第182話 咆哮
計画と言うのは得てして破綻するものである。
双眼鏡でジャングル地方への入口がある場所を見てみると、そこで何やら大型セルリアンが彷徨いているではないか。
これは明らかに待ち伏せをされている。
コアラの話を信じるのならば、あのセルリアンはコアラが通った後に発生したセルリアンだ。
しかし、こうも的確に私達の進行ルートにセルリアンが発生するものだろうか
何者かが意図的にセルリアンを発生させてると言われた方が説明が付く。
だが、待ち伏せをするならばあんな目立つ存在を置くなと言いたい。
私の肉眼でも遠くで自然物とは程遠い物が動いてる程度は分かった。
ともかく、作戦会議だ。
私達は土でできた蟻塚の影に隠れて、今後の対応について話す。
出来ることならあそこにいるセルリアンを倒したくはない。
これは優しさから出た意見ではなく、今後の安全を確保する意味で出た意見だ。
セルリアンは声を出さないが何らかの方法で仲間とコンタクトを取る手段を持っている。
かつて、女王だったセルナも声に出さずにセルリアンを操ることが出来たし、一昨日も消え行くセルリアンから情報を受け取っていた。
セルリアンと対峙する上で最も危険なのは私の体力切れだ。
御守りは激しく私の体力を消耗する。
一度の使用に関して約30分、最低でも10分休憩を挟まないと次の使用はキツイ上に、1回目よりも時間は短くなるだろう。
御守りは確かに強力ではあるが、これに頼り切りになるのは危ない。
とは言ったものの……
ラッキービーストに迂回路は無いかと聞くと、砂漠に通じる道と引き返してモノレールの線路に沿って進む道の二つが提示された。
砂漠を今の装備で切り抜けるのは困難を極める。
ここのセルリアンは人工物の近くに現れやすいので、モノレールに沿う道もセルリアンがいる可能性は高いだろう。
そうやって取れる手段を模索すると結局ジャングルの入口にいるセルリアンを倒すしか無いと言う結論になる。
取りたくない手段と取れない手段は違うのだ。
セルリアンを倒すと言う方針が固まった時にセルナが口を挟む。
倒す前にセルリアンを説得してみたいそうだ。
セルリアンに話が通じるとは思えないが、元セルリアンであるセルナならばあるいは……
いざとなれば御守りがあるので、セルナをすぐに庇う事ができる。
……セルリアンを通さないバリアの中に入れるセルナ。
既にセルナとセルリアンの間には埋めようのない差異が生まれている。
フレンズとセルリアン。
同じサンドスターから生まれながらも決して交わることのない存在。
セルナも薄々勘づいていた筈だ。
もしかしたら、セルナはこの時から答えを出そうとしていたのかもしれない。
自分が何者なのかを。
自分の進むべき道を。
蟻塚の影から出てセルリアンの方へ向かおうとした時に、サバンナに何者かの雄叫びが響き渡る。
直後にセルリアンの方から地面が炸裂するかのような衝撃音が発生する。
そして、静寂。
私達は意を決して恐る恐る蟻塚の影からジャングルの入口の方へ目を向けた。
そこに居た筈のセルリアンは跡形もなく消え去っていた……
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