凍てついた夢の残骸
第193話 アラート
ビーストから逃げ切った私達は一晩の休息を取り、パークセントラルに向けて出発した。
さて、一夜明けたことで色々と変化があった。
主にセルナの事だ。
彼女はこのメンバーの中で一番大人しかった。
それは彼女が私達に対して一線を引いて接していたからだ。
自発的に旅をしている私達に対して、イヌガミギョウブに言われて付いてきた事で若干の負い目を感じていたのかもしれない。
では、現在はどうなったのか?
ハグ魔になった。
ずっと抱き付かれ続けてげんなりしているクーちゃんとニコニコしているセルナ。
彼女はニホンオオカミを彷彿とさせるスキンシップが大好きな子になってしまった。
覚醒してしまったと書いた方が良いだろうか?
話を本筋に戻そう。
私達は当初からパークセントラルに向けて旅をしている最中である。
ジャングルでの出来事は大きな遅れを発生させるものだと思っていたのだが、むしろ順調であることが発覚した。
ラッキービーストがプロジェクター機能で映し出した地図を見る限りでは、昨日の追走劇はパークセントラルへの最短ルートを通っていたのである。
……パークセントラルにセルリアンの本拠地でもあるのだろうか?
ジャパリパークの中で最も“かがやき”を放っていたであろう中心地と考えれば、セルリアンが居を構えていてもおかしくはない。
だが、パークセントラルには守護けもののオイナリサマが居るところでもある。
セルリアンとオイナリサマが戦っていて、膠着状態であると仮定すれば、今までのキツネのセルリアンの行動も説明が付く。
フレンズの力を引き出す御守りを持った私達の到着を妨害すると共に、強力なセルリアンとなる可能性を秘めたセルナを誘拐する計画を立てた。
そう考えればこれから先はもっとセルリアンの襲撃が激しくなる事も考えられる。
慎重に行動せねば……
そんな事を考えているとオオウミガラスがじっと私の顔を見つめていることに気が付いた。
セルナの方を見て、まるで見比べるかのように再び私の顔を見たオオウミガラスが奇妙な事を言う。
セツナちゃん、笑顔してみて。
……?
オオウミガラスの意図が分からぬまま笑顔をしてみる。
無理言ってごめんね……
謝らないでもらいたい。
ニコニコと可愛らしい笑顔のセルナを一度見てから、私は手鏡を見ながら笑顔してみる。
……凶悪犯が見つめ返してくると言うとんでもない故障が鏡に起きたので私は鏡を仕舞った
セルナの顔は私と同じ顔なのだが、きっと表情筋の付け方が根本的に違うのだろう。
いや、そうに違いない。
そうだと言ってくれ……
しばらく、歩いていると私達を先導していたラッキービーストが急に立ち止まった。
SOS信号受信!
誰カコッチニ来ルヨ!
SOS信号の意味を分かっていなさそうなオオウミガラス達に私は各々迎撃体勢を取るように言う。
そして、ラッキービーストに遅れて何かを感じ取ったセルナが叫ぶ。
気を付けて!!
セルリアンが来る!!
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