ヒトとフレンズのカコとミライ
猪月
ヒトとフレンズのカコとミライ
動物が好きだ。
だが、動物園には微妙な感情がある。
動物好きが高じて進んだ研究者への道。それが、子供の頃から何度も通った、様々な動物園に感じていた、少しずつ積み重なっていく、不気味さとでも言うべき違和感を次第に浮き彫りにして行った。
知識が無ければ気付かなかった、動物たちのストレス異常行動。動物達にとっての幸福とは。ヒトにとって動物園のあるべきカタチとは――。
気付けば、ジャパリパークの研究員。プレオープンまでにはもっとちゃんとした肩書きがつくそうだ。そう、ジャパリパーク。
前身の新進的な動物園計画段階では、動物たちが、自由に、自然に溶け込んだ、それでいて緻密に管理・運営される、新しい形のサファリパークで動物公園。理想的な
だが、企画段階で止まっていた計画を動かし、膨大な予算を通した主要因であるところのサンドスターによって、パークはそれ自体の在り方を大きく変えたのだった。
「はかせー、こんにちはー」
透き通った日差し、気持ちよい風が吹くサバンナ
視察巡回する私に明るい声がかけらける。
「すごいね、これ。なんなの。とおくからでも良く見えたよ」
車を物珍しそうにぺしぺしと撫でまわす彼女。
「パーク内を便利に移動できる乗り物、かな。」
「へー、のりもの。。わたしも乗れる?」
「まだ一人くらいなら……プレオープン時には後ろに客車車輌をつけて、バスみたいにして一度にたくさん乗れるようになる予定なんだ」
「ばす?」
「あぁ、それは出来てからのお楽しみかな。 今日はちょっと向こうの地方まで行こうと思ってるんだけど、一緒に来るかい?」
「どうしようかなー。オヤツある?」
「いつものジャパリまんなら」
「いくいくー!」
ザッと、
「しゅっぱつしんこー!」
「おい、そこは乗るところじゃ……まぁ、いいか。ふふふ」
ゆっくりと走り始めると、楽しそうな声を上げる彼女。その頭の上には車の上にあるのとよく似た耳がひょこひょこと動いていた。
フレンズ。
サンドスターがもたらしたそれが、パークの、いや私の世界の在り様を変えてしまった。
愛らしい少女の姿をしていながら、元になった動物の特徴を備えた、動物と人との境界を超えた存在。それは、自然の摂理をも超えて、生態系の保全への新しいカタチを示した。
絶滅危惧種、いや、既に絶滅してしまった種さえも蘇らせる魔法。
もっと知りたい。確かめたい。もう何も失われる事がないように。
そんなことを考えていたら、気がつけば最初の目的地。
水源へ行く手前、草地の入口で車を止めると、屋根の上に居た彼女も、よっと飛び降りる。
「ここがオアシスかー ここだけ、さばんなみたいだねー」
「奥はもっと緑が多くて、樹もたくさん生えてるよ」
「そうなんだ。楽しみー」
楽しそうに跳ねながら歩く彼女と一緒に進んで行くと、キラキラと輝く池が見えてきた。
水辺で整備工事をしている作業員に混じって、
後ろには見慣れないフレンズが。
「あっ、
「こら、まてー!」
「なんだ。お前、びしょ濡れじゃないか。何やって」「えへへー、今、フレンズさん達が水浴びしててですね。一緒に遊んで」「つーかまーえた!!」
ふと、隣を見ると、うずうずしてる笑顔と目が合った。
「行こう!はかせ」
「博士、博士もこちらへどうぞ! 今日はとっても良いお天気ですし」
ああ、本当に、今日は良い天気だ。
「早くー、はーかせー!」
「ああ、今行く。ミライ」
フレンズと手をつないで、もう片方の手を大きくぶんぶん振る彼女の後ろ、水場に集まるたくさんのフレンズ達が見えてくる。
フレンズとヒト、サンドスターとパーク、それぞれ在り方。
希望はきっとここにある。
これからの道は、きっと彼女達が
明るい、未来を。
ヒトとフレンズのカコとミライ 猪月 @Ituki_
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