ビーストウィッチ

くが

ビーストウィッチ

『ビーストウィッチ』は、明朝の廃都市にいた。ビルの上に立ち、じっと遠くを見つめる。

ダークグリーンの装甲を纏った機械の魔女。それが『ビーストウィッチ』だった。

頭部の、魔女の帽子を模したセンサー類が索敵を。両肩の、腕と同じ程の大きさを持ったカノン砲が待機し。腰部の機械の尻尾はバランスを保つべく。女性のフォルムの兵器は、じっと『その時』を待つ。

そして、『ソレ』は来た。

廃都市よりも五キロは下らない距離から現れ、超高速で迫り来る。

『ソレ』は大群だった。黒い波とも見紛うような程の数で、動く。

『ソレ』をセンサーが知覚した瞬間から、『ビーストウィッチ』の闘争は、開始していた。

ショルダーカノンが砲弾を吐き出す。ただ一度吐き出しただけで止まるわけではない。間隔を最短に、それでいて正確に、放つ。ドンッッッ!!!!!! という腹の底に響く重低音を何度も撃ち鳴らしながら、『ソレ』を撃滅しようと砲撃する。

三秒後、予測地点に着弾。

ズッッバヂィィッッッ!!!!!!

遠くで、爆雷があった。電撃が、一瞬で『ソレ』を飲み込むほどに爆ぜ広がる。広範囲雷撃魔法『サンダーエクスプロージョン』。

着弾点付近の数十体を確かに消滅させ、その他の『ソレ』すらも動きを止めた。

だが、黒の波はそこだけではない。止まった部分の左右から押し寄せる濁流が存在した。

左右の『ソレ』。果たして『ビーストウィッチ』は読んでいた。

着弾。

ズガッッッ!!!!!! 特大の爆音を鳴らして、爆裂した。

膨大な光量に照らされる中に、宙を舞う『ソレ』の姿もあったが、すぐに身体を裂きながら、巨大な炎に飲み込まれた。

だというのに、炎を突き破って来る『ソレ』は、進撃を止めない。

吐き出された魔法刻印弾の雨を、砲弾が生んだ絶大な威力の魔法たちを受けて絶命しながら、後ろに控える多数の『ソレ』が悉くを突き破って高速で進む。

そして、遂に『ビーストウィッチ』が動かざるを得ない状況に移った。

ライフルを両手に、アーマードテイルが半ばから展開し、銃弾を彼方此方へ撒き散らした。

銃弾は、都市の廃ビルを削りながら、次々と着弾していく。

その間にも、魔法刻印弾の砲撃は続行されていたが、『ソレ』を勢いを削ぐには至っていなかった。加えて、『ソレ』との距離が埋まりつつあったため、広範囲魔法の余波を受けても可笑しくはなく、魔法刻印弾の使用が制限されてしまう。

そして、『ソレ』がカメラアイに鮮明に映る距離、およそ二キロにまで迫っていた。

『ソレ』は、人間のような漆黒の胴体を五メートル程まで歪に膨らませ、側部からムカデのように無数の腕を伸ばしながら地を高速で這う。『異形の化け物』という言葉が、正しく似合っていた。

来る。高速で、這いながら、来る。

ざ。

ざざざ。

ざざざざざ。

ざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざ。

異形が、迫る。

だが、その時には既に『ビーストウィッチ』の準備は完了していた。

先ほど魔女がライフルやアーマードテイルから吐き出していた銃弾は、マギバレッドという、魔力の経由点である銃弾だ。

魔力の経由点とはどういうものか。例えば、相手に銃弾を撃ち込めばその相手に直接的に魔法が炸裂するのだ。

だが、他にも使い方は存在している。


例えば__、


そして異形共が都市に入った瞬間、都市より、青い光条が数多と空を貫いた。

地上では、青い光条の発射点同士が結ばれていく。

それは、『魔法陣』を描いていた。


__魔法陣を描くことも、出来てしまう。


その瞬間、『ビーストウィッチ』は魔法陣の中にいた。広範囲魔法ではある。だが魔法は、何も攻撃的なものばかりではない。

これは攻撃的なものではないものの一つ。

広範囲清浄魔法『オリオン』。

青の光が、全て異形を、飲んだ__

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ビーストウィッチ くが @rentarou17

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