第26話 海に行っても駄女神だよ

 そんなこんなで四人で海に来た。

 全員水着はプールの時と同じ。変える必要もないしな。


「ううぅみどぅああぁぁ!」


「サファイアうっさい!」


「ヤーッホー!」


「それ山でやるやつ!」


 女王神のプライベートビーチである。

 澄んだ海。綺麗な砂浜。よく晴れた空。絶好の海日和であった。


「よーし、じゃあ特訓するぞ」


「遊ぶんじゃないの?」


「合宿みたいなもんだよ。ちっとは真面目に訓練するぞ。俺の教師としての仕事がなくなる」


「いいでしょう。最初は何をしますか?」


「最初にやることと言ったらストレッチだ。準備運動は大切だぞ」


 急に海に入ると危ないからな。

 ちゃんとやっておこう。海で泳ぐのは久しぶりだ。

 俺がまだ駆け出しの勇者だった頃なら、ここで揺れる胸とか尻とかに欲情していたのだろうか。もうそれすら曖昧だなあ。我ながら枯れている。


「ストレッチ終わったら遠泳をやる。目標は……そうだな。ほいっと」


 手から赤い魔力球を撃ち出し、それなりに遠くへ浮かべる。


「あれに触れて戻ってこい。俺の魔力が付くから、ズルはできんぞ」


「まあ楽勝よね!」


「体力テストならば慣れました」


「さてどうかな? ちなみに、こっちの鉄板で肉を焼く。早く帰ってこないと野菜だけになるぞ。カモンイルカ!」


 プールの時に出てきた浮き輪のイルカ出現。

 あらかじめ魔力も込めておいた。


「こいつにリベンジしてもらう。イルカくんより遅れると飯が減るぞ」


「ふっ、いいわよ望むところよ! 浮き輪に負けてしょんぼりした、あの頃のわたしとは違うのよ」


「本当にあの頃のお前は何をやってたんだろうな」


 思い返すと凄くアホです。いや今もアホだけどね。


「よーしじゃあ一列に並べ。いくぞー。レディ……ゴー!!」


「いきますわ!」


「今回こそ勝ってみせます」


 なかなかのロケットスタートを見せてくれる……イルカ。

 やべえちょっと魔力込めすぎたかも。


「前より速くない!?」


「これは……厳しいですね」


 それでも食らいついている駄女神一同。

 成長してんだな。さて、あいつらのために鉄板の準備をしよう。


「ちゃんと焼きそば麺も買ってあるしな。高級なお肉は多め、帰ってくる頃に鉄板を温めておく。野菜は少なめで……」


 楽しくなってきた。食ったら俺も泳ぎたい。

 そろそろ折り返し地点だろうと思い、生徒に目を向けてみた。

 視力が異常発達しているので問題なく見える。


「イルカつええ……」


 先頭イルカ。僅差でサファイア。ちょっと遅れてローズとカレン。

 元々イルカという生物は、海の中を高速で泳ぐ。人間では追いつけない。

 いやまあ浮き輪なんだけどさ。それでもイルカなんだなあとか思ってしまう。


「追いつけませんわ!」


「このままでは食事が……」


「こうなったら奥の手よ!」


 ほう、奥の手なんてあるのか。見せてもらおうじゃねえか。


「必殺! ブリューナクボンバー!!」


 ブリューナクに魔力を込めてぶん投げやがった。


「うわきったねえこいつ!?」


 イルカくんは爆裂。海がちょっと荒れる。


「ふはははははは! 女神が浮き輪に負けるなんて、あってはならないのよ! これでわたしのご飯はぶっほああぁ!?」


「ちょっとサファイア!?」


「……最悪です」


 波にのまれてジタバタしているアホ一同。いや、アホはサファイアだけか。


「綺麗な海で何やってんだかね」


 あの程度で溺れることはないだろう。

 危機に直面した時、どう対応するかも見たい。


「ふう……少々疲れましたね」


 一番乗りローズ。当然の権利のように全裸である。


「水着どこやった!?」


「波に流されましたね」


「スクール水着なのにか?」


「ええ、女神界は不思議がいっぱいです」


「とりあえず戻すぞ」


 魔法で水着を着せておく。俺が変態みたいだからな。


「あら、先を越されてしまいましたわね」


 二番手カレン。普通だ。普通に泳いで帰ってきた。


「普通って素晴らしいな」


「どういうことですの?」


「なんでもない」


 海上に大きな水柱が上がり、そこからサファイアが突っ込んでくる。


「これが海中女神キックよ!」


「泳げよそこは」


 砂浜が荒れるので、全ての衝撃をカットしておいた。


「さあお肉よ! お肉の時間が来たわ!」


「微妙にルール違反くさいが……まあアクシデントに対応できたってことでいいか」


「ではご飯ですね」


「まだ早い。次、砂浜ダッシュ。また魔力球出すから、それにタッチして戻ってくること」


「ええーお腹すいた!」


「そもそも武器の上達具合を見るという話はどこへ?」


 そっちも気になるな。幸い砂浜だ。良い訓練にはなるだろう。


「よし、予定変更。俺が魔力球をどんどん出す。それを武器のみを使って壊せ。武器から衝撃波や魔力を引き出して撃ち出すのはセーフな」


「なにそれ面白そう!」


 食いついたか。ならやる気の出る方でいこう。


「よーし腹減ったし、全員まとめていってみるか」


「いつでもいいわよ!」


「どんとこいです」


 大小様々な魔力球を出し、三人の周囲に、ちょっと離れた位置に、そして海の上へ飛ばす。どこへどう攻撃するか調べよう。


「ブリューナク!」


 槍を全身使ってぶん回すタイプのようだ。

 豪快に動きながら、一番近いやつから切り飛ばしていく。


「楽勝楽勝、ってあれ? なにこれ? 消えないわよ」


「二回当てないと消えないやつを混ぜてある」


「んじゃ槍スキル……女神二連槍よ!」


 槍で一刺し。だが衝撃は二回。二連撃か。

 武器スキルが順調に上がっているようだな。


「暴風女神突き!」


 荒れ狂う魔力を突きに乗せ、周囲の球もろともぶっ飛ばしている。


「力とはパワーなのよ!」


「おおー、いいね」


 膨大な魔力は、ほぼ尽きることを知らない。

 ならば簡単だ。パワーをスキルという形で最適化すればいい。

 あとはぶっ放せば、それだけで技だ。

 単純に二回攻撃だけで、ぶっ壊れパワーを活かせる。


「ケリュケイオン!」


 カレンは新しい魔力になれることが最重要課題だ。

 うまいことケリュケイオンによる魔弾連打で、遠距離の不安を解消している。


「ふうぅ……はっ!」


 両手に別種の魔力が感じられる。だがそれも一瞬のこと。

 高速で移動するカレンの手に触れた魔力球は、音もなく突然消えた。


「無効化能力? もう自分のものにしたのか」


「いえいえ、両手に集中するのが精一杯ですわ。まだ魔力に乗せて飛ばしたりはできませんし」


「いや、そりゃきついだろ。できたら強いなんてもんじゃないぞ」


「精進あるのみですわね」


 こっちはやる気があるので問題なし。

 欠点も把握できているし、この調子で見ていこう。


「最後はローズだが」


「なにか問題でも?」


 二刀流を華麗に使いこなしている。

 しかも二本に流す魔力がそれぞれ違うようだ。

 やるな。そういうの中二心がくすぐられる。


「フォームチェンジ」


 めっちゃ丈の短い和服になる。

 着物っていうか浴衣じゃないかなこれ。


「武士道とは……脱ぐことと見つけたり」


「武士に謝っとけ」


 剣の冴えが増す。やはり魔力が質ごと変わっている。

 斬撃に属性魔法を込めて、遠距離攻撃として飛ばすこともできるか。


「あっつ……やはり砂浜で和服は無謀でした。脱ぎます」


「水着になるならいいぞ」


 そりゃ暑いよな。うん、中はビキニだ。水着さえ着ていればいいや。


「秘剣……ヌーディストビーチスラッシュ」


「違うぞー。健全なビーチだからな」


 七色を超えた斬撃の乱れ斬り。

 適当に振るのではなく、しっかり獲物を認識して、攻撃しているところがポイント高い。


「終了。容易ですね」


 全員の武器スキルと今できることを把握。

 成長の兆しあり。とまあそんなところだな。


「よーし、よくやった。飯にするぞ!」


「いやったああぁぁ! で、ご飯はどこ?」


「焼きそばの予定だ。セットがあっちに……」


「先生、鉄板を温めておきました!」


「みなさんお強いデスねー。写真バッチリ撮っておいたデース!」


 クラリスと美由希がいる。なぜにいらっしゃいますかね。


「お二人ともどうしてこちらに?」


「月イチの取材デース。先月の記事が好評だったので、毎月やることにしたのデス。女王神様から許可も頂いてマス!」


「もう少し休暇が伸びましたので、一緒にバカンスでもと。焼きそば、お手伝いいたします」


 来ちまったもんは仕方がない。材料も多めに持ってきてくれたらしいので、いっちょがっつり作りますか。


「海産物を手に入れてありマスよー」


「野菜も準備万端です」


「よし、じゃあ全員で作るぞ。普通のやつと海鮮焼きそばと……」


「先生の好きな、あんかけ焼きそばの準備もあります」


「でかした! 合宿の間いていいぞ!」


「ありがとうございます!」


 そんなわけで楽しく焼きそばパーティーして、海の見える旅館へと向かったのであった。

 焼きそばは超美味かった。やっぱりみんなで作って食うと美味いな。

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