第5話 魔法とご飯と甘え

もう歩き始めてかれこれ二時間ぐらいがたった。

だが歩いても歩いても見える景色に宿はない

「宿、まだ着かないの?」


俺はユキにそう聞く

「何?エイジもう歩き疲れたの?」

と言って俺を微笑しながら馬鹿にする


「ちげーよ、もう結構歩いたのに全然宿がないから聞いただけだよ」

と、言って反撃する


「えー?エイジ疲れたんじゃないのぉ?」

と、また馬鹿にしてくる


「お前なぁ…あ!そういえばユキって魔法使いだよねぇ?あれれぇ?テレポートの一つも使えないのかなぁ?」

と、馬鹿にしつつ、あわよくば楽できる挑発をしてみる。


そうすると

「なっ!?使えないとでも思ってんの?!」

「うん。思ってるよ」

「もー!使えるからぁ!!」


そう言うとユキは手のひらを地面に向ける、そうすると俺とユキの下に大きな青色の魔方陣が現れた

「今回だけだからね!…………《テレポート!!》」


ユキがそう言うと一瞬視界が白くなり、 …気づけば木造の建物の前にいた

「おー!すげー!」

思わず俺は声をあげる。


そうするとユキが

「ほら!使えたでしょ!さっき散々馬鹿にしてぇ!ほら!言うことは?」

《元はと言えばユキから喧嘩売ってきたのになぁ、まぁ!魔法使ってもらったし謝っとくか》

「あーはいはい。ごめんな、ユキ」

と、軽く謝っておいた


そうするとユキは笑顔で返事を返す

「よろしい!では部屋を借りに行こうではないかぁ!」

ユキは調子良さそうに建物へ入って行く

「ちょっ!待てよ!」

俺も中に入った


「おぉ!広いな!これが宿って、大容量かよ」

そんな事を呟いているとユキが受付から俺を呼ぶ

「おーい!エイジ!早くー!」

「あーはいはい!」


そう言ってすぐに受付に向かう

「えっと、私とこの人なので、二部屋お願いします!」


ユキがそう言うと受付のお兄さんが二部屋分の鍵を渡してくれた

「じゃ!荷物置いたら食堂集合な!」

「うん!」

ユキは反応を返すと颯爽と部屋に走って行った



部屋にてーーー

「おぉ!1人でこの大きさは十分すぎるな!」


間取り的には扉を開けて真っ直ぐ行った所にちょっとした窓、その横にはシングルベッドがある。シャワールームもあり、洗面台もあり、トイレもある。照明はスタンドが一つと上に大きな照明があった。


「完璧すぎるなぁ!これで1000円は安いな!」


そんな事を言ってるうちに食堂に行く事を思い出す

「あ!やべっ!急がないとユキが怒る!」


部屋に鍵を閉めて食堂に大急ぎで向かった




食堂にてーーー

「って、急いで来たのにいないじゃねぇか!」

思わず俺はツッコミを入れてしまった

「エイジー!こっちこっち!」


呼ばれた方向を振り向くとユキはもうテーブルに着いていた

「はやっ!」


俺は急いでテーブルに着く


「早すぎるだろ!どんだけ食いたいんだよ!」

「だって、今日お昼食べてないじゃーん!お腹もへるよぉ」

「まぁそうかもだが」


そんな話をしているとお兄さんが料理を運んでくる

「ユキ、もう料理頼んだの?」

「ん?当たり前じゃん!お腹減ったんだもん!」

《早すぎる、どんだけ飯食いたいんだよ!》と心の中でツッコむ

「おぉ!エイジ!このチキンの唐揚げ美味しそうだね!」


ユキがそういう

「確かに…これは美味そうだ!」

日本の鳥の唐揚げより一回り大きく衣は綺麗な揚げ色で凄く美味しそうだ

「あれ?ご飯とかはないの?」


俺がユキに聞く

「いらないよ!だってこれを食べたら大体の人は何も食べれないよ」

「へぇ、じゃあご飯は要らないな」

「そろそろ食べよっか!」

ユキがそう言う


そして手を合わせると2人で元気よく挨拶をする

『いただきまーす!』

サクッ…


「ん?!」

《なんだこれは、外はサクッと中はジューシー、口の中で溢れる肉汁、硬すぎず柔らかすぎない絶妙な揚げ具合、これは、最高だ!!》


そんな事を俺が考えているとユキが

「おーいしー!!エイジ!絶品だね!これ!」

「あぁ!最高だ!」


食べ終えると俺たちはいろいろな満足感にあふれた

「うはぁ!美味かった!ユキはどうだ?」

「幸せぇ♪美味しすぎだよぉ〜!」


俺たちの大好物となった





部屋にてーーー


俺はシャワーを浴び終わりベッドの上でゴロゴロしていた


「はぁ!今日は1日頑張った!転移1日目から仲間出来るし!美味しい物食べれるし!最高だね!」

そんな事を一人で言っていると部屋のドアがノックされる

…コンコン…

《誰だ?こんな時間にもう9時だぞ?》


そう思いながらドアをあける

「はぁい?…ってユキ?!」


ユキが枕を抱きしめてしかも涙目でドアの前に立っていた

「え?!まず中に入れ」

そう言うとユキは小さく頷いて中に入った

「どうしたんだ?」


俺は優しく話を聞く

「グスン…私ね、知らないところで一人で寝るの怖くて…グスン」


《えぇー、マジかよ?!この歳でそれ言うか?!》

そう思ったが可哀想なので仕方なく

「一緒に寝てやろうか?」

と聞いた


「いいの?エイジ優しいね、ありがとう」

「いいよいいよ、てか今までどうやって寝てたの?」

と、ユキに質問すると


「自分に眠る魔法かけて寝てた…」

《えぇ?!魔法ないと寝れないの?!》


「エイジが一緒に寝てくれるって言ってくれなかったら今日も魔法で寝てた…」

「えぇっと、まず、元気だそうぜ、な?」

「うん…」


そう言うとユキは俺に抱きついてくる

「えぇ?!どうした?!」


そう聞くとユキが話を始める

「…ずっと、寂しかった、私はどこのパーティーにも入れてもらえず、ずっと一人で戦ってきた。

理由は分かってた、それはね私が普通じゃなかったから…私はレベル1の時から魔法使いだったの…何故かって言うとね私が使ってるカード、これ実は引き継いだ物なんだ」


「引き継いだ?」

「うん、カードは親族からなら引き継ぐ事が出来るんだ、でもレベルは1に戻されるの、あと少しを残してあとは全部スキルも消えちゃう…この方法を知っている人が多くなくて、王に選ばれたやつだとか言われて仲間に入れてもらえなかったの」


「なるほどな」

《ちなみに俺はギルドマスターに選ばれたんですけどね!!》


「でもギルドでエイジを見かけて、レベル1でソードマスターっていうからこの人ならって思って服屋で声をかけたの、そしたら仲間になってくれって言われたからもう嬉しくて、あの時はごめんね」

「いや、いいさ、辛かったんだなとはあの時も感じてたし」


「ははっ…分かっちゃってたか」

「まぁな」



「エイジ…」


「ん?」


「少しこのままでいたい」

「ん、まぁいいけど」


《やべぇ!このシチュエーションはやべー!変な気を起こすなよ、俺!》


「あ、あのユキ?…ユキさぁーん」

「…エイジ…」

か細い声が俺を呼ぶ

「はいぃ!」


俺は思わず変な声を出してしまった

「仲間になってくれてありがとう、これから一緒に頑張ろうね」

「お、おう」


ユキはそう言うと抱きついていた手を離した

「エイジ、寝て」


そんな事をユキが言うので逆らえずベッドに横になった

「腕、伸ばして」

「…はい」


「隣、入っていい?」

「えっ?!狭いぞ?」

「いい。」


そう言ってユキは俺の腕に頭を乗せた

「エイジ、腕痛くない?」

「…大丈夫だけど」


「そっか、じゃあおやすみ」

「え?!あ、うん。おやすみ」





知られざるユキの秘密

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