何気ない一日

けものフレンズ大好き

何気ない一日

 これは特に何の事件も出会いもなかった、サーバルちゃんとかばんちゃんの何気ない一日のお話。


「おはようかばんちゃん!」

「オハヨウカバン」

「ふたりともおはよう」

 かばんちゃんの一日は、サーバルちゃんとボスによって起こされることから始まります。

 でも起こしたサーバルちゃんはいつも眠そう。

 それもそのはず、サーバルちゃんは夜行性で、今までずっと起きていたのです。

「サーバルちゃん大丈夫? いつも言ってるけど無理しなくていいんだよ」

「へーきへーき! だって私、毎日朝はかばんちゃんと一緒にジャパリまん食べたいし!」

「サーバルちゃん……」

 ちょっと照れながらかばんちゃんは笑顔になります。


 そして2人はバスを降り、木陰でいつものブレックファースト。

 ボスは所在なげにうろうろしていますが、今となってはあまり気にもなりません。

「ジャパリまんのおいしーねー」

「そうだねサーバルちゃん」

「私前まで1人で食べてたけど、かばんちゃんと一緒に食べるよになってから、もっとおいしと思うようになったよ」

「ぼくもそうだよ。といっても、ぼくの場合一緒じゃない方が全然少ないけど」

「えへへ、いっしょだね!」

 2人は純粋な笑顔で笑い合います。


 ジャパリまんを食べると、ジャパリバスで次の目的地へ向かいます。

 初め、サーバルちゃんは移り変わる光景にはしゃいでいましたが、やがて疲れて眠ってしまいます。

 バスに乗っていないときは、かばんちゃんに付き合って日中も動いていましたが、バスに乗ると本来の昼夜逆転の生活になります。


「いただきます、サーバルちゃん」

 しばらくして――。

 サーバルちゃんが寝ている間に、かばんちゃんはランチのジャパリまんを1人で食べます。

 1人で食べるジャパリまんもおいしいですが、2人で食べるほどではありません。

 多分、サーバルちゃんに声をかけずに食べると、もっと不味く感じたかもしれません。

 かばんちゃんはそれがなんとなく分かっていました。


「ごちそうさまでした」

 かばんちゃんが手を合わせてそう言うと、足に何かが乗った感触がしました。

「むにゃむにゃ……」

 見ればいつものように、サーバルちゃんが頭を膝の上に乗せてきたのです。

 どんな体勢で寝ていても、サーバルちゃんはかばんちゃんが近くにいると必ず近寄ってきました。

 かばんちゃんはそんなサーバルちゃんの髪の毛を、優しくすいてあげます。

 するとサーバルちゃんは、とても気持ちよさそうな顔をします。

 そんなサーバルちゃんの顔が、かばんちゃんは大好きでした。


 そして日も暮れ、夜のとばりが降りる頃――。


「うみゃー!!!」

 

 元気な声と共にサーバルちゃんが目を覚まします。

「おは……こんばんは、かばんちゃん!」

「こんばんは、サーバルちゃん」

「えへへ……」

「どうしたのサーバルちゃん?」

「えっとね、なんか起きたときにかばんちゃんの顔を見ると安心するんだ!」

「そ、そうなんだ」

 かばんちゃん、サーバルちゃんのストレートな愛情表現に、ちょっと照れます。

「うーん、安心したらお腹空いてきた! かばんちゃん、ジャパリまん食べよ!」

「うん!」

 

 そして2人だけの夕食始まります。

 だいたいボスはバスに乗っている間は運転に専念しているので、必要最低限のことしか言いません。

 聞こえるのは虫の声や、微かなバスのエンジン音だけ。

 2人だけの静かな夕食です。

「……かばんちゃん」

「なに、サーバルちゃん?」

「おいしいね!」

「そうだね」

「次のちほーにいったら、もっとおいしいジャパリまん食べられると良いなあ」 

「サーバルちゃんはそればっかりだね」

 かばんちゃんが楽しそうに笑います。

「そ、そんなことないよ! それ以外のこともちゃんと考えてるもん!」

「たとえば?」

「え、えーとね……」

 サーバルちゃんはしばらく考えて、

「忘れちゃった」

 照れ笑いをしました。

 それにつられてかばんちゃんもまた笑います。


 こうして2人だけの時間は過ぎていきました。


 さらに時は経って深夜――。

 今度はかばんちゃんが船をこぎ始めます。

「かばんちゃん、そろそろ眠たいんじゃない?」

「カバン、ムリシテオキテナイホウガイイヨ。ムリハキンモツダヨ」

「え、ああ、うん……」

 2人に心配され、かばんちゃんは曖昧に答えます。

 かばんちゃんは言いませんでしたが、ボスと話せないサーバルちゃんを1人にしておくのに、罪悪感を覚えていました。

 だから、なるべく遅くまで起きてようとしたのですが、それも限界があります。

「かばんちゃん、ひょっとして寝られないの?」

「え、ああ、うん……」

「じゃあこっち!」

 サーバルちゃんは座って、ぽんぽんと自分の太股辺りを叩きます。

「私の足に頭を載っけると、良く寝られると思うよ! 私もカバンちゃんに同じことしてもらったら良く寝られたもん」

「サーバルちゃん……」

 さすがに眠気が限界まで来たので、かばんちゃんは言うとおりにし、すぐに寝息を立て始めました。


「おやすみかばんちゃん」

 サーバルちゃんは、自分がしてもらったのと同じようにかばんちゃんの頭を優しく撫でます。


 朝早くまで寝ないでいるのは辛いですが、今日もそうするつもりでした。

 かばんちゃんにまた「おはよう」と言うために。


 これはそんな2人の何気ない、そしていつものお話。


                                  おしまい

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何気ない一日 けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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