第165話 飲んだくれ
起きろタヌキ。
私はリビングで寝てるタヌキを蹴り起こした。
現在、私は怒ってる。
目の前に広がるのはビン、ビン、ビンの山。
濃密なくらいの甘ったるいアルコールの匂い。
時間にして約8時間。
私が寝ている間にリビングがゴミだらけになっていた。
イヌガミギョウブにこれはどう言うことだと問い詰めると、イヌガミギョウブは私の顔から視線を逸らしながら言い訳じみた事を言う。
夜行性で中々眠れなかったので、ショッピングエリアを漁っていたらしい。
そこでお酒を見付けてリビングで一口だけ飲んだようだ。
随分と回数の多い一口じゃないか。
以前は随分と偉い存在だったようだが、私は特別扱いはしない。
朝食までにリビングを片付けろ!!!
さて、イヌガミギョウブにクーちゃんを見張りに付けて掃除させている間に朝食の準備を済ませておく。
手が無い筈のラッキービーストが欲しい食材を運んできてくれたりと意外と役に立つ。
元々パークのスタッフをサポートする為に作られたと言うのは伊達ではないらしい。
そう言えば、以前にラッキービーストのキーホルダーを手に入れた事があったが、目の前にいるラッキービーストとは種類が違う。
体色で役割が違うと言うことだろうか。
料理を作り終えてイヌガミギョウブを呼びに行くと、あれだけ散らかっていたビンが綺麗に無くなっていた。
やれば出来るじゃないか。
ところでイヌガミギョウブは何処に行ったのだろうか?
料理が冷める前に食べてほしいのだが……
部屋を見渡して見てもクーちゃんとクーちゃんしかいない……?
私は何かおかしな光景が見えたので、目を擦ってもう一度リビングを見る。
クーちゃんとクーちゃん。
クーちゃんが二人いた。
片方のクーちゃんが口を開く。
どっちが本物でしょーか?
………
とりあえず偽者にデコピンを繰り出すとクーちゃんからイヌガミギョウブの姿になる。
どうして分かったのん?
本物のクーちゃんは喋れないのだ……
どういう原理かは分からないが、高度な変身を見せてくれたイヌガミギョウブと共に朝食を取る。
それにしても守護けものと言うのは随分と便利な能力を持っている存在だ。
他の守護けもの皆そうなのか?
イヌガミギョウブによれば変身は守護けものの能力ではなく、化け狸や化け狐の一族なら出来るものらしい。
まぁ、タヌキの方がキツネより化けるのは上手いんだけどねん。
とのこと。
タヌキの中でもダンザブロウダヌキが一番上手く他人に化けられると評判らしく、イヌガミギョウブは実力は私の方が上なのにとぼやいている。
……おそらく、変身後の演技が下手くそだからではないだろうか。
そんなことより、私としては気になるのはどうやって他人に変身したのかと言う部分だ。
もう、ファンタジーに片足どころか両足を突っ込んでいるような気がするが、それなりの原理と言うものがあるだろう?
そう言うとイヌガミギョウブはご飯を咀嚼しながら少し悩んだ素振りを見せて口を開いた。
じゃ、まずは“けものプラズム”の説明から始めようかねん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます