第208話 願いを穿つ硬い意思
この戦いを終らす鍵と言えるセルナには相当なプレッシャーが掛かっていたのだろう。
自分がどうにかしなくてはならない。
だが、その独断専行は集団戦において致命的な隙を産んでしまう。
セルナが飛び出した直後に私達の立っている地面が爆ぜて、私達は空中へと投げ出される。
私は爆ぜた原因を探ろうと下を見ると、地面の瓦礫の隙間から巨大なセルリウムの根が見えた。
おそらく、地下から根を急激に押し上げて地面を割ったのだろう。
空中に投げ出されて御守りのバリアの範囲から外れたセルナに地下から伸びた根が襲い掛かり、セルナを壁に打ち付けて固定した。
それとほぼ同時に紫色の線が一直線に醜い胎児に向かって飛んでいく。
セルナは壁に打ち付けられる直後に槍を投擲した。
醜い胎児の無数にある目が全て飛来してくる槍に向く。
部屋にある砲口がセルナの槍を叩き落とそうと砲撃を開始した。
だが、クーちゃんがセルナの槍を空中で掴んで砲撃を避けて飛ぶ。
大量の根がセルリウムの根がクーちゃんを掴もうと追い掛けるが、クーちゃんの速さに追い付くことが出来ない。
クーちゃんは何とか根を避けてセルナの槍を醜い胎児に突き刺そうとセルリウムの根を掻い潜るが、突如としてクーちゃんの前にセルリウムで編まれた網が現れた。
クーちゃんは逃げ回りながら敵に近付いているように見えたが、逆にこの網の方へ追い込まれていたのだ。
醜い胎児の前で網に捕まったクーちゃんの手からセルナの槍が地面に落ちる。
……終わりだ。
私とオオウミガラスがセルナの槍を掴んだ。
どうやら、セルナの槍を危険視するあまりに私達の動きから意識が外れてしまっていたようで、私達は簡単に醜い胎児の懐まで潜り込む事が出来た。
危険を感じた醜い胎児が私達を排除しようと砲口を向けるが砲弾が発射される事はなかった。
セルリウムの根の中の一番太い根にオイナリサマが右手を突き刺して不敵な笑みを浮かべている。
オイナリサマが何らかの方法でセルリウムの動きを止めている事は理解した。
だが、オイナリサマとて全ての動きを封じる事は叶わなかったようで、細い根が瓦礫を持って私達を攻撃しようとしてくる。
させません!!
ヤマバクが細い根を攻撃して活路を切り開く。
一緒に行こう!!
ああ、共に行こう!!
私とオオウミガラス二人で槍を持つ。
御守りの輝きが増して槍の形状がより大型となる。
私とオオウミガラスは有らん限りの力を持って醜い胎児に槍を突き出した。
それに対して醜い胎児が槍が届く直前にただの丸い穴となった口を大きく開けた。
中にあったのは小さな口。
そこから甲高い叫び声と共に2発目の荷電粒子砲が放たれる。
近距離で放たれた荷電粒子砲と槍がぶつかり合う。
あまりの圧力に押し戻されそうになりながらも、私達は大きく前に一歩踏み出した。
届けぇええええええええええええええ!!!!!!
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