セントラル突入

第163話 月光

 このジャパリパークに来てから、私は散々ゴリラに似ていると言われてきた。

 しかし、似てるとは言っても並べるとすぐに違うと分かるくらいのものだ。


 だが、今目の前にいるのはそんな似てると言う次元の話ではない。

 同じなのだ。

 身長、顔の造形、体格、瞳の色。

 違いを明記するならば、目の前の少女は私のこんがりと焼けた肌とは違い透き通るような白い肌であること。

 私の黒い髪に対して、彼女は紫色の髪。

 そして何より、頭に虹色のグラデーションの掛かった羽のようなものがあった。


 書いてて思ったが意外と違い分かりやすいか……


 そんな私にそっくりな少女を目の前にしてオオウミガラスは声を上げた。


 あなたにセツナちゃんを傷付けさせたりしない!!


 いきなり何を言い出すのか。

 私が止める間もなくオオウミガラスは野生解放をして、少女に襲い掛かった。


 間一髪、オオウミガラスの手刀は少女に当たる前にイヌガミギョウブによって止められる。

 イヌガミギョウブはオオウミガラスの手首を掴んだまま、諭すようにオオウミガラスに語り掛ける。

 この子はセルリアンじゃないと……


 オオウミガラスは私にそっくりなその少女こそがセルリアンの女王であり、私の“かがやき”を奪った張本人だと言う。


 倒し損ねていたと言うことなのだろうか?


 しかし、実際には私の“かがやき”とやらは元に戻り、こうして意識を取り戻したのだからセルリアンの女王は倒されたことには間違いはない。


 何れにしても私は彼女がセルリアンの女王とは思えない。

 何故なら、目の前で止められたオオウミガラスの手刀を見て、気絶してぶっ倒れているからだ。


 しばらくして、彼女は目を覚ました。

 余程怖かったのかめそめそと泣きながらイヌガミギョウブを盾にしてオオウミガラスと距離を取っている。


 さて、話をまとめよう。


 オオウミガラスが彼女をセルリアンの女王と言ったのはあながち間違いではなかった。

 イヌガミギョウブが語るには彼女はセルリアンの女王“だった”。


 オオウミガラスとの戦いに破れた彼女は何の因果か消滅を免れてセルリアンからフレンズとして生まれ変わった。

 そんな事があり得るのかとイヌガミギョウブに聞いてみると、本来ならばあり得ない現象だと返される。

 だが、目の前の彼女より以前にも事例は存在していた。


 過去にセルリアンからフレンズとなった存在。

 名はセーバルと言う。

 元はサーバルと言うフレンズとそっくりなセルリアンだったのだが、フレンズ達との触れ合いの中で自分の“かがやき”を持つようになりフレンズとなった。


 ちなみにセーバルと言う名は“セルリアンなサーバル”が由来らしく、目の前の彼女も前例を踏襲して名を付けられたらしい。


“セルリアンなセツナ”でセルナ。


 紛らわしい名前を……


 ともかく、イヌガミギョウブからはセルナにはこれからフレンズとして接してほしいと言われた。


 幸いにもセルリアンの女王としての姿を見たのはオオウミガラスただ一人。

 オオウミガラスが黙っていればセルナがセルリアンの女王だったとは分からないだろう。

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