第155話 仕掛けの成果

 やはり、こうなったか……


 私の目の前には網に捕らわれて団子状態となっているハンター達の姿があった。

 余程器用に引っ掛かったのか、完全に身動きが封じられている。


 ナミチスイコウモリは上手く作動した罠にご満悦のようだ。

 しかし、ハンター達は喜んでいるナミチスイコウモリの方を見てアカギツネのトラブルメーカーが移ったかと呟き、ナミチスイコウモリはアカギツネと一緒にされたことに対して憤慨する。


 そんなにアカギツネと一緒にされるのが嫌なのか。


 ともかく、ハンター達を解放しよう。


 解放されたハンター達は意外なことにナミチスイコウモリを怒るでもなく、ナミチスイコウモリの罠の腕前を見てセルリアン狩りに協力してくれと申し出た。

 少しくらい怒られることを覚悟していたナミチスイコウモリとしては、逆に目をキラキラさせて協力してくれと言われて困惑している。


 イタズラが成功したのに喜ばれると負けたような気分になるぞ……

 とのこと。


 だが、セルリアン対策として罠を仕掛けるにしても、罠に掛かるのはフレンズも同様に掛かる可能性が残る。

 そうなると迂闊に危ない罠は仕掛けられない。


 そこで私はフレンズ達に危険のない音が出るだけの罠を提案する。

 罠に精通したナミチスイコウモリは音が出る罠で何か思い付いたようで、解除した罠を使ってゴソゴソと何かを作り始めた。


 数分後にナミチスイコウモリは蔦に木の札がくくりつけられた物を見せてきた。

 その罠の名は鳴子と言う。

 原理としては非常に単純で、誰かが紐(蔦)に触れると木の札が打ち合い音を鳴らし、侵入者を知らせる仕掛けになっている。


 これならばフレンズが引っ掛っても怪我をすることはないだろう。


 珍しく今回は何もしてないので、私がここに来る必要は無かったような気もするが……

 まぁ、良いだろう。


 他にもナミチスイコウモリの罠に引っ掛かっているフレンズは居ないかと見回っていると、罠に引っ掛かっている存在を確認した。

 それはフレンズでもセルリアンでもなく、普通の動物のようだった。


 日記の中では特に言及をしたことはないが、ジャパリパークにはフレンズ以外にも普通の動物達が暮らしている。

 フレンズの元が動物なのだから当然の事だ。


 ナミチスイコウモリの罠に引っ掛かっているのは容姿から推測すると、おそらくキツネの仲間ではないかと思う。

 それにしてと随分と大人しい。

 私は罠からキツネを助けるべく、罠を解除していると後ろからコヨーテの鋭い叫びが聞こえてきた。


 逃げて!!


 コヨーテの叫びとほぼ同時くらいにキツネは罠から解放されて、茂みの奥へと消えていく。

 コヨーテは私の側に寄ると頭の耳も動かしながら周囲を注意深く観察する。


 しばらくすると危険はないと判断したのかコヨーテは警戒体勢を解いた。


 何があったのだろうか?


 コヨーテに聞くと風上の方から私とセルリアンの匂いを感じて、セルリアンが私の近くに居ると判断して私に逃げろと言ったらしい。


 だが、私の近くに居たのは動物のキツネであり、セルリアンの姿は確認していない。

 もしかしたら、そのキツネはセルリアンに食べられたことがあるキツネなのかもしれない。


 ともかく、セルリアンが近くに居るかもしれないので、ハンター達は警備を強化する事にしたようだ。


 このまま何事もなければ良いが……

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