第175話 地下に眠るもの
なんか、前より雑になってきてるよね。
エレベーターの扉を棒を差し込んで抉じ開ける私を見てオオウミガラスがそう漏らす。
否定はしない。
ここを拠点にするつもりもないので、建物を傷付ける事に躊躇はない。
それに今回は丁寧に電力復旧して施設を稼働させるつもりは始めからなかった。
態々復旧させてもエレベーターがしっかり地下に運んでくれるとは限らない上に、何らかのセキュリティシステムまで復旧してしまうのは得策ではないと判断したからだ。
エレベーターは二階で止まっていたようで、正面からは鉄のワイヤーだけしか見えない。
中を覗き込んで見るとある筈のない地下の扉が見えた。
当たりだ。
その証拠にラッキービーストが違法施設を発見して本部に通報しようとしてエラーを吐いた。
私達は慎重にエレベーターの中を降りて地下施設へと潜入する。
散らかり放題だった地上階と比較して、驚くほどに綺麗な状態に保たれていた。
おそらく、地下施設の中央と思われる大きな部屋の中には大きなガラス張りの巨大なカプセルに入れられた黒いセルリアンがいる。
巨大セルリアンの分体。
いや、巨大化する前の状態か?
ともかく、目の前のセルリアンがセルナが感じ取っていた存在の正体だった。
巨大になっていないとは言え、その大きさは私達よりも遥かに大きくどうやってもこの施設の中へ運び込む事は不可能なように思える。
だが、その方法はすぐに見付かった。
巨大なカプセルに繋がれた装置にサンドスター・ローが封入されたカプセルがあったのだ。
手にしたカプセルの中身は半分ほど虹色のサンドスターへと変わっていた。
時間経過でサンドスターは変化すると言うことなのだろうか。
小さな巨大セルリアンはこの場所で意図的にサンドスター・ローを与えられて育てられていた。
この場所でセルリアンを育てて何をしようとしたのだろうか?
セルナが身動きの取れないセルリアンのカプセルに触れると、中のセルリアンの身体がまるで溶けるようにしてサンドスターへと変わってしまった。
長い間装置が稼働していなかったので、セルリアンも限界を迎えてしまったのかもしれない。
些か、タイミングが良過ぎるような気がするが……
私はカプセルの前で惚けたままのセルナの肩を叩く。
セルナは肩をビクッと震わして私の方を向く。
その表情は酷く怯えているように見えた。
セルナは言う。
ここでヒトが何かをしていた。
何をしてたか分からないけど、何かをしていた。
分からない……分からなくて怖い……
まだ、セルナにはセルリアンと何かしらの繋がりが残っている。
セルナはこの施設の何かを見た。
おそらく、先程消えたセルリアンを通じて……
イヌガミギョウブはセルナのこの力を見抜いて私にセルナを同行させたのだろうか。
怯えるセルナをオオウミガラス達に任せて私はペンライトを手にして施設の中を調べ始めた。
セルナの見た何かを確かめるために……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます