第152話 雨宿り
その日は雨が降っていた。
傘を差したオオウミガラスとクーちゃんが遊園地に行くのを見送って、私は寮でゆっくりと過ごすことにした。
私は今はなるべく遊園地に行かないようにしている。
この短期間でオオウミガラスがどれほど上手くなっているのかが楽しみだからだ。
さて、オオウミガラスが頑張ってるので、私の方でも頑張るとしよう。
今日は祝勝会で出す料理の試作だ。
私一人だけでなく何人かのフレンズに手伝ってもらうことになるので、どの行程がフレンズに出来るのかを考えながら作ってみたいと思う。
だが、そんな意気込みとは裏腹に、包丁を抜刀した瞬間に出鼻を挫かれてしまった。
来客だ。
玄関の方に向かうといつぞやの3人組がいた。
ブラックジャガー、コヨーテ、アメリカバイソン。
私に気が付いて寄って来ようとする。
待てぇえええぃ!!
私は咄嗟に3人に待ったを掛ける。
ハンター達はどうして突然止められたのか分からずに首を傾げた。
……どうして止められたか分からないか?
まるでわからないと言う風に3人は頷く。
まずはその雨でびしょ濡れの身体をどうにかしろ!
私はハンター達にタオルを投げ渡した。
せっかく綺麗な状態の寮の中をびしょ濡れにされる訳にはいかないのだ。
タオル数枚とドライヤーによって水気を飛ばした3人をソファーに座らせる。
祝勝会まではまだ日があると思うのだが、3人は何しにここへ来たのだろうか?
雨宿りか……
何の変哲もない理由に少しだけ安堵する。
少し話してみるとハンター達は祝勝会の会場の警備として司書に派遣されたらしい。
あれだけの事件が起きた後だと言うのにもう働いている。
どうやら司書はスカイレースの授賞式の時みたいにセルリアンに会場を滅茶苦茶にされるのは勘弁願いたいようだ。
でもさ、ぶっちゃけ暇なんだよねー。
そうぶっちゃけたコヨーテをブラックジャガーが言うなとばかりに軽く小突く。
あの異変で多くのフレンズが危険な目にあったが、その分恩恵もあったようで異変のせいでセルリアンが居なくなってしまったらしい。
ハンター達がここに来るまでの道中でセルリアンの姿はおろかセルリアンの痕跡すら見付からなかった。
だが、一時的に居なくなったとは言え、その内また新たなセルリアンが生まれてきてしまう。
ジャパリパークに暮らす限りセルリアンの問題と無縁では居られないのだ。
まぁ、異変で大変な目にあったのだから、今日くらいはセルリアンの事は忘れてゆっくりしていくと良い。
ちょうど祝勝会で作る料理を試作しようと思っていたので、それを試しに出してみよう。
しばらく、厨房でメニューを考えていると厨房の入口からブラックジャガーが顔を出してきた。
ゆっくりしていくと良いと言ったのだが、真面目なブラックジャガーはじっとしていられなかったようで、料理の手伝いをすると言い出した。
よし!
せっかく手伝いをしたいと申し出ている事だし、ブラックジャガーにも料理の手伝いをしてもらうことにしよう。
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