第3話 そら大学生だもん 授業くらいあるよ

ある日、日本文化学の授業に参加しようとしたら見知った顔がいた。

「やあ、新井君じゃないか。君も日本文化学科だったんだね!!」

イケメンの紅白君であった。どうやら彼も僕と同じ、文学部日本文化学科な様だ。

日本文化学は日本文化学科の人が必ず受けなければいけない必修科目且つその学科の人しか受けられないのである。

「あれ?紅白君1回目の授業の時いたっけ?」

「いやー、第1回の授業の時熱を出してしまってね。休ませてもらったんだよ」

「そうなんだ、じゃあ一緒に座らない?」

僕はまだ部活の人間しか知り合いがいないので1人で授業を受ける事が多かった。

「良いよ!!というより僕からお願いしたいくらいだよ!!」

紅白君は顔だけじゃなく中身もイケているようだ。

「そしたら1番後ろに座ろうよ。」

「いいよ!!」

そう言うと僕達は一番後の扉に一番近い席へと座った。

「紅白君は知らないかもしれないけどこの先生の授業楽らしいよ」

「え?そうなの?どんな風に楽なんだい」

「部長も日本文化学科だから知ってるみたいなんだけど、まずこの先生歳とってるからか授業中よく寝ちゃうんだ」

紅白君は僕の方をじっと見て話を聞いているので、そのまま僕は説明を続けた。

「それで授業中は生徒が話してても携帯触っても寝てても何も言わないんだ」

「へー、そうなんだ」

「しかも学期末テストも感想書くだけだから出席だけ足りてればどうにかなるらしいよ」

「そ、それはなかなかだね……」

紅白君はちょっと引いているようだ。真面目そうな性格だしちゃんと授業受けたいのかもしれない。

「真面目に受けようにも先生が何言ってるか時々分からないし、寝るし大人しくテキスト見てた方が良いかも」

「なるほど、確かにそうだね」

紅白君も納得したようだ。

「そういや、前から気になっていたんだけど紅白君は何で文化研究部に入ったの?」

「うーん、僕は小説が好きだから最初文芸部に入ろうかと思っていたんだ」

だろうなと思いながらも黙って聞いていた。

「だけど小説だけじゃなく他の漫画やアニメだって面白い話がある訳でしょ?だったらそれを知らずに過ごすなんて勿体無いんじゃないかと思ってね」

真面目な紅白君らしい理由だった。ただ楽しい物を見てみたいという積極性は充分にオタクと言えるような気がする。

「新井君はどうして入部したんだい?」

「え?僕?いや、まぁアニメとか漫画好きだし……」

「やっぱりそうなんだ、じゃあ青坂さんもそうなのかな?」

「そうなんじゃないの?」

と一番後ろの窓側の席に座っている青坂さんを見た。どうやら他の女子達とオタクトークをしている様だ。

「彼女はもう友達が沢山いるんだね、羨ましいな」

僕はいや紅白君くらいのイケメンなら女友達なんか沢山出来るだろと思ったが黙っていた。

「そういや三人一緒の学部って事は黒田君だけ違う学部なんだね」

「ああ、黒田君は情報学部らしいね。パソコンの操作得意みたいだし合ってるよね」

黒田君は大好きなエロゲやネトゲを快適にプレイする為に自分でパソコンを組み立てたりしているらしい。僕はオタクだがその手の知識はからっきしなので少し羨ましい。

「でも文化研究部はみんな良い人そうで良かったよ」

そうか?と思いつつも紅白君のイケメンぷりに許してしまいたくなる。自分との人間力の差にちょっと切なくなった……。

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