第10話 雑魚狩りでも駄女神だよ

 今日の授業は体育。スーパー女神式立体映像トレーニングルームだ。

 適当に剣と魔法の異世界を作り出し、雑魚狩りをさせる。


「えー今日は雑魚狩りをして、実戦経験の中でレベルを上げてもらう」


 だだっ広い草原である。ここなら物も壊れない。

 あとは敵を倒してもらうだけ。


「俺は助けないからな。各自協力してがんばれ」


 そして湧いてくるスケルトンさん。武器持ちだ。

 まあ雑魚中の雑魚だな。十体くらいだし、いけるいける。


「必殺かっこいいビーム!」


 サファイアの一撃で骨すら残さず消えてしまう。

 地味に広範囲技にしているな。成長の兆しが見える。

 でもクレーターできちゃったよ。


「地形変えるほどのビームを撃ったのはマイナスだ。環境に優しくな」


「はーい。もう疲れた……」


 座り込んでしまう。また魔力を使い切ったな。


「温存して戦えっつったろうが」


「だってどばーっと出るし。止めるとしんどいのよ」


 蛇口みたいなもんかね。量が多いから、制御もできない。

 止めると負担がかかるのかも。もうちょい研究してみるか。


「ちょっと休憩するわ。任せたわよローズ」


「お任せを」


「ローズは脱ぐの禁止。魔法で戦え」


「神よ……なぜこのような試練を私に……」


「お前女神だろうが」


 出てきたスケルトンくんは赤い。ちょっと強くなっているようだ。

 しかも十体以上いる。


「さ、あれをどうする?」


「逃げないものに時間はかけません。聖なる光よ、邪悪なるものに鉄槌を……ホーリーブレイク!!」


 まばゆい閃光が、波紋のように世界へ広がり、敵を浄化していった。

 女神の光である。そうだね、一応女神だもんね。


「神聖魔法もできるのか。敵に合わせて魔法を変える。いい判断だ」


「私にとって魔法とは己の道そのもの。ぬかりはありません」


「だが光った一瞬だけ服を脱いだのはマイナスだ」


「なぜわかるのです?」


「スキルと慣れ。俺にスタングレネードや催涙ガスは一切通用しない。赤外線も見えるし、片目で閃光の中を、もう片方で暗闇の中を完璧に見通すこともできる」


 伊達に冒険の日々を送っちゃいなかった。この程度は容易い。

 何百回勇者だの英雄だの言われてきたと思ってやがる。


「脱衣までは遠いですね」


「脱ぐな脱ぐな」


「カレンは……加護はついたか?」


「いいえ。ふりかけだけです」


 答えながら高速移動で骨を砕きまくる。格闘特化してきてないかな。


「よし、ここから更に難易度を上げるぞ。お願いします」


 岩陰に隠れていてもらったゲストを紹介する。


「えーここで特別ゲストがいらっしゃってます。来月お前らが三人で救う世界から、魔王軍四天王で、ヴァンパイアロードのヴァンパさんでーす。よろしくお願いしまーす」


「よろしくおねがいしまーす!」


 三人の声が重なる。まだちょっと早いけれど、前哨戦としちゃいい案だと思う。


「半ば強引に連れてこられて何この仕打ち……」


 タキシードに黒マント。肌は灰色。目は赤くて牙がある。

 完全な吸血鬼だ。テンプレだな。わかりやすくてよし。


「まあまあいいじゃないですか。陽の光にあたっても無傷でいられるように、俺が体質改善してあげたでしょ?」


「それには本当に感謝しているが……どこなんだここは?」


「まあちょっとした再教育施設でして。ヴァンパさんとその部下に戦ってもらえないかと」


 体質改善を条件に、俺がわざわざ吸血城に出向いて連れてきた。


「いまさらヴァンパイアごときと戦ってどうしようってのよ?」


「女神と戦えるわけ?」


「女神? 先程スケルトンを消していたが」


「まあ落第女神ですよ。どうします? 戦ってもらえると実戦経験積めますし、こっちとしては助かりますが。そちらが死なないように気をつけますので」


 ここで首を縦に振って欲しい。そのために日光もにんにくも流水も平気にしてあげたんだし。


「先生、ここで倒せば楽なのでは?」


「駄目だ。四天王はできるだけ本来いるべき世界で倒して欲しい。だから手加減も練習しろ」


「猛スピードで侮辱されているわけだが、一応ヴァンパイアロードなんだよ?」


「俺もうそういう設定は見飽きました」


「君が一番失礼だよ!?」


 ちなみにヴァンパイアロードを五十人。原初の吸血鬼を三十人。

 キングヴァンパイアを二十八人。吸血鬼の親玉を百人くらい殺してきた。

 肩書は違えども、結局やることはどの世界も一緒だったよ。


「回復なら、そこに新鮮な血液の湧き出る、ちっちゃいオアシス作りましたんでどうぞ」


「君なんでもありかね!?」


「あ、ドリンクバー形式が良いですか? こんな感じで」


 よく考えたら、跪いてオアシスの水をすすらせるのは失礼だ。

 ぱぱっと分解、再構成。ドリンクバーにおいてある、コップ置いてちょっと押すやつに変えた。


「こんなんでどうです?」


「遠回しに馬鹿にされている気がするよ。君本当に凄いね」


「まあ天地創造くらいならいつでもできますので、なんか血液に合うおつまみとか出しましょうか?」


「いや結構。よし、この依頼受けよう!」


 やる気を出してくれたようでなにより。


「では一番手、究極の女神ローズです」


「ん? なんで服着てる?」


 ローブとブルマだ。なんか着ていることに違和感がある。


「その人は美しくありません。私の身体は、女性と先生に見せることに喜びを感じるのであって、対象が誰でもいいわけではありません。最近気づきました」


「変態のレベルが上っただけじゃねえのかそれ」


「美しくないと言われたんだが……」


「ファイナル着衣ビーム!」


 ローズの服が光り輝きビームを放つ。


「服は時として凶器となります」


「意味がわからんが無駄だよ。このマントと……光を無効化する体質改善により、光魔法だけでは倒せない」


 マントが伸びて全身を包んでいる。光にやられちゃ訓練にならないしな。


「言い忘れたがチーム戦だ。全員で行け」


「いいの?」


「ああ、こちらも分身しよう」


 影とコウモリの大群が合わさり、ヴァンパさんが三人に増えた。


「古典的な……まあ俺は結構好きですがね」


「だろう? 男のロマンというか、吸血鬼とはこうあるべきだと思っている」


 無駄に意見が合ってしまった。こういうテンプレ能力で強い人は結構好き。


「不意打ち女神レーザー!」


 真ん中のヴァンパさんにレーザーが突き刺さる。

 相変わらずきたねえなサファイアよ。


「残念。その個体は外れだよ、お嬢さん」


 その通り。真ん中はハズレ。さて本体に気づけるかな。

 ヒントは出さずに見守ろう。


「サファイア、不意打ちで外すとはどういうことですか……」


「ちょーっと外しただけよ。ただそれだけ。次であてるわ!」


 サファイアの両手に光が宿る。魔力の凝縮スピードが早くなっているな。

 やはりこいつは実践で磨かれるタイプか。


「ふっ、女神のビームは一撃必殺!」


「二撃目だぞ」


「うっさい! 女神ビイイイィィィム! ダブル!!」


 左右のヴァンパさんを同時に消す作戦だな。

 シンプルでいいじゃないか。


「だが不正解だよ」


 両方消えたはずなのに、上空からヴァンパさんが降りてくる。


「うっそ!? どういうことよ!」


「今度はこちらからいこう。ブラッドウェイブ!!」


 赤い、血の混じった魔力の波が三人を襲う。


「障壁展開」


 ローズの魔法障壁でなんとかガードするも、耐えきれずに砕けてしまう。


「相打ちですか……少々危険な吸血鬼ですね」


「安全安心な吸血鬼など、つまらないものさ」


「……そこです!!」


 本日最速で背後から急襲に成功したカレン。

 だがその回し蹴りは、ヴァンパさんの身体がコウモリの群れに戻ったことで、回避されてしまう。


「おお、怖い怖い。気をつけなければね」


 そしてまた三体に増える。さあどうする駄女神。


「どうすんのあれ?」


「一気に三体消せばいいのでは?」


「また上から来る未来が見えます」


「ちょっとは頭使うんだぞー」


「うっさい! 今使ってる途中よ!」


 さーて、いつ倒し方に気付くかな。

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