日記外その25 旅路の果てのキツネ
「ついに来たわよ……セントラルエリア!!」
セントラルエリアの端っこに足を踏み入れたアカギツネはオオカミでもないのに遠吠えを上げるように両手を上げながら叫んだ。
弟子と思っていた存在に先を越されて悔し涙を流していたアカギツネはセントラルエリアにあるとある地方についての話を思い出した。
遺跡地方
かつて、パークセントラルと呼ばれていたその場所はジャパリ有数の巨大遺跡がある場所だ。
鳥のフレンズの力を借りてゴコクの壊れた橋を渡り、アカギツネはヒトになる手掛かりを求めて遥々陸路を通ってセントラルエリアまでやってきた。
「ここは……サバンナちほーかしら?」
アカギツネは1人セントラルエリアのサバンナ地方を進む。
「……誰か居ないのかしら?」
ゴコクに居たときはゴリラやナミチスイコウモリを巻き込んで旅をしていたのに対して、今回はずっと1人旅をしている。
縄張りから遠く離れての旅であることも重なり、流石に寂しくなってきたようだ。
独り言も多くなってきている。
サバンナと言えば常に誰かしらフレンズが居るような印象があるが、ここのサバンナはフレンズが少ない気がする。
ぽつり……
アカギツネの脳天に雫が落ちてくる。
「雨が降ってきたわね……ん?」
草むらに何か居たような気がしてもう一度見る。
アカギツネが目を凝らして良く見てみると全身がシマシマのフレンズが慌てて走っていくのが見えた。
「ねぇ!何を急いでるの?」
アカギツネが声を掛けるとシマシマのフレンズは踵を返して急いでアカギツネの元へやってきた。
「アナタも早くここから逃げないと!ここは雨が降るとセルリアンが出るのよ!」
「だから急いでたのね。ところで雨宿り出来そうな所はないかしら?流石にずぶ濡れのまま旅するのも気が進まないのよね」
「何を呑気に……」
呑気に会話を続けるアカギツネにシマシマのフレンズは急ぐよう伝えようとして、アカギツネの背後に現れた存在を見て言葉を失う。
その様子に気が付いたアカギツネも背後を振り替える。
「へぇ、これがセントラルのセルリアンなのね。良く見ると“かさ”って言う“ヒト”の道具に似てるわね」
セルリアンがアカギツネとシマシマのフレンズを襲う。
「──っ!!」
シマシマのフレンズはぎゅっと目を瞑って迫り来る衝撃に備える。
「……?」
しかし、衝撃はいつまで経っても襲ってくることはなかった。
シマシマのフレンズは恐る恐る目を開ける。
「同じ大きさでも異変で現れた奴に比べれば雑魚も同然ね」
ぱっかーん!!
傘型のセルリアンはアカギツネの一撃によってサンドスターへと還る。
「自己紹介がまだだったわね」
アカギツネはシマシマのフレンズに向き直る。
「アタシはアカギツネ。ゴコクからやってきた近い内に“ヒト”になる予定のフレンズよ」
「……あ、わ、ワタシはチャップマンシマウマ!セントラルで一番オシャレなフレンズを目指しているの!」
「よろしく!」
雨はいつの間にか上がり、空には新たな出会いを祝福するかのように虹が出ていた。
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