第174話 外界の手掛かり

 疲れた……

 主に私が……


 セルリアンの全滅を確認した後に私は床に座り込んだ。


 奇妙な話だがオオウミガラスとクーちゃんの奮闘を後ろから眺めていただけの筈なのに、何故か一番疲弊していたのは私だった。

 私は手に持った御守りを見詰める。


 どうやらこの御守りはバリアを張ったりフレンズ達を強化する代わりに、私の体力を著しく消耗させるらしい。


 少し休憩して再び歩けるようになった私は研究施設の探索を開始する。

 セルリアンを殲滅したおかげで探索自体はかなりスムーズだ。


 セルリアンによるヒトへ影響。

 セルリアンに襲われた職員は肉体的な物より精神的な苦痛を訴えている。

 無気力、悲観的になるなど軽い鬱のような症状が見られた。

 また、精神的に影響はなくても今まで出来ていた特技が出来なくなる事もある。

 原因となったセルリアンの討伐、または時間経過により大抵の場合は回復する。


 ……似ている。

 自立稼働兵器に襲われた人々とほぼ同じ症状だ。

 極限のストレス状態が招いた症状だと思っていたが、実態は異なっていたのかもしれない。


 外の世界の出来事もジャパリパークで起きた異変の延長線上にあると言うことなのだろうか?


 他にも天井に穴がある部屋に謎の物体が置いてあったりと気になる点が多々見られたが、探索を終えようとした時にセルナがとても気になることを言い出した。


 下は行かないの?


 下?

 施設内の地図を見ても研究施設のフロアは一階から三階までで、一階より下は存在しない。

 それに隅々まで見た筈だが一階から下に降りる為の階段や梯子は見付からなかった。

 なので、地下の存在は無いものと考えていたのだが……


 ふと、思い出したのが船上での出来事。

 セルリアンが出現した際に真っ先に反応をしていたのはセルナだった。


 私はセルナにこの下に何か居るのかと聞く。


 居る……気がする……


 曖昧な物言いだが無視して良い物ではないと判断した私はどうにか下に降りる方法を模索する。


 クーちゃんの提案から外から穴を掘って侵入しようと提案されるが、もちろん却下した。

 穴堀上手なフレンズを見付けなければならないし、壁を壊しての侵入になるので建物にどれだけのダメージが入るか想像出来ないからだ。


 だが、正当な手段で侵入しようにも下に降りれそうな怪しい部屋は無かった気がするが……

 フロアマップの前で唸っているとオオウミガラスがとある場所を指差した。


 ここ入ってないよね?


 オオウミガラスが示した場所はエレベーター。

 電源が通ってないから入ることを諦めた場所だ。


 エレベーターが何なのか分かってなさそう3人にエレベーターの簡単な概要と仕組みを説明する。


 私の知識を穴を埋めるようにラッキービーストが補足をしてくれたのは中々有難い。


 オオウミガラスが私とラッキービーストの説明を聞いて極当たり前の感想を漏らした。


 便利だね。

 じゃあ、エレベーターを使えば下に降りれるんじゃない?


 ……それだ。

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