インタビューでも駄女神だよ
美由希による取材は続く。マイクとカメラもバッチリ用意されていた。
「センセーはどうして、この施設で教師をやることになったのデスか?」
「女神女王にはめられた。最初は何も知らされずに、突然教師やってくれだからな。そりゃ驚いたさ」
「ふむふむ……でもオーケーしたわけデスよね。なにがきっかけだったのデス?」
「一年でいいって言われたし、駄女神が増えすぎているからな。このまま別の世界に言っても、また駄女神を一から教育して冒険しなきゃならん。それはめんどい」
これが手間なのよ。手間かけていいのは料理と趣味くらいなもんだ。
「手のかかる子ほど可愛いってのはな、当事者じゃないから言えるのさ。もしくは本当に手のかかるやつを知らない」
「ちなみにデスが、ワタシはどんなもんでした?」
「お前はマシだったよ。素直だったし、実力不足はまあ……仕方ないだろ。頑張っていた方だよ」
「褒められましたー!」
「うるさい。次の質問に行け」
他の駄女神が飽きて寝始めている。手早く済ませないと、スキを見て帰りそう。
「生徒さんはどんな感じデスか?」
「駄目だな」
「直球デスね」
「それでもちょっと楽しくなってきたよ」
意外と悪くない。大変だが、生活は保証されているし、結構楽しいのさ。
「いいデスねー。ワタシもセンセーと一緒にいたいデス」
「いたって意味ないだろ。お前はもう立派な女神だ。うるさいけどな」
「なんでデスかこの複雑な気持ちは。褒められつつけなされて、しかも現状脈なしを告げられたのデス」
「どんまいですよ美由希さん」
女神ってこんなんじゃなかったはずなのに。
俺の知らないところで変わったのかね。
「では気を取り直して、教師として、抱負とメッセージをお願いしマス!」
「えーそうだな……一年限りだが、やると言ったからにはやってみせるさ。幸いなことに三人だけだ。問題児だが、素質はあるし。期待に応えられるよう頑張るよ」
「はい、ありがとうございまシタ! では、センセーと行動をともにした女神のみんなにもメッセージを!」
「過去に一緒だった女神にだよな?」
「デスデス」
「駄女神だったやつ。お前らはもう立派な女神だ。胸を張れ。最初から優秀な女神だった人。色々と世話になった。おかげでここまで強くなれたよ。これからも俺を助けてくれた、よい女神のままでいてくれ」
「はーい、ありがとうございましたー! それではそっちの駄女神ちゃんを起こしましょう」
全員がっつり寝てやがる。サファイアはベッドを召喚して、本格的に寝ていた。
「おら起きろ。取材来てんのに寝るな」
「なによもう……そっちの話が長いのよ」
「だからってベッド出すなや」
「枕が変わると眠れないのよ」
「せめて枕だけ出せ」
面倒だが三人とも起こす。ローズが寝る時は全裸ではなくパジャマだと知った。
「ようやく終わりましたか。随分時間がかかりましたね」
「なんで教室でパジャマなんだよお前は」
「寝る時はパジャマですから」
「寝るの前提はやめろ」
カレンは普通に自分の机で寝ていた。
俺のインタビュー誰も聞いてねえじゃねえか。
「はいはーい、インタビュー続けるデスよー。まずサファイアさん!」
「わたしに目をつけるとはやるじゃない! なんでも聞きなさい!」
ベッドに腰掛けて、一応話す体勢にはなっている。ほっとくと寝そうだな。
「女神女王様の娘さんと聞いているデス」
「その通り。つまりエリートよエリート。将来が約束されている存在なの」
「アホのエリートだな」
「うっさい! あれよ、潜在能力が凄いアレなのよ!」
なぜ女神はアホほど能力が高いのか。心のリミッターがないからかね。
「抱負でも聞いておくデス」
「なんで適当なのよ! もうじき女神界の伝説になるから覚悟してなさい!」
「ついでにセンセーへのコメントもどうぞ」
「……なんで? まあいいわ。教え方は悪くないんじゃない? 押し付けがましいやつよりマシね」
「実際に強くなっていると?」
「なってるわね。そこは認めてあげるわ。これからも精進するように!」
もうどっちが教師かわからんな。新米教師としちゃあ上等だと思うよ。
「次、ローズさん」
「裸体は芸術であり、露出趣味とは違う。それだけははっきりと伝えておきます」
「一番いらねえ情報だな」
「性的に興奮するためではないと?」
「芸術として見て欲しいですね。ただ性欲でしか裸体を見ることができないものは、発想が貧困です」
なにを熱く語っていらっしゃるのよこいつは。
なんのインタビューこれ。
「センセーはなんと?」
「ブルマを穿けと言われました」
「センセーはブルマがお好き、と」
「違うわボケ! 俺がブルマ好きの変態みたいだろうが!」
「逆に嫌いなのデスか?」
「好きでも嫌いでもない。運動に適しているから着てるんじゃねえのか。そもそも俺が指定したわけじゃない」
このままだとブルマを生徒に履かせた、淫行教師として記事になる。
なんとしても阻止しよう。
「ではローズさんに抱負とかお聞きするデス。あとセンセーへのコメントもお願いします」
「駄女神の称号返還も近いでしょう。気兼ねなく服を脱げる日はすぐそこです。先生は……服を着せようとする以外はよい教師だと思います。期待していますよ」
「はいありがとうございましたー」
脱ぐ間はずっと駄女神な気がする……まあいいや。
「はい、次はカレンさん。カレンさんはセンセーと一緒にいるのは二度目デスね」
「はい、奇妙な縁ですが」
「正直、一部の女神から嫉妬が半端ないデスよ」
「あはは……世界を救った流れで来ましたからね。でも、ちゃんと世界は平和になりましたよ」
「でも加護がなくなっちゃいましたね」
「はい。お荷物にならないように、また立派な女神になれるように頑張りたいです」
カレンのインタビューは平和だ。ふりかけ以外はまともだからな。
「なんか真面目デスね。もうちょっとぶっ飛んだキャラが欲しいデス」
「えぇ……難しいですね」
「センセーのことはどう思っていますか?」
「尊敬しています。わたくしがここまで強くなれたのも、世界を救えたのも、全ては先生のおかげです」
「同意しますが普通デスねー」
ちょっとショックを受けているっぽいカレン。頭の上にガーンとか文字が出そう。
いや普通でいいよ。お前までアホになったら、俺はどうすりゃいいのさ。
「取材が終わってしまいました……どうすればいいのデス……」
「いや帰れよ」
「まだセンセーとお話したいデース! ワタシがどれだけ待っていたか知らないのデス。だから適当に帰れとか言っちゃうのデス!」
「どれだけもクソも長くて十年ちょっと前だろ?」
「何十年も前デース! 女神界とあっちの時間の流れは違うのデス!!」
「ほー」
「なんっで生返事デスか!?」
そこまでの思い入れがある理由がわからん。別に普通に冒険して、宇宙の平和を守っただけ。繰り返される日常のひとコマである。
「ほらもう授業やるから帰れって」
「授業の風景も取材を……」
美由希の足元から帰還魔法陣が出る。
分析完了。一定時間で無理やり帰還させるものだな。
「えええぇぇぇ!?」
「よかったな。帰る手間が省けたぞ」
「全然良くないデース! ううぅぅ……絶対に帰ってこないことを見越して召喚魔法を……しくじったデス」
「まあなんだ。また取材許可もらってくるんだな」
「絶対に、絶対にまた来るデスよ! センセーもちゃんと街に来るのデス! 絶対デスよー!!」
消えていく最後の瞬間までうるさかった。
「最後までうるさかったわね、あの子」
「もうちょい大人しかったはずなんだけどな」
「これでゆっくり眠れます」
「授業があるっつってんだろ」
「ちゃんと街に行かないとエスカレートしますよ」
「えぇ……めっちゃうざい」
一回だけでも行く必要があるな。授業の一環としてやるか。
こいつら連れて行けば、そう騒ぎにもならないだろう。
俺は渋々だが街に行くことを決めた…………いつになるかは知らんけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます