第13話 インタビューでも駄女神だよ

 美由希による取材は続く。マイクとカメラもバッチリ用意されていた。


「センセーはどうして、この施設で教師をやることになったのデスか?」


「女神女王にはめられた。最初は何も知らされずに、突然教師やってくれだからな。そりゃ驚いたさ」


「ふむふむ……でもオーケーしたわけデスよね。なにがきっかけだったのデス?」


「一年でいいって言われたし、駄女神が増えすぎているからな。このまま別の世界に言っても、また駄女神を一から教育して冒険しなきゃならん。それはめんどい」


 これが手間なのよ。手間かけていいのは料理と趣味くらいなもんだ。


「手のかかる子ほど可愛いってのはな、当事者じゃないから言えるのさ。もしくは本当に手のかかるやつを知らない」


「ちなみにデスが、ワタシはどんなもんでした?」


「お前はマシだったよ。素直だったし、実力不足はまあ……仕方ないだろ。頑張っていた方だよ」


「褒められましたー!」


「うるさい。次の質問に行け」


 他の駄女神が飽きて寝始めている。手早く済ませないと、スキを見て帰りそう。


「生徒さんはどんな感じデスか?」


「駄目だな」


「直球デスね」


「それでもちょっと楽しくなってきたよ」


 意外と悪くない。大変だが、生活は保証されているし、結構楽しいのさ。


「いいデスねー。ワタシもセンセーと一緒にいたいデス」


「いたって意味ないだろ。お前はもう立派な女神だ。うるさいけどな」


「なんでデスかこの複雑な気持ちは。褒められつつけなされて、しかも現状脈なしを告げられたのデス」


「どんまいですよ美由希さん」


 女神ってこんなんじゃなかったはずなのに。

 俺の知らないところで変わったのかね。


「では気を取り直して、教師として、抱負とメッセージをお願いしマス!」


「えーそうだな……一年限りだが、やると言ったからにはやってみせるさ。幸いなことに三人だけだ。問題児だが、素質はあるし。期待に応えられるよう頑張るよ」


「はい、ありがとうございまシタ! では、センセーと行動をともにした女神のみんなにもメッセージを!」


「過去に一緒だった女神にだよな?」


「デスデス」


「駄女神だったやつ。お前らはもう立派な女神だ。胸を張れ。最初から優秀な女神だった人。色々と世話になった。おかげでここまで強くなれたよ。これからも俺を助けてくれた、よい女神のままでいてくれ」


「はーい、ありがとうございましたー! それではそっちの駄女神ちゃんを起こしましょう」


 全員がっつり寝てやがる。サファイアはベッドを召喚して、本格的に寝ていた。


「おら起きろ。取材来てんのに寝るな」


「なによもう……そっちの話が長いのよ」


「だからってベッド出すなや」


「枕が変わると眠れないのよ」


「せめて枕だけ出せ」


 面倒だが三人とも起こす。ローズが寝る時は全裸ではなくパジャマだと知った。


「ようやく終わりましたか。随分時間がかかりましたね」


「なんで教室でパジャマなんだよお前は」


「寝る時はパジャマですから」


「寝るの前提はやめろ」


 カレンは普通に自分の机で寝ていた。

 俺のインタビュー誰も聞いてねえじゃねえか。


「はいはーい、インタビュー続けるデスよー。まずサファイアさん!」


「わたしに目をつけるとはやるじゃない! なんでも聞きなさい!」


 ベッドに腰掛けて、一応話す体勢にはなっている。ほっとくと寝そうだな。


「女神女王様の娘さんと聞いているデス」


「その通り。つまりエリートよエリート。将来が約束されている存在なの」


「アホのエリートだな」


「うっさい! あれよ、潜在能力が凄いアレなのよ!」


 なぜ女神はアホほど能力が高いのか。心のリミッターがないからかね。


「抱負でも聞いておくデス」


「なんで適当なのよ! もうじき女神界の伝説になるから覚悟してなさい!」


「ついでにセンセーへのコメントもどうぞ」


「……なんで? まあいいわ。教え方は悪くないんじゃない? 押し付けがましいやつよりマシね」


「実際に強くなっていると?」


「なってるわね。そこは認めてあげるわ。これからも精進するように!」


 もうどっちが教師かわからんな。新米教師としちゃあ上等だと思うよ。


「次、ローズさん」


「裸体は芸術であり、露出趣味とは違う。それだけははっきりと伝えておきます」


「一番いらねえ情報だな」


「性的に興奮するためではないと?」


「芸術として見て欲しいですね。ただ性欲でしか裸体を見ることができないものは、発想が貧困です」


 なにを熱く語っていらっしゃるのよこいつは。

 なんのインタビューこれ。


「センセーはなんと?」


「ブルマを穿けと言われました」


「センセーはブルマがお好き、と」


「違うわボケ! 俺がブルマ好きの変態みたいだろうが!」


「逆に嫌いなのデスか?」


「好きでも嫌いでもない。運動に適しているから着てるんじゃねえのか。そもそも俺が指定したわけじゃない」


 このままだとブルマを生徒に履かせた、淫行教師として記事になる。

 なんとしても阻止しよう。


「ではローズさんに抱負とかお聞きするデス。あとセンセーへのコメントもお願いします」


「駄女神の称号返還も近いでしょう。気兼ねなく服を脱げる日はすぐそこです。先生は……服を着せようとする以外はよい教師だと思います。期待していますよ」


「はいありがとうございましたー」


 脱ぐ間はずっと駄女神な気がする……まあいいや。


「はい、次はカレンさん。カレンさんはセンセーと一緒にいるのは二度目デスね」


「はい、奇妙な縁ですが」


「正直、一部の女神から嫉妬が半端ないデスよ」


「あはは……世界を救った流れで来ましたからね。でも、ちゃんと世界は平和になりましたよ」


「でも加護がなくなっちゃいましたね」


「はい。お荷物にならないように、また立派な女神になれるように頑張りたいです」


 カレンのインタビューは平和だ。ふりかけ以外はまともだからな。


「なんか真面目デスね。もうちょっとぶっ飛んだキャラが欲しいデス」


「えぇ……難しいですね」


「センセーのことはどう思っていますか?」


「尊敬しています。わたくしがここまで強くなれたのも、世界を救えたのも、全ては先生のおかげです」


「同意しますが普通デスねー」


 ちょっとショックを受けているっぽいカレン。頭の上にガーンとか文字が出そう。

 いや普通でいいよ。お前までアホになったら、俺はどうすりゃいいのさ。


「取材が終わってしまいました……どうすればいいのデス……」


「いや帰れよ」


「まだセンセーとお話したいデース! ワタシがどれだけ待っていたか知らないのデス。だから適当に帰れとか言っちゃうのデス!」


「どれだけもクソも長くて十年ちょっと前だろ?」


「何十年も前デース! 女神界とあっちの時間の流れは違うのデス!!」


「ほー」


「なんっで生返事デスか!?」


 そこまでの思い入れがある理由がわからん。別に普通に冒険して、宇宙の平和を守っただけ。繰り返される日常のひとコマである。


「ほらもう授業やるから帰れって」


「授業の風景も取材を……」


 美由希の足元から帰還魔法陣が出る。

 分析完了。一定時間で無理やり帰還させるものだな。


「えええぇぇぇ!?」


「よかったな。帰る手間が省けたぞ」


「全然良くないデース! ううぅぅ……絶対に帰ってこないことを見越して召喚魔法を……しくじったデス」


「まあなんだ。また取材許可もらってくるんだな」


「絶対に、絶対にまた来るデスよ! センセーもちゃんと街に来るのデス! 絶対デスよー!!」


 消えていく最後の瞬間までうるさかった。


「最後までうるさかったわね、あの子」


「もうちょい大人しかったはずなんだけどな」


「これでゆっくり眠れます」


「授業があるっつってんだろ」


「ちゃんと街に行かないとエスカレートしますよ」


「えぇ……めっちゃうざい」


 一回だけでも行く必要があるな。授業の一環としてやるか。

 こいつら連れて行けば、そう騒ぎにもならないだろう。

 俺は渋々だが街に行くことを決めた…………いつになるかは知らんけど。

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