短くて長い道程
第177話 モノレール
私達は研究施設を発った。
得られたものは研究資料だけだが、カコ博士に渡すことが出来れば何かしら役に立つかもしれない。
必要最低限の手当道具を手にして私達は研究施設を発つ。
海上でのセルリアンの襲撃のせいで普段身に付けている肩掛けの鞄だけしか残らなかった為、多くの荷物を持っていけない。
全くもって忌々しい。
さて、気を取り直してパークセントラルに向かうとしよう。
ラッキービーストのナビゲーションによるとこの近くにモノレールの駅があるらしい。
機能していれば大幅に旅を短縮出来るだろう。
機能していれば……
正直に言うと私は乗り物関連についてはあまり期待していない。
今まで見付けてきた乗り物は船を除いて壊れていたからだ。
どうせ今回も乗り物で楽なんて出来ない。
諦観にも似た感情を抱きながら私達はモノレールへと向かった。
歩くこと数時間。
モノレールまでの道中にはかつてのジャパリパークの残骸が散見された。
セルリアンによって破壊されたであろう人工物を見る度に私の中の期待値はどんどん下がっていく。
もしや、駅そのものが瓦礫と化しているのではないだろうか?
そんな疑念を抱きつつも他に行く宛もない私達は歩みを進める。
そして駅に到着した私達を待っていたのは、汚れているだけで機能が全く失われていないモノレールだった。
どうして乗り物は私の期待と反比例するかのような状態になるのだろうか?
モノレールに興味津々なオオウミガラス達はモノレールの上に乗ったり線路に降りたりしている。
初めて見るであろう陸を走る乗り物なのだからこの反応も仕方ないのかもしれない。
危ないから戻ってこい。
自動ドアを開けてモノレールに乗るとラッキービーストは運転席と思われる場所に立つ。
出発進行!
ラッキービーストの声に合わせてモノレールが動き始めた。
私達はモノレールの中からジャパリパークの景色を眺める。
高所にレールを通すことによりパーク内の生態系に影響を与えずに移動するのと同時に景色を堪能出来る。
振動や騒音も少ない。
観光事業としての観点から見れば、モノレールの採用は妥当だったのかもしれない。
モノレール内に貼られた路線図を見る限りでは、このセントラルにおいても様々な環境があることが分かる。
終点のパークセントラルまでモノレールに乗ってもかなり時間が掛かりそうだ。
途中で降りて休憩を挟んだりしなければ、持ちそうにない。
しばらく、乗っていると反対車線からモノレールがやってきた。
1台が動き出した為、連動して他の車両も動き出したようだ。
全部で何台稼働しているか分からないが、時刻表には二時間に一回程度の頻度でしか来ないようなので車両はかなり少ないのだろう。
私はチラリと反対車線のモノレールを見た後はずっとジャパリパークの景色を見ていたのだが、オオウミガラス達は何故かずっと反対車線のモノレールを見ていた。
セツナちゃん、あっちのモノレールの上になんか黒いのが乗ってるよ。
オオウミガラスの言葉に私は野生の鳥か何かじゃないのか?と返す。
あれは……キツネ?
直後、私達の乗るモノレールに衝撃が走った。
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