第209話 繧「繧ォ繧キ繝?け繝ャ繧ウ繝シ繝

 槍は折れ、御守りは砕けた。

 頼れる仲間は皆地に伏した。


 ただ一人、私だけが立っていた。

 身体の至るところから出血し、四肢の感覚も乏しく、立てている事がおかしい状況でも私は倒れる訳にはいかなかった。


 目の前にあるのはあまりにも巨大なセルリアンの石。


 己の攻撃の反動に耐えきれずに胎児を形成していたセルリウムが剥がれて、巨大なセルリアンの石が剥き出しとなったのだ。


 真っ黒な球体の中に小さな輝きを無数に内包したそれは夜空そのものを体現したかのような美しさを持っていた。


 おそらく、それは今まで吸収したきた“かがやき”。

 海を泳ぐ魚、地を駆ける獣、空を飛ぶ鳥。

 あるいは海から陸へ、陸から空へ、陸から再び海へ帰るような進化の軌跡。

 あるいは……この星の未来そのもの……


 そして、そこまで喰らい続けながらもなおも器は満たされなかった。


 どんな美しい宝石よりも美しいセルリアンの石に本の僅かに折れた槍の矛先が刺さっている。


 まだ、希望は繋がっている。


 砕けた瓦礫の上を一歩一歩踏み締めながら、私は巨大なセルリアンの石へと向かう。

 視界は僅かに霞み、足は震えて今にも倒れそうでも私は進み続ける。


 その足を誰かに掴まれた。

 まるで懇願するかのように弱々しい力で掴まれたのだ。


 ……


 それでも私は進み続けた。


 誰かの希望は誰かの絶望になる。

 私の行動は誰かに取っての絶望だったのかもしれない。


 あまりにも強大な力を宿したこのセルリアンは偶然に生まれたものなのか、あるいは誰かがそうなるように育てたのか……


 もしも、セルリアンを育ててたとするならばその目的は何だったのか。


 保存と再現。

 セルリアンの基本的な性質の中に答えがあるのかもしれないが、今となっては真相は闇の中だ。


 だが、一連の異変は全て環境を再現するような事象が起きていた事から考えるとセルリアンを利用した誰かは世界を作り変えたかったかのかもしれない。



 私は巨大なセルリアンの石の前に立つ。


 このセルリアンには善意も悪意もない。

 ただ、本能に従って行動し続けていたのだろう。


 多くの未来を奪いながら……

 誰かの夢を叶えながら……


 このままにする訳にはいかない。


 私は拳を握って大きく振りかぶる。




 ジャパリパークを……返せっ!!!



 槍の破片を殴って押し込んだ。


 セルリアンの石に槍の破片を中心に幾学的な形をしたヒビが広がり、ヒビから虹色の優しい光が溢れ出す。


 周囲のセルリウムも全てがサンドスターへと還り、部屋の中が虹色の光に包まれる。


 全てが終わったことを悟り、私の身体が意思とは関係なく大きく傾く。

 もう既に限界を越えて意思だけで動いていた身体には私を支えるだけの力は残されていなかった。


 虹色の優しい光に包まれながら、意識が段々と遠くなっていく。

 苦痛を感じることもなく、穏やかな気持ちに包まれて私は眠るように目を閉じる。



 そして、私は───────

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