第187話 御遣い

 軽い朝食を済ませた私達は再びジャングルを進む。

 相変わらずジャングルの中は静けさに満ちており、フレンズと擦れ違うことはない。


 ビーストを恐れてるにしてもここまで徹底的に身を隠すものなのだろうか?


 隠れているのではなく出払っている?

 それとも別の驚異が近くにいる?


 フレンズと出会わない理由を頭の中で模索し始めた頃にセルナが小さく声をあげた。


 近くに大きなセルリアンがいる。


 思わず溜め息が出そうになった。

 おそらく、サバンナに私達が居ないのに気が付いて探索を始めたのだろう。


 日替わりセルリアンも今日でどうにか打ち止めにしたい。

 私達はセルリアンに見付からないように木々や茂みの間に身を潜めながら進んでいく。

 姿は見えないがメキメキと木を薙ぎ倒しながら進む音から判断すると、今回も大型のセルリアンを配備したようだ。


 本当に探す気があるのだろうか?


 自分から居場所を知らせてくれるので私達はなるべく音から離れるように行動する。

 セルリアンに注意を払いながら姿勢を低くして移動をしていると茂みの中から黒いキツネが現れた。

 口には薄茶色の円錐状の物を咥えている。


 ジャングルにキツネ?


 ここに来てから様々な動物を見てきたからか、私は目の前にいるキツネに違和感を覚えた。

 このキツネはジャングルに居る獣なのだろうかと。


 そして、私の後ろに付いてきていたセルナが驚きの声を上げた。


 セルリアン!?


 セルリアン……だと?


 目の前のキツネは毛並みや質感はどうみても本物のキツネのようにしか見えない。

 だが、私はその瞬間に私はとある記憶を思い出した。

 ゴコクエリアに居た時のことだ。


 私はナミチスイコウモリの罠に掛かったキツネを助けたことがある。

 その時にコヨーテはセルリアンの臭いを感じていた。


 モノレールに乗っている時にもオオウミガラス達が黒いキツネの姿を目撃している。



 黒いキツネは円錐状の物を地面に投げ捨て、口から黒い液体を吐き出した。

 黒い液体は円錐状の物に触れると一気に体積を増やして、私達の見ている前でどんどん大きくなっていく。


 そして、私達の目の前に恐竜のような見た目をした大型の赤いセルリアンへと変化した。

 どうやら、円錐状の物は恐竜の牙だったらしい。


 そして、大型セルリアンの出現で私は全てを理解した。


 そう言う事だったのか。


 モノレールの時にセルナがセルリアンを感知できなかった理由が分かった。


 おそらく、あの黒い液体は何の性質もコピーしていないセルリウムなのだろう。

 セルリウムを物体と反応させてセルリアンを作り出す事ができる。

 モノレールのセルリアンはあの場で誕生したと言うことだ。


 そして、船旅で巨大なセルリアンに襲われたのも偶然ではないのだろう。

 出航に合わせて船のルート上にあの巨大なセルリアンを誘導した可能性がある。


 私達はゴコクエリアに居る時からずっとキツネのセルリアンに動向を監視されていたのだ。

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