第24話 闘技場でも駄女神だよ

 クラリスと出会って三日後。女神協会より通達が来た。

 正式にランカーとして認めるため、体力テストを受けろとのことだった。


「準備できてんな?」


「当然よ!」


「武器スキルもバッチリです」


「準備万端ですわ」


 そんなわけで近未来的な闘技場へ。

 コロッセオじゃなく、ヴァーチャルなんちゃらとか名前が付きそうなフィールドだ。


「おおー凄いなここ」


「先生!」


 なぜかクラリス登場。俺たちを待っていたようだ。


「クラリス? お前なんでいる?」


「推薦したのは私です。先生のお手をわずらわせることの無いよう、待機しておりました」


「いやそこまでしなくても……」


 そこまで気遣われると罪悪感がやばい。勘弁してください。


「なにをおっしゃいます! 先生の生徒が試験に臨むのです。出来る限り協力いたします!」


「相変わらずの全力信者っぷりねえ」


「そこまでされる覚えはないっつうの」


「あ、試験会場はあちらですわよ」


「見学席もあるようですし、先生も見ていってください」


 教え子がどこまで通用するのか見たい。これはありがたいな。


「よし、先生のために一番いい席を……」


「クラリス。俺に気を遣うな。俺は普通に見たい」


「失礼いたしました!!」


「よし、これ一学期の中間試験にしよう」


 急な思いつきだが、まあそのくらいいいよな。


「ちょっと早くない?」


「そうか?」


「テストに合格すれば試験クリアということですか?」


「まあそんな感じ。ちゃんと見てるからさ。ハードルがめっちゃ高かったら別の評価方法にするよ」


 試験の難易度がわからない。なので観戦しながら判断しよう。


「ま、当然合格よね」


「どんな試験か知りませんが、今の私たちで落ちるようなら、ランカーなどごく少数でしょう」


「期待に応えてみせますわ」


「うっし、行って来い」


「はい!」


 そんなわけで俺とクラリスは二階へ移動。

 体育館の二階観客席みたいな場所で、適当な場所を見つけて座る。


「体力テストか。まあ通るだろう」


「ランク二桁と戦えたのであれば、問題ないはずです」


 それでも心配してしまうのは、俺が教師だからなのか。

 あいつらちゃんとやれるかな。


「最初は短距離走か」


 結構な数の女神が集結している。

 意外と人気商売なのかもしれない。


「女神ダーッシュ!」


 カレンがトップ。サファイアが次点。ローズが五位。


「身体能力じゃカレンが上なのか」


「ローズは肩慣らしの意味合いが強いように思えます。次に備えて温存しているのでしょう」


「その点はカレンも一緒っぽいけどな。合格を第一に考えている」


 こういうの個性が出て面白い。どう考えて動いているかの参考にもなる。


「いいね。色々考えて動いている」


「先生の教え子なのですから、全科目トップも夢ではありませんが」


「そこは個人の戦法や優先順位もある。どれが正解ってことでもないさ」


 次のパンチマシンはサファイアがトップ。次がカレン。ローズが三位。


「爆発力じゃサファイアが一番だな」


「流石というべきか、女神女王神の娘は伊達ではありませんね」


 続いて魔力量調査。そりゃ女神なんだし、そこらも調査するわな。


「わたしの秘められたパワーが今ここに!」


 ぶっちぎりでサファイアトップ。二位がローズで、カレンは八位。

 量だけならクラリスよりも上だろう。


「やっぱあいつ狂ってんな。底なしだ」


「磨けば光りそうですね」


「ちょこっとだけ光り始めてるよ。楽しくなってきた」


 続いて魔力コントロール。手のひらに魔力の玉を出し、それをどこまで操作できるか。


「この程度なら合格間違いなしです」


 ローズトップ。魔力量を変えないまま、豆粒みたいに小さくしたり、自由に動かしている。表情一つ変えないあたり、手慣れているのだろう。


「少々異常だ。あれも先生のご指導ですか?」


「ローズのコントロールは才能っていうか……俺も妙だとは思う。精密過ぎる」


 コンマ以下のブレもなく、機械のように淡々と完璧にこなす。

 正直あらかじめ特訓させても不可能なレベルだ。


「クラリス、戦闘中にあれできるか?」


「集中すれば。しかしあれほど容易にこなせるかは……」


「女神ってのは面白いよな。やれることが多いぶん、個性も豊富だ」


「楽しそうですね」


「おう、こうして俺に害のない女神を見るのは楽しいな」


 一緒に冒険となると大変だ。だがこうして眺めているだけなら、その個体の才能とか実力が垣間見えて面白い。三人を育てる参考にもなる。


「私の時もご迷惑をおかけしました」


「いんや、お前すげえマシだったぜ。少なくとも駄目じゃない。お前で駄女神とか言ったらバチ当たるわ」


「恐縮です。先生ならバチを当てる神すら倒してしまいそうですね」


「…………本当にいたら強いかな?」


「真面目に考えるのはやめてください」


 雑談しながら持久走を見る。やはりサファイアがへばっていた。

 ペース配分考えるの苦手なままか。


「ふう……わたくしもまだまだですわね。もっと精進しなければいけませんわ」


 ここは自分の限界を知っていて、スタミナのあるカレンがトップ。


「カレンは弱体化していると聞きましたが?」


「それでも戻ってきているさ。そもそも世界を救うために使われたんだし」


「そこに異論はありません。職務を全うした。それは賞賛されるべきことでしょう」


 午後から結果発表やるらしい。

 食事休憩になったので、三人を迎えに行ってやろう。

 一階へ降りて、通路を歩く。


「これは合格できそうだな」


「簡単ですからね。スペックが高ければ、普通に通るでしょう」


 そこで俺の目が売店に釘付けになる。

 そういや腹が減った。カレーとか色々取り揃えてあるじゃないか。


「売店で牛すじ煮込み売ってやがる……」


「買いましょうか?」


「いいや、俺が買う。給料が出たんでちょっと持ってきた」


 女神女王神にちゃんと給料の話をして、正式に頂いたのさ。

 クラリスに奢ってもらった分も返しました。

 先生としては、それくらいちゃんとしておきたいし。


「おめでとうございます」


「おう、ついでだ。奢ってやる」


「光栄です」


「なに二人だけでご飯食べようとしてんのよ」


 サファイアたち発見。特別疲れている様子はない。

 よしよし、体力ついてきたっぽいな。


「仕方ない……カレー買ってやるから、絶対合格しろよ」


「見てなかったの? 十位以内にいる方が多かったわよ?」


「私たちにぬかりはありません。この程度の突破は余裕です」


「先生のご指導あってのことですわ」


 ちゃんと見てたさ。それでもちょっと心配でなあ。

 完全にカレーに目がいってるし。あ、牛すじ美味え。

 女神界は食い物が安全で高品質だな。


「先生にかかれば、どんな駄女神だろうが更生できるということだな」


 まだまだ更生できてないんだよなあ。ステータス上がっても、性格に難ありだし。


「その全肯定っぷりはどっから来てるわけ?」


「そこまで慕われているとは、クラリスの担当世界で何をしたのですか?」


 クラリスがここまでしてくれる理由か……単純にちょっと鍛えてやったからだと思ってたけど。なんだろう、ここまでされる理由じゃない気がする。


「いや、これで俺がクラリスに色々してやってんなら別だけどさ」


「していないのですか?」


「うーむ……普通に異世界救って、鍛えてやっただけだし。勇者なら世界くらい救うだろ? ひょっとしてなんか勘違いしてんじゃないかね」


「いいえ、今の私があるのは、間違いなく先生のおかげです!」


 俺そんなことされるほど慕われる覚えがないぞ。

 申し訳ない気分になるから勘弁して欲しい。


「わたくしにはその気持ち、痛いほどわかりますわ」


「カレンも救われた側か。当然だ。先生への恩は計り知れない」


「はいはい、このあと結果発表だよな?」


「はい、合格者があっちの会場のモニターに出るそうですわ」


「それまでに飯食っちまうぞ」


 おでん発見したので、ちょっとつまむ程度に買う。

 みんなで食える場所を探し、いい感じのテーブル発見。


「よし、じゃあ食うか。あせんなよ、熱いからな」


「あっつ!? おでんあっつい!?」


「落ち着いて食えって」


 言ったそばからこれだよ。サファイアには落ち着きというものを教えんとな。


「体が温まりますね。脱ぎますか」


「脱ぐな脱ぐな」


「ローブだけですよ」


「念のため聞く。ローブ以外には?」


「ブルマです」


「……許可しよう」


 流石に露出で失格にはなりたくないと見た。

 この調子で食い止めよう。教え子が全裸だと俺にも飛び火する。


「売店のカレーやおでんは、なぜか美味しいですわね」


「運動後だからかもな」


「雰囲気もあるのでしょう。特殊な場所はそれだけで気分が高揚します」


「あっちゅい!?」


「いいからゆっくり食え!」


 こんな調子で合格できんのかね。急に心配になってきやがった。

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