第183話 静寂の密林

 少し唖然としてから私はハッと気が付いた。


 これはチャンスだ。

 何者かは分からないが私達が倒す予定だったセルリアンが倒された。

 つまり、セルリアンの監視網に穴が空いたと言うことだ。


 突撃ぃ!!

 セルリアンが居ない間にサバンナを脱出する!!


 数日経てば私達がサバンナに居ない事がバレるかもしれないが、私達の行方を探すのはもっと時間が掛かるだろう。


 何がセルリアンを操り私達の行く手を阻もうとしているのかは分からない。

 もしかしたら、フレンズになる前のセルナのような女王個体が存在するのかもしれない。

 それこそ、不完全な状態ではなく完全な状態で……


 私達をパークセントラルに辿り着かせたく無いと言う意図を感じる一連の行動は、守護けものであるオイナリサマと合流させたくないと言う事でもある。


 ならば、パークセントラルに辿り着いたら私達の勝ちと言うことだ。


 私達はセルリアンにバレないように全速力でジャングルの中へと突撃して行った。


 無事セルリアンにバレずにジャングルの中へ入れた私達はペースを落として進む。


 鬱蒼とした熱帯雨林であるジャングルは様々な動植物がひしめいている。

 ラッキービーストは私に対して警告をしているのか、やたら毒持ちの植物の事を話題に上げる。


 ラッキービーストの話を聞いていると以前に教えて貰ったサバイバルについての知識を思い出す。

 ジャングルでは豊富な動植物に溢れながらも食料確保が困難であると言う話だ。

 ジャングルにあるものは大抵の場合毒持ちか、食べても栄養にならない物が殆どらしい。


 ……やはり、もう少し真剣にサバイバルの話を聞いて置くべきだったか。



 ラッキービーストのガイドを聞きながらジャングルの中を進み続けてしばらくして、私はある違和感に気が付いて立ち止まった。


 ……変じゃないか?


 クーちゃんとセルナは私の言葉に首を傾げたが、オオウミガラスは私の言葉に同調した。

 クーちゃんとセルナは以前にジャングルに来たことが無いので、この違和感に気が付かなかったのだろう。


 そう、私達はこのジャングルに立ち入ってからジャングルに住むフレンズの姿を見ていないのだ。


 ジャングルはフレンズ達がたくさん住む地域である。

 適当に歩いても誰かしらに出会う環境で長時間誰にも会わないのはおかしい。


 何か異変が起きている。


 私は周囲に視線を走らせた。


 周囲を見渡してみてもフレンズ達の姿が見えないどころか、野生の獣ですら姿が見えない。


 カサ……


 立ち止まって沈黙したことにより、私は周囲から風の音とは違う葉の擦れる音を捉えた。


 何か周囲いる!

 背中を合わせて死角を消すんだ!


 私達は背中合わせで周囲を警戒する。


 何処だ?

 何処にいる!?


 ふと、私は地面に視線を落としたときに不自然な影が私達目掛けて移動している事に気が付いた。

 私は咄嗟に叫ぶ。


 前方に跳べ!!


 直後、私達が居た場所目掛けて上から何かが落下してきた。


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