第181話 セラードへ

 ラッキービーストによるとここはサバンナ地方らしい。

 また、ミナミメーリカ園とも呼ばれており、ここは南アメリカのサバンナ、特にここはセラードと呼ばれる地域が再現された地方のようだ。


 同じサバンナでもエリアが違えば植生や生活している動物も違うようだ。


 だが、待ってほしい。


 ここが南アメリカを再現した地域なのならば、ここにいるコアラは何なのだろうか?

 確か、オーストラリアにいる獣の筈だが……?


 ラッキービースト曰く、フレンズになることによって行動できる範囲や気候が広がり、自身の縄張りを飛び出て各地を旅するフレンズがいるのだと言う。


 そう言われて、フタコブラクダやトナカイが自分の縄張りを飛び出て旅をしていた事を思い出した。


 コアラもそんな旅をするフレンズの一人のようで、元々はホートクエリアの森林地方で暮らしていたようだ。

 あの場にいたのもほぼ偶然。

 歩いていたらモノレールが走ってるのが見えて、物珍しくて寄ってきたらしい。


 そうしたらセルリアンが倒される場面に遭遇するし、一人は瀕死の重症を負ってるしで色々大変だったようだ。


 さて、気を取り直して旅に出よう。


 ラッキービーストが再びモノレールの駅へ案内しようとするが、私はそれを止める。

 楽をして旅を出来るのならばそれに越したことはないが、乗り物に乗るのは良くない気がするのだ。


 日本の諺に二度あることは三度あると言う物がある。


 船に乗って船のようなセルリアンに襲われ、モノレールに乗ってモノレールのようなセルリアンに襲われた。

 しかも二日間と言う短い期間の中でだ。

 偶然で片付けて良いものだろうか?

 コアラに聞くとここ2ヶ月くらいはセルリアンに会った事は無かったとも言っている。


 もしかしたら、このセントラルエリアのセルリアン達は積極的に稼働している人工物を襲う性質があると考えても良いのかもしれない。


 ならば、乗り物よりは徒歩で移動した方が安全かもしれない。


 ラッキービーストに徒歩で行くことを伝えて、ルートの変更を行ってもらう。


 パークセントラルに行くにはサバンナ地方とジャングル地方を通らなければ行けないらしい。

 早速、コアラに貰ったユーカリが役に立ちそうだ。


 私達はジャングル地方に向けて出発する事にした。


 コアラも旅を継続するそうで、私達とは逆の方向に向かうようだ。


 旅を続けると言うのならここで役に立ちそうな物を渡しておこう。


 私は鞄の中から懐中電灯を取り出して、コアラに手渡す。

 上下に振ると発電する非常時用の懐中電灯だ。

 これがあれば暗い夜道や洞窟の中でも探検できるだろう。


 コアラはまた旅の思い出が増えたですーと喜んでエプロンのポケットの中に懐中電灯を仕舞った。


 本当ならテント等のキャンピングセットをプレゼントしたいところだが、全ては海の藻屑となってしまっている。

 何度思い出しても腹立たしい。


 コアラに別れを告げて私達は旅立った。

 今日こそは何事もなければ良いのだが……

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