第164話 託されたもの

 複雑な表情でセルナを見るオオウミガラス。

 特に意味が分かってなさそうなクーちゃん。

 何故かクーちゃんと会話が完全に成立しているセルナ。

 水の入った瓢箪傾けながら、アルコールが欲しいと嘆くイヌガミギョウブ。

 ついでに私達の後ろをちょこちょこ歩いて付いてくるラッキービースト。


 何とも奇妙なメンバーだ。


 皆で寮へ戻りながら、イヌガミギョウブからの話を聞く。


 イヌガミギョウブが復活したのは異変の真っ只中だったらしい。

 それ以前は夢現のような状態ではあるが、私とオオウミガラスの旅を見守っていたらしい。

 正確には私達がツンドラ地方へ向かう最中から……


 イヌガミギョウブは超巨大セルリアンが倒されたことにより、ゴコクエリアのサンドスター濃度が一時的に急上昇し、そのサンドスターを吸収することによって復活したようだ。


 やはり、守護けものは普通のフレンズとは違うと言うことなのだろう。


 異変の真っ只中で復活したイヌガミギョウブは復活した直後にオオウミガラスに力を分け与えたようで、その反動で一時的に弱ってるのだと言う。


 だが、それを理由に私に世話をさせようとするのはやめてほしい。

 そもそもここに長居するつもりはないのだから。


 やっぱりセントラルに向かうんだねん。

 そこにはきっと君の知りたい答えがあるよん。


 イヌガミギョウブはまるで始めから分かっていたかのように、私がゴコクエリアから旅立つと告げる前に言う。

 どうやら私が旅立つ事はお見通しのようだ。


 寮に着いたときにイヌガミギョウブは私に虫眼鏡のレンズのようなものが付いたネックレスを渡してきた。


 御守り

 司書が異変に備えて探していたものだ。


 この御守りにはフレンズ達の能力を引き出す力があるらしい。

 司書が言っていた通りだ。

 ただし、この御守りを使えるのは“人”だけらしい。


 なるほど。

 どのみち人がいなければ御守りは使えなかったと言う訳か。

 ……司書がその事実を知ったらどう思っただろうか?


 イヌガミギョウブが言うにはこの御守りは模造品であり、本物と比較すると非常に弱い。

 それでもセントラルエリアに向かうのならば持っていて損はないだろう。


 裏を返せば御守りが必要となるくらいに厳しい旅になるとイヌガミギョウブは予想していることになる。


 私は御守りを受け取るとイヌガミギョウブは私の手と御守りを包み込むように握る。


 もし、ジャパリパークの中心地であるパークセントラルに向かうんなら、この御守りを持って会ってほしいフレンズがいる。


 力を使ってしまったが為にイヌガミギョウブはこのゴコクから離れることは出来ない。


 イヌガミギョウブはまるで懇願するかのように私に言う。


 オイナリサマを助けてほしい。


 ……分かった。


 私はイヌガミギョウブの瞳を見ながら力強く頷いた。


 その返事に満足したイヌガミギョウブは私の手を放して寮の中へ入っていく。


 手の中に残された御守りには神社の鳥居を逆さにしたような深緑の紋章が浮かんでいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る