恵まれているというか、強い方に分類される。

 普通の女神じゃ太刀打ちできない。

 だからバトルランカーにしたんだけれど、よく考えたら美由希って今どれくらい強いんだろうか。


「ほっほーう……勝つ気デスか。受けて立ちますよ?」


 やる気充分といったところか。一瞬だけ目がキラリと光った気がする。


「美由希って雑誌記者らしいけど、強いのよね? 先生が任せるんだし」


「あー……どうだろ? 昔の美由希しか知らないんだよ。当時はそこそこ強かったけど、仕事があるなら弱くなってるかもな」


「心配ご無用デース! バッチリ修行してましたよ。ひよっこに負けるはずがありません!」


「んじゃやってみろ。怪我しても回復はしてやるよ」


 そしてバトル開始。意外にも先に仕掛けたのはローズ。


「参ります」


 魔力で身体能力にブーストかけて二刀流。

 接近時に各種攻撃魔法で移動先を潰し、細かいダメージを与えるように動くことも忘れない。

 ここに個性が出るな。理詰めというか、勘ではなく計算で動く。


「いいデスねー。強くなっているのデス」


 体を軽くひねって魔法をかわし、胸元から取り出したボールペンに魔力を込めている。


「いつまでも弱いままではいられませんので」


 ローズの繰り出す二刀流は、スキルを渡してからの期間が短いというのに華麗だ。


「ふふーん、でもまだまだデース」


 ボールペンをくるくる回転させ、ローズの剣に滑らせて軌道をずらしている。


「そんなバカな!?」


「魔力を一点集中させれば可能デスよー。ペンは剣よりも強しデース!」


 得意げに、以前よりも成長した胸を張る美由希。

 実力が自信につながっているのだろう。いい傾向だな。


「もう見切りましたよー。荒削りデスが素質がありますねー」


「そうですか、意外に早いですが、助かります」


「……んん? どういう意味デス……」


 ローズの速度が爆発的に増す。突然の下着姿である。


「身体能力一点突破。というところですね」


 今回は真面目に戦っているので大目に見よう。

 どこまで戦えるのかも知っておきたい。


「その程度の速度は……予測済みデース!」


「ええ、でしょうね」


 美由希の速度は更に上だ。そこまではわかる。だが甘い。ここはゲームの世界だ。

 ローズが更に加速して、完全に速度で凌駕する。


「ヴエェ!? なんデスか!?」


 二本の剣が美由希に叩きつけられる。その衝撃で軽く怯む。

 怯む程度なのは褒めておこう。あいつも頑丈になったもんだ。


「スピードアップポーションですよ。最初の村で購入しておきました」


 各々のメニュー画面で、買ったアイテムを使いながら戦えるのだ。


「ほーら油断する。強くなった分だけ過信してないか? いいとこ見せようとしすぎだぞ」


「うぅ……してやられました。けど戦いはここからデス!」


「では、先生の弟子として恥じぬ戦いをいたしますわね」


 音速を超えて美由希の背後にまわり、美由希が受け止められるように速度と威力を調整した拳が繰り出される。


「遅いデス!」


 カレンの拳を受け止めようとし、その手ががっしりとカレンに捕まる。


「かかりましたわね?」


「オオウ!? 力が抜けるデス!?」


 無効化能力だ。ぶっちゃけ強い。反則技である。


「ええいもう面倒な!」


「こういう手段も戦法のひとつですわよ」


 身を捩って逃げようとするが、体術はカレンのほうが上らしい。

 俺が教え込んだからな。なっかなか離れないわけだ。


「不用意に取らない。警戒していないからだぞ。拳の速度で気づいて警戒しろ」


「これどっちの授業デスかー!?」


 なんか美由希の指導みたいになってきたな。

 懐かしい感じだ。少し昔を思い出した。


「ちなみに周囲への警戒もおろそかだぞ」


 開幕から魔力を貯め続けていたサファイアが、今まさに充電完了。


「パワーアップポーション多めの、活殺女神螺旋!」


 指先から放たれる螺旋のビーム。そこに向けてさらに槍を構える。


「イン……ブリューナク!!」


 ブリューナクに強烈な回転をかけ、ドリルのように回してぶん投げた。

 ビームと混ざり極大のビームつきドリルの完成である。


「きゃああぁぁ!?」


 そして巻き起こる大爆発。三人は一足先に脱出済み。


「あたた……ちょーっとだけ油断しましたねー。結構やるもんデス」


 頭をぽりぽりかきながら、平然と立ち上がる美由希。

 特に怪我も見当たらない。まあゲーム世界だし。


「うっそ!? あれで無事なの!?」


「でもまだまだデスねー。直前で離れてくれたおかげで、障壁も張れますし、ワタシはそれなりに頑丈なのデス」


「なんなのこいつ……」


「……明らかに他の女神とはレベルが違う」


「あとメイド服の防御力が高かったのデス」


「なにそれずっこい!?」


 あ、あれもとのゲームじゃ課金装備だ。

 かなり上位のやつだな。服屋に置いてあったやつを見つけたのか。


「やりますわね」


「正直ここまでやるとは思わなかったわ」


「そりゃまあ今は記者とはいえ、昔は俺と一緒に戦ってたし」


「そういうことデース!」


「そこそこ強いとか言ってたくせに!」


 俺もちょっと驚いたよ。昔より強くなっているとはね。

 精々現状維持くらいだと思っていたよ。


「センセーは女神の強さを正確に把握できていないのデス。まあこれはこちらの不徳の致すところデスが」


「どういうことです?」


「例えば強い人間の力を十。女神を百万。修行した女神を億としマス。センセーは片手間で七百兆くらいのパワーをほいほい出すため、端数を見切るのが面倒なのデスよ」


「安心しろ。三人のデータはきっちりと把握している」


「センセーはそういうところ凝り性デスからねー。ちょっと羨ましいデス」


 普通の学校なら別なんだろうが、三人しかいない生徒のデータも把握できないようでは、教師としてやっていけないからな。


「んじゃ戦闘はここまで。村に帰って飯食いながら反省会だ」


「えー! まだワタシのかっこいいところが! まだ攻撃してないデース!」


「そういえば、ずっと攻撃をかわしているだけでしたわね」


「手加減されっぱなしということですか」


「チャンスを! センセーにいいところを見せるチャンスを!」


「いらんわ。そもそもお前はボスじゃないはずなんだぞ」


 駄々をこねる美由希を連れて、ホームポイントまでワープ。

 とりあえず全員で飯にすることにした。

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