日記外その26 ヒトとヒト
「……寝れないのか?」
セツナは窓辺に佇むセルナに声を掛ける。
ここは昼間に探索を行った研究施設の一室。
オオウミガラスとスカイフィッシュのクーちゃんは既に夢の中である。
「セツナ……、ヒトって、なんだろう?あそこに居た人もここにいるセツナも同じヒト。同じだけど、全然違う。セツナは優しい」
「……優しいか。私自身は優しいつもりはないが」
セツナはセルナの隣に立って窓から見える夜空を見上げる。
人工の明かりのない夜空には浮かぶ星々が良く見えた。
「……セルナ、ヒトには最も残酷になれる瞬間がある。どう言う時か分かるか?」
「分からない」
「それは……正義を為している時だ。正義だからこそ、歯止めが効かない。罪悪感もない。何処までも突き進む。……昔は良く分からなかったが、今なら分かる気がする。オオウミガラス達フレンズを守る為なら、私は……!」
セツナの脳裏に浮かぶのはとある博士の後ろ姿。
以前にセツナにそう語って見せた博士は何を思ってセツナに語ったのか……
その時、セツナは何かに気が付いたかのように目を僅かに見開いた。
「……どうしてジャパリパークは無事なんだ?ここだって例外ではない筈だ」
セツナが考察した通りならばジャパリパークも例外なく荒廃していなければならない。
だが、実際はヒトの施設だけボロボロになっているが、環境破壊には至っていない。
「セルリアンが居るから……だと……思う……」
セルナが申し訳なさそうにセルリアンが居るから必要なかったのではないかと言う。
「……だとするならフレンズ達を見くびり過ぎだ。彼女達は強い」
「でも、最強はセツナでしょ?」
「……」
沈黙がその場を支配する。
セツナの眉間にシワが寄り始めたのを見て、セルナがそっとセツナから顔を背けた。
「……く、クーちゃん言ってた。セツナの姉御が最強だって」
「……そうか」
「お、オオウミガラスも言ってた。セツナちゃんはとっても強いって……」
「……………そうか」
セルナはセツナの方向から物凄いプレッシャーを感じている。
クーちゃんからセツナを怒らせてはならないとゴリラと強いは禁句と聞いていたが、ついうっかり口を滑らせてしまった。
セルナは本当の意味でセツナを怒らせてはならないと感じた。
セツナのプレッシャーは本能的な部分を刺激する。
「……オオウミガラスとクーちゃんはセルナにそんな事を吹き込んでいたのか。思った以上に……懲りてない」
オオウミガラスと違いクーちゃんは初犯であるが、セツナはみっちりお仕置きするつもりである。
「どうしてフレンズ達は私の誤解を広めようとするのか……!!」
「……」
誤解じゃないと思う。
とは、小心者のセルナには口が裂けても言えなかった。
ちなみにセルナがクーちゃんの言葉を完璧に理解していると言う事実にセツナが気が付くのは当分先の事である。
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