第167話 ゴコクで過ごす最後の夜
さて、イヌガミギョウブの事が少し分かったところで、彼女が連れてきたセルナについて語ろう。
一応、私が元となっているから見た目はそっくりなのだが、性格が私と掛け離れている。
私と比較して表情豊かであり、何にでも興味を示すためか落ち着きがない。
大人しくしてるのは本を読んでいる時くらいだろうか。
気が合ったのかクーちゃんにくっついて行動してることが多い。
逆にオオウミガラスの事は恐れているようで、オオウミガラスの手が届く範囲には決して近付こうとしない。
身体能力についてはほぼ私と同等……だと思うのだが技術面が足りてないのか腕相撲や徒競走で私に負けていた。
以前は野生解放したオオウミガラスを一蹴出来る程に力が強かったようだが、今は大幅に弱体化している。
一応、フレンズと言うことなのでセルナには何かしらヒトの能力に付け加える形で何かしら能力があるのではないかと踏んでいるが、今のところその兆候はない──>
……私の背後から日記を書いている様子を覗き込んでいたセルナが日記の内容を声に出して読み始めたので一度中断してセルナを寝かし付けた。
どうやら他のフレンズ達と違って文字の読み書きは問題なく出来るらしい。
身体は大きいのに中身は幼い子供みたいだ。
実年齢が0歳未満である可能性もあるので、幼いと言うのは正しいのかもしれない。
0歳にしては少々発育が良過ぎるような気はするが……
さて、今日はイヌガミギョウブの講義やセルナの観察ばかりに時間を費やしていた訳ではない。
私はセントラルエリアへの旅に向けて荷物の整理もしていた。
皆で手分けしてせっせと船に荷物を積み込んでいく。
イヌガミギョウブの奴はこの仕事を面倒に思ったのか、私達が荷物を積んでいる間は何処かへ姿を消してしまった。
まぁ、イヌガミギョウブはこの旅に付いて行かないので、手伝う義理はないと言えばない。
どうやら色々やり残した事があるらしく、今ゴコクを離れる訳にはいかないようだ。
その代わりにイヌガミギョウブからはセルナを連れて行けと言われている。
世話を押し付けるつもりかと問うと、それもあるが特別な存在であるセルナはきっと何かの役に立つと言われた。
イヌガミギョウブ曰く、勘と言うものらしい。
根拠はない。
話を戻そう。
今回は砂漠やツンドラのような厳しい環境の場所は通らないので、専用の装備は積まない。
宿泊に必要なテント、最低限の飲料水、川の水を煮沸する為の鍋とミニコンロ、振って発電できる懐中電灯、多機能ナイフ等々……
最後に食料のジャパリまんも1ヶ月分を積み込んで、その日の準備を終えた。
ラッキービーストが時報の如く、現在の時刻を報せてくる。
遠回しに今日は早く寝た方が良いと伝えたいのかもしれない。
ラッキービーストの遠回しな進言に従って、今日はこれで筆を置くことにする。
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