第180話 秘密の製法

 そして、私は目覚めた。


 私が目覚めたのを見ておはようと言うラッキービーストにおはようと返す。


 長い間眠っていたからなのか時間感覚が曖昧であり、周囲の明るさから夕暮れかと思ったがどうやら早朝のようだ。


 横を見るとオオウミガラスとクーちゃんとセルナ、そして見知らぬフレンズが寝ていた。


 身体を起こした私は左腕に包帯で添え木が固定されていることに気が付く。

 包帯の巻き方が滅茶苦茶ではあるが、慣れない応急処置を一生懸命にしてくれたのだろう。

 私はそっと左腕を撫でる。


 ……ん?


 その時、私は違和感に気が付いた。


 まさかと思い添え木を外して左腕の調子を確かめる。


 完治してる……だと!?



 それから間も無く私が驚きの声を上げた為か、オオウミガラス達が起床した。



 良かったぁ……

 セツナちゃんが元気になって……ってなんか元気過ぎない?


 その通り、私はすこぶる快調だ。


 オオウミガラス達はやたら元気な私の姿を見て、安堵を通り越して若干引き気味である。


 しかし、どうして怪我が完治しているのだろうか?

 私の感覚的には全治数ヶ月はくだらない大怪我だったような気がするのだが……


 その疑問はすぐに解消された。


 私の知らない四人目のフレンズ。

 彼女の名はコアラ。


 中々有名な動物だ。


 確か、生物の教科書で名前が出ていたような……


 ラッキービーストが補足をしてくれた。

 有袋類、かつてオーストラリアに多く生息していた動物達の総称だ。


 コアラは主にユーカリと言う木の葉を食べて暮らしているらしい。

 フレンズとなった今では主食はジャパリまんだが、時々おやつとしてユーカリの葉も食べているようだ。


 お一つ如何ですー?とユーカリの葉が付いた枝を渡されたが、残念ながらここにいるメンバーで食べられる者はいない。

 しかし、ユーカリの香りには虫除け効果があるので、持っておくだけで役に立つ。

 ありがたくもらおう。


 少々話が逸れたがこのコアラが私の怪我を治してくれたようだ。


 フレンズの中には極稀に外傷を治す力を持つフレンズがいる。

 コアラはそう言った珍しいフレンズの一人のようだ。


 どうやって治したのかと聞くと、コアラ特性のパップとやらを患部に塗りたくって治したらしい。

 いつもより効果が出たとも言っているので、御守りの補助もあったかもしれない。

 微かに私の身体からもユーカリの香りがするような気がする。


 ちなみにパップは赤ちゃん用の離乳食でもあるらしいので、食べることも出来るそうだ。


 そんなパップだが私の怪我を治すのに使った為に在庫切れになってしまっている。


 また作らなきゃならないですーとユーカリの葉をモシャモシャしながらコアラが答える。


 世話になったのと御礼を兼ねてパップ作りの手伝いをしたいと申し入れたが、コアラから断られてしまった。


 何でもパップはコアラの秘密の製法で製造しており、おいそれと教えることは出来ないし、そもそも材料は潤沢にあるから必要ないそうだ。


 世の中には知らないことの方が良いこともあるんですー


 それでも何か手伝えることは無いのかと迫る私にコアラとラッキービーストは口を揃えてそう言う。


 ……その内、別の手段でパップの情報を手に入れるとしよう。

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