第153話 初めての料理

 では、料理を始めるとしよう。


 ブラックジャガーにまずは手を洗ってもらう。

 ……その手袋みたいな物を外さずに洗うのか。


 まぁ、フレンズ達にとっては身体の一部のような物なのだから、これで良いのだろう。


 まず、ブラックジャガーにはキャベツの千切りを行ってもらう。

 ブラックジャガーは丸いキャベツを手に取ってじっと見詰めてから、意外なことを言い出した。


 何処かで見たことがあるな。


 どうやらブラックジャガーは以前にもキャベツを見たことがあるらしい。

 ただ、元は肉食動物であったブラックジャガーはキャベツを見ても対して興味が湧かなかったようで、何処で見たのかは詳しいことは覚えていない。


 ブラックジャガーがキャベツを見た場所は透明な壁に囲まれた遺跡の中だったようだ。

 ブラックジャガーはそれを見て何か分からなかったようだが、それはきっと温室だろう。

 このエリアの何処かに温室がある。

 良く考えてみればフレンズ達の主食であるジャパリまんを生産する為の施設があるのは当然の事だ。


 私は包丁を手に持ってブラックジャガーにキャベツを千切りにする様子を見せる。


 真似してやってみてくれ。


 そう言うとブラックジャガーはまな板の側に置いてある包丁には目もくれずに、キャベツに引っ掻くように指を曲げた手を振り下ろした。


 その後、連続で目にも止まらぬ速度で何度も振り下ろし、ブラックジャガーはこれで良いのかと私にキャベツを見せる。

 見事に千切りになっていた。


 一部のフレンズは料理をするのに包丁なんて必要ないのかもしれない。

 綺麗に磨いだばかりの包丁が泣いている……


 ブラックジャガーには食材のカット等を任せて、火を使う部分は私が担当する。


 火を怖がるフレンズでも視界に入らなければ平気なようで、コンロを背にする形で作業をさせれば問題はなさそうだ。

 他にも直接火を見ることの無いオーブンは問題なく使用できることが分かった。


 これならば祝勝会のメニューにピザを加えても良いかもしれない。


 こうして、ブラックジャガーと二人で作ったのは一つ一つのサイズが小さい軽食用のサンドイッチだ。


 私はサンドイッチを一つ手に取って、ブラックジャガーの口元に持っていく。

 祖母の言葉だが、料理で一番大切なのは自分で味見をすることだ。

 幼い時に祖母の真似して料理を作って、言葉巧みに祖母に私の作った料理を味見をさせられた。


 ……あれは酷かった。

 以後、私は料理に不要なアレンジ等はしなくなった。


 だから、ブラックジャガーはまずは自身で料理の味を確かめる必要がある。

 何事も経験だ。


 そう言って、私はブラックジャガーにサンドイッチを食べさせる。


 ブラックジャガー、初めての料理はどうだった?


 美味しい。

 そして、楽しかった。


 ブラックジャガーは笑顔で料理の感想を口にした。


 よし!

 では、コヨーテとアメリカバイソンにサンドイッチを持っていくとこにしよう。

 ブラックジャガーが料理の手伝いをしたと聞いたときの彼女達の反応が楽しみだ。

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