第25話 合格発表後も駄女神だよ

「カレー食べすぎた……ちょっと代わりに合格発表行ってきて」


 食い過ぎでベンチに寝転ぶ駄女神一同。アホか。


「行けるかボケ。そんなになるまで食うな」


「不覚です。この私が……あの程度のおでんすら消化しきれないとは」


「牛すじがなかなか噛み切れないのが原因ですわ」


「絶対違うわ。お前らなあ……こっから試験とかあったらどうすんだよ」


「代わりに出て」


「できねえよ!?」


 渋々回復魔法かけてやる。消化を助ける効果と、体調を整えてやって、気分が良くなるように効果を追加して……まったく、無駄な手間増やしやがる。


「あー楽になってきた。寝そう」


「寝るなや!」


「ちょっと毛布的なもの持っていませんか?」


「寝るなって!」


「大丈夫ですわ。こう……枕的なものをいただきたいだけですの」


「枕的なものと毛布あったら寝るだろ! 起きろ! もう調子戻ったろ」


 俺の回復魔法なら即効性だ。こいつら眠いだけだろう。


「違うわよ。辛いのは治ったわ。ありがと」


「じゃあなんだよ?」


「単純に眠くなったのです」


「違わねえだろ!?」


「お腹いっぱいになると眠くなりますわね」


 実は俺もちょっと眠い。眠気なんてカットできるけど、なくすとダメ人間になる気がしている。なので睡眠や食事はとるようにしています。


「いいから行って来い。もう発表だろ」


「はーい」


 だるそうに移動を開始する駄女神一同。

 二階に行くのが面倒だ。近場から覗いてみようか。


「一階で見られる場所いこうぜ」


「ではご案内いたします」


 結果から言うと全員合格していた。よかった。マジでよかった。


「いやったー!」


「ふっ、私の才能が開花し始めましたね」


「先生! やりましたわ!」


「おう、おめでとう。全員中間試験合格だ!」


 実は試験が始まるまで、ほぼ落ちるんじゃないかと思っていたよ。

 俺の指導が間違っているかどうかも気になっていたので、内心ホッとしています。


「思った以上に体が軽かったわ!」


「成長を感じます」


「全力で動いてみて、初めて自分がどの程度なのか実感いたしましたわ」


 体力測定というものが、今の自分を見つめるのに最適だったのだろう。

 純粋に喜んでいるようなので、ここは激励しておく。


「凄い成長だぞ。いい傾向だ。そこからさらに自分を超えろ。そうすりゃ自然に強くなる。俺はそうだった」


「先生は少々特殊かと……」


「女神のほうが特殊なのでセーフだ。ってか合格者少ないな」


 モニターを見ると、その場にいる女神の数に比べ、合格者が少ない。


「結構難関なのか?」


「どうでしょう? 私の時はもっと多かったように思いますが」


「駄女神が増えてんのかもな」


「深刻ですわね」


 お前らもその一端だよ。今日はめでたい日なので、言わないでやるけどな。


「こんなん渡されたわよ」


「女神バトルランクマニュアル? めんどくさそうだな。分厚いし」


「簡単に言えば、下級ランカーはどんどん同ランクと戦い、中級に上がれ。上級は百位からだ。それだけ覚えておけば問題ありません」


「戦い続けてりゃあ、勝手にランクが計算されて上がるのか」


 女神界の科学力って凄い。魔法も化学もぶっちぎりで発達して、むしろ一周回って自然を大切にしている。その程度のシステムはいくらでもできるのだろう。


『合格者諸君! まずはおめでとう!!』


 モニターにでかでかと映る仮面の女。

 仮面にマントで体を隠している。不審者ですか。


「なんだあいつ」


「ランク二位の女神仮面です。圧倒的な強さとカリスマ性で、グッズ展開もされています」


 なにやら心構えとかの演説していらっしゃるよ。

 まあスタープレイヤーは必要なんだろうし、俺から言うことはない。


「先生の知り合いだったりしないの?」


 仮面を外しているが、なんというかこう男装の麗人枠というか、お姉様と呼ばれそうなやつだ。


「いや、完全に知らない女神だ。見たこともない」


「異世界には出向かないようですから、先生と遭遇する機会がないのでしょう」


「面倒なタイプだな。一生会わなくていいや。総員退避」


 会場からそーっと退避します。面倒事は避けよう。

 ただでさえでっかい面倒を三人分抱えているってのに。

 そそくさと外まで移動した。


「終わってみればあっけないわね。武器も使わずに終わっちゃったわ」


「会場でぶっ放すと壊れるだろ」


「どこかで試したいですね。スキルが上がっても使えないと、しょんぼりします」


「一理ある。よし、課外授業だ。しばらくどっか行くぞ」


 場所なんてどうとでもなる。女王神あたりに相談すれば、大抵の場所には行けるだろう。


「急ですね」


「あくまで予定だ。行きたい場所あるか? 広い場所がいいな」


「じゃあ海! まだ焼きそば食べてない!」


「覚えてたんだな」


 焼きそばは海で食う。そんな暗黙の了解が発生し、家で焼きそばが出たことはない。そろそろ食いたくなってきたな。


「せっかく持ってきた武器が使えないままなのよ。こう、思いっきりぶっ放す機会と、遊ぶ機会を両立させるのよ!」


「武器? そういえば三人の武器を見ていないな。先生に預けているのか?」


「ここよ」


 全員アイテム欄から武器を装備。

 手元が光に包まれ、武器が現れる。便利なのでできるようにさせておいた。


「メニュー画面を使いこなせるようになってきました」


「これは先生の技術……やはり生徒にしていただきたい!」


「断固拒否で」


 めんどいので拒否しておこう。もう独り立ちしてんだろクラリスは。


「みんな海でいいのか?」


「いいですわね海。水着は持っていますし、広い場所ですわ」


「賛成です。私も服というものに慣れ過ぎました。薄着になりたいです」


「そこは慣れっぱなしでいてくれ」


 こいつも服に慣れさせないと。でも海だから水着着てりゃいいわけで。

 それを狙っていたとしたら策士というやつだ。


「では私が前乗りして焼きそばと海の家を作っておきます。先生と三人はそのあとでいらしていただければ」


「お前はゲーセンと教官の仕事があるだろうが。っていうか付いてくる気か!?」


「ゲーセンは別の女神に譲ります。教官はしばらく休みです。あまりにも仕事をしすぎとのことで、長期休暇中でした。何も問題はありません」


「あるわ! いいから普通に休暇を過ごせ。焼きそばはみんなで作るんだよ」


「お供します」


「せんでいいわ!」


 やばい。こいつマジでついてくるぞ。なんとか逃げたい。


「あ、いましたねー! 生徒のみなさーん。ちょっと待つデース!」


 なんか聞き慣れた声がしてきた……うおいマジか。これ以上ややこしくすんなよ。


「美由希じゃない。なにやってんの?」


「センセー! お久しぶりデース!」


 やっぱり美由希だ。カメラ持ってるし、今日は会場の取材かな。

 会場と女神仮面とやらの取材であってくれ。


「またやっかいなのが……ここに来た目的を言え」


「今日はバトルランカー試験の合格者を取材デス。ちゃんとしたお仕事デスよ。いっぱい写真取ったデス」


 ちらほらいた合格者の写真を見せてもらった。結構撮るのうまいなこいつ。


「どうやら本当に仕事みたいだな」


「イエース! 女神仮面の写真も取ったデス! 欲しいデスか?」


「いらね。興味ない」


 女神の写真もらってどうすりゃいいのさ。しかも色物っぽいやつの。


「先生はああいうタイプお嫌いデスか」


「俺のことはいい。合格者の取材なんだろ?」


「おおう……そこはお仕事デス。三人の写真だけ撮らせてくださいデス!」


「いいわよ。わたしたちだけ撮られないのは、なんか嫌じゃない」


「そうですね。しっかり撮ってもらいましょうか」


「お願いいたしますわ」


 どうもちゃんとした仕事っぽいので受けておこう。

 他人の真面目な仕事は邪魔しない。こいつらの合格晴れ姿は、写真に収めてもいいだろう。記念になる。


「全員集合写真も撮っておくか。記念になるだろ」


「いいわね! お願いできる?」


「オッケーデース!」


 三人がそれぞれポーズを取り、その後三人合わせて一枚。

 さらに先生である俺を入れて一枚撮った。ちゃんと人数分くれるらしい。


「悪いな、俺の分まで」


「問題などあるわけがないのデス!」


「先生、美由希・アリアと知り合いなのですか?」


 なんかクラリスが知り合いっぽい口振りである。接点なさそうなのに。


「知ってんのか?」


「クラリスさんは、たまーに雑誌の取材をお願いしているのデス。普段はクラリスさんファンの子がやるので、ちょっぴりだけ会ったことがありマス」


「ふーん、まあ二人とも俺が救った異世界担当女神だよ。変な揉め事はやめろよ」


 意外な交流ってのがあるもんだな。女神界は広いのに。


「ほほう……クラリスさんもセンセーガチ勢デスか」


「そのようだ。別段不思議ではないだろう」


「なんだよガチ勢って!? 怖いわ!?」


 もう疲れたので転送魔法を展開。

 危機を感じました。めっちゃだるいことになりそうだ。


「じゃ、写真は後日持ってきてくれりゃあいいから。またな、クラリス、美由希!」


「あ、先生!」


「ちょっと待つデース!」


 三人連れて緊急離脱。危ない危ない。

 家の前に転送完了。ひとまず逃げ切れたな。


「じゃ、海行く準備でもしようぜ」


「あんたも大変ね……」


 生徒に同情された。その日、三人がちょっと優しかったです。

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