第8話 プールでも駄女神だよ

「今日はプールで水泳の授業……らしいぞ」


 そんなわけで施設内の屋内プールにいる。

 やたら豪華で設備が整っているのは言うまでもない。


「いやなんでプール? 泳げるんだろ?」


 全員のデータは目を通した。泳げるはず。

 まあ競技用と戦闘用の泳ぎは違う。教えるならそこだな。


「暑いからよ! 今日は昼から暑くなるの!」


 小脇になんかイルカの浮き輪を抱え、ビキニタイプのサファイア。


「おいなんだそれ」


「イルカよ! 浮かべたり乗ったりできるわ!」


 完全にレジャー気分だなこいつ。目が輝いているのが微妙にいらっとする。


「暑いのは事実です。早く入りましょう」


「ほう、ちゃんと着ているか」


 ローズは学園指定のスクール水着だ。似合う体型だな。

 着ているということに感動する。確実に全裸だと思っていたからだ。


「どうせ脱いでも着せるのでしょう?」


「普段から着てろよ。そうすりゃ着せる手間が省ける」


「はは……お疲れ様です先生」


 カレンはパレオとかそっち系。あまり女性の水着に詳しくない。

 冒険に不要な知識だったしな。普通。問題なし。


「で、授業どうすんだ? 聞かされてないぞ」


「自由です。女神神様からのメッセージで、暑いからプール入ったら気持ちよかった! だそうです」


「感想!?」


「服を脱ぐのも自由」


「そこは着てろ。とりあえず授業っぽく一回泳ぐか」


 授業プランを考えている間に、もうコースに陣取っているサファイア。

 自分の隣のコースに浮き輪のイルカを設置している。


「何やってんだお前」


「わたしのライバルはこのイルカよ! 魔力で動くわ!」


 アホに普通の会話を求めた俺が悪かったのだろうか。

 明らかに魔力入れすぎ。加減を知らんな。


「はっはー! イルカにはできない奥義、フライングスタアアアァァト!!」


「せこいなおい!?」


 フライングかましたサファイアを、猛スピードで追いかけるイルカ。


「うわあああぁぁぁん! 浮き輪に負けたああぁぁぁ!」


「お前は本当にポンコツだな」


 そして負けやがった。くそみっともない。駄女神であることを再認識した。

 ってかイルカ速いな。どんだけ魔力ぶっこんだんだよ。


「女神の恥さらしですね。私がお手本を見せましょう」


 次に浮き輪イルカと戦うのはローズになった。

 いつものすまし顔だが、目に闘志が……こんなところでやる気出すなや。


「ローズちゃんは水着というハンデがありますが、先生はどう見ます?」


「脱がないと身体能力が上がらないからな。そこをどう克服するかだ」


「いきますよ」


 一瞬で水着を脱ぎ捨てるローズ。

 わかってたけどね。脱ぐの簡単なのか、スクール水着って。


「おおっと、ローズ選手いきなりスクール水着を脱いだ!」


「あーやっぱり脱いだか」


 だが脱いだ分だけ速い。水の抵抗が少ないのかね。

 出だしはローズ有利だ。泳ぎに乱れがなく、正確である。


「しかも水のおかげで裸体が見えないから、恥ずかしくもありませんね」


「いい勝負してやがるし、これはどうなるか期待しよう」


「ふっ、やりますねイルカ。浮き輪の身で、この私と張り合うとは」


 ギリギリのいい勝負をし、イルカの鼻と、ローズの手がほぼ同時につく。


「さあ、写真判定にもつれこみました」


 わずかに、ほんのわずかにイルカの方が先であった。


「ローズ選手、鼻差の二着ううぅぅ!」


「バカな……こんなことが……」


 天を仰ぐローズ。プールから上がっても、なんだか背中に哀愁が漂っている。


「はぁ……これはショックですね」


 そしてスクール水着を着直している。


「自分から着ただと……?」


「相当ショックだったんでしょうねえ」


「そこまでか……」


 あとでちょっと励ましておこう。

 イルカに負けた程度で、あそこまでへこむかね普通。


「最後はわたくしですね! 頑張ります!」


 そして横でストレッチを始めるカレン。

 やる気に水を差すようで、大変申し訳無いけれど、聞いておきたいことがある。


「今更だけどさ」


「はい?」


「なんでイルカと勝負してんの?」


「…………なんででしたっけ?」


 アホらしくなったので、普通にプールに入ることにした。


「先生、一緒に流れるプール行きましょう!」


「学園のプールに必要かこれ?」


「あっちにジャグジー風呂があるから行ってくるわね!」


「完全に風呂って言ったな!?」


「ではしばしサウナと洒落込みます」


「せめてプールに行け!」


 全員で浮き輪に乗って、流れるプールをどんぶらこ。

 しばしゆったりとした時間が流れる。


「落ち着いた時間は素晴らしいな」


「平和ですねえ」


「眠くなります」


「イルカには、いずれリベンジするわよ」


 まだ根に持っとんのかい。サファイアは魔力だけはあるからな。

 その力を加減もせずにぶっこめばそうなるさ。


「次は海に行きましょうね」


「いいですね。海の家の焼きそばは興味があります」


「誰が焼くんだよそれ」


「焼きそば女神とかいるでしょ」


「なんでも女神つけりゃ許されると思いやがって」


「ふりかけ駄女神がいる時点で、最早なんでもありとみるべきでしょう」


「まあ料理関係の女神もいたからなあ」


 なんとなく、今までの世界を思い出す。昔を懐かしむなんて、今まであまりなかったな。思い浮かぶは女神との冒険の日々。


「料理関係?」


「料理バトルが大ブームの世界とかあるからな。和食作ったらすげえ好評だったぞ」


 唐揚げとか、出汁巻玉子とかな。和菓子も作ってやったっけ。

 最後はスタジアムで、粉からうどんを作ったな。


「へえ~いいわね。美味しいもの食べ放題じゃない」


「作るのは俺と女神だよ。食べるのは審査員」


「なんだつまんないの」


 露骨にがっかりしやがって。そこそこ救うの大変な世界だったんだぞ。


「次の料理教室は焼きそばにするか」


「具とそば焼くだけでしょ?」


「いいんだよ。シンプルなので経験積め」


 言っていたら腹が減ったな。誰かの腹が鳴る。

 俺が鳴る前に鳴ってくれたことに、心の中で礼を言おう。


「うっし、そろそろ授業終わり。昼飯行くぞ。着替えてこい」


「はーい!」


 元気にかけていく女神達。

 昼飯は焼きそばパンだな。焼きそばそのものは海までおあずけだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます